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【お家に帰ろう】第18節 ヴァンフォーレ甲府戦【雑感】

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甲府の山本英臣選手はこの試合でJリーグ通算500試合出場、おめでとうございます。496試合は甲府で出場ってのもスゴイ。ちなみに長崎の最多出場記録は高杉亮太の190試合だから、山本英臣という(ほぼ)ワンクラブマンの凄みが分かる。

アウェイ3連戦は辛いよ

まず試合云々の前にこれ。日本地図で俯瞰すれば近場に見える新潟→金沢→甲府の行軍だけど、普通に九州を1周するくらいの距離感があるわけで。甲府戦に出場した選手はほとんどが新潟戦でもベンチ入りしたメンバーで、今節の時点で長崎を経って9日が経過していた。コロナ対策で練習以外はほとんどホテルに缶詰めだっただろう。

試合の立ち上がりは何とかテンション高く入ろうとしてたが、身体が重いのは明白だった。さすがにアウェイ3連戦は辛いよ…という前提を踏まえる必要がある。

スタメン

①スタメン

長崎は前節から7人変更、ほとんど新潟戦と同じスタメンになった。金沢戦ではメンバー外だった秋野はこの日もメンバー外、やっぱ怪我だったのね…チームの心臓であることは間違いないので、早期復帰を願うしかない。澤田、富樫と中心選手が相次いで離脱しており、台所事情はだんだんと厳しくなってきた。

対する甲府も前節から7人変更、解説に寄ればこちらの方が1stセットらしい。甲府もドゥドゥ、バホスと前線の軸になる選手が離脱しているが、それでもラファエル、金園、ハーフナーマイクとタレントは豊富である。

前節は好調の北九州を相手にアウェイで3-0の完勝。群馬戦から連勝しており、長崎戦は3連勝を目指す戦いになった。注目は横浜Fマリノスからレンタル移籍中の泉澤仁。甲府の攻撃を牽引するというか一対一で勝てる選手で、チームの質的優位を担う選手。

山本英臣の立ち位置と一本槍・泉澤

甲府の基本システムはボール保持3-4-2-1⇔ボール非保持5-4-1を基本としている。2014年に反町松本が初のJ1昇格を決めた頃から長らくJ2では流行していたシステムだが、今シーズン採用しているチームは少数派となっている。理由は…よく分からないので各自調べるように(他力本願)要するに手堅いチームである。

②甲府の可変システム

甲府はビルドアップ時、CB山本が長崎2トップの背中に立つことから始まる。これは北九州戦ではやっていなかった方法で、どうやら長崎2トップ(というかイバルボ)のプレスが弱い事を見越した対策だったようだ。3バックで三角形を形成してボールの前進を図る、行き詰ればGK岡西も参加するorダブルボランチの1枚が降りてきてボールを引き出す。これだけで長崎のプレスは無効化されて簡単に第一防衛線の突破を許した。

--Jリーグ通算500試合目となった山本選手のプレーについて。
最終ラインから1つ上がってアンカーでゲームをコントロールしてくれた。ビクトル イバルボや名倉 巧のところでFWの背中に入ってプレーしたことは良かった。
(伊藤監督)

ビルドアップに成功した甲府の狙いは大きく分けて2つ、左シャドー泉澤を活かしたドリブル突破 or 長崎のブロックを左サイドに寄せた後に大きく右サイドの藤田or松田への展開になる。特に泉澤は常に長崎の脅威となり続けた。シャドーと言えば長崎でいえば澤田、大竹、吉岡などが務めるポジションで、相手CBとSBの間で微妙な立ち位置(ハーフスペース)を取るのがセオリーになる。しかし甲府の泉澤は積極的に外側でボールを受けて、ドリブルで抜きに掛かるかディフェンダー(毎熊)を引き付けた。おそらく360度どこからもプレッシャーを受けるハーフスペースに立たせるより、タッチライン際に立たせてプレスを180度(視野内)に限定させた方が泉澤の良さが最大限活きるということことなのだろう。

甲府は11人が状況を判断しながら、ある程度決められたポジション変更をすることでカウンターのリスクを抑制しながら立ち位置で優位性を確保した。その中心にいたのは山本と泉澤だったように思う。

相手を邪魔できない長崎

「サッカーはミスのスポーツ」と言われている。それは選手数の割に異様に広いピッチと、手ではなく足でボールを扱うというルールに由来している。それでもプロ選手なのだから、プレッシャーがなければ高確率でプレーを成功させることができる。だからこそ、サッカーは「自分たちができる事」と同じくらい「相手を邪魔する事」が重要になる。

この試合の長崎はどうだったか?少なくとも畑が途中出場した後半60分までは「相手を邪魔する事」は上手くいかなかった。山形のビルドアップが上手かったのもあるが、長崎は比較的守備が苦手な4人(イバルボ・名倉・大竹・氣田)がプレス隊になったことも大いに影響した。特にイバルボは…まぁ守備嫌いなんで仕方ないけど、あそこまで守備を免除されるなら攻撃ではもっと圧倒的な存在感を出してもらわないと割に合わない。もちろん活かす側の問題もあるが、普通に1対1で技術的に負けているようではスタメン出場はリスクの方が大きすぎる。

皮肉なことにイバルボが下がってからは一方的に長崎の展開になった。もちろん2点差、試合終盤という状況が甲府の陣形を下げさせたのだが、畑・植中のプレスが掛かれば甲府の攻撃を機能不全にできたのも事実。結果論、植中先発でイバルボ途中出場なら結果は違ったかもしれない。結果論だけどね。意味ないね、結果論だからね。

効果的だった甲府のハイプレス

③長崎のボール保持

長崎はボール保持時、いつものようにボランチを1列下げて3バック化することなく、2バックのままでビルドアップした。相手FW+1人でビルドアップするのは定石で、甲府は金園の1トップだったためセオリー通りだった。

4-4-2を相手にウィングバックを浮かせて起点にする3-1-4-2で攻撃の形を作ってきた長崎だったが、甲府のような5-4-1と対峙するのは今シーズン初となった。いつものように亀川を起点にできない長崎は、ロングボールを織り交ぜながら攻撃を仕掛ける。しかし加藤・カイオもマンマーク気味に対応されるなかで、なかなかリズムが出てこない。好調を維持する氣田が単騎でチャンスを作るシーンがあったが、前半はシュート1本と完全に沈黙状態となった。5-4-1ブロックに対して、まさに当たって砕けろ状態になった。

逆に甲府はコーナーキックからまんまと先制点を挙げる。前々節群馬戦でもコーナーキックから得点を挙げており、ここまでの得点の3割をセットプレーが占める甲府。十分に注意しないといけない局面だが、179cmの中村に166cmの大竹がマークに着いた時点で、いいボールが入れば失点という状態になった。

3-1-4-2で攻勢にでる長崎

どうにも前線からのプレスがハマらない長崎は後半60分に畑を投入。「さぁ前からプレスを掛けよう!」と意気込んだ矢先、甲府にポンポンと繋がれて大きくサイドチェンジ、泉澤に仕留められて追加点を与えた。平ちゃんも指摘してたけど、山本が2度ターンしていて攻撃の起点になった。なんだこの40歳凄すぎだろ…てかイバルボがもう少し畑投入の意図を感じてプレスしてればこんな事には…

④長崎のボール保持2

長崎は後半立ち上がりからビルドアップの形を変更。加藤が1列降りて3バック化(サリーダ)、いつもの3-1-4-2に可変してボールの前進を図る。これにより二見・角田が余裕をもって縦パスを入れられる & 甲府サイドハーフが喰いつけば雪崩的に3バック脇が空いてくるという効果が得られた。氣田・亀川はこのスペースを上手く活用し甲府を押し込むことに成功した。何度か決定的なクロスを上げるが甲府3バックは固く対応し続けた。

70分から出場したルアンも攻撃を活性化させた。泉澤の守備はまったく問題にせず、1枚はがすことで新しく生まれる局面で打開の可能性を見せた。コーナーキックから角田の完璧なヘッドも演出したが甲府GKのビッグセーブに阻まれた。

後半は少し、前線のプレッシャーの位置と奪ったあとの背後への意識を高めて、後半は前半よりもはるかに良いゲームをしたんですけど、ボックスに入ったあとの枠外へのシュートが多過ぎてゴールに嫌われた状態であれば、攻勢に出ていても勝機は逃してしまう。
(手倉森監督)

長崎が放ったシュートは12本だったが、そのうち10本はペナルティエリア内から打てていた。氣田も、ルアンも得点に値するだけの働きをした。football labが掲載しているゴール期待値は1.625を記録しており、1~2点は取れて妥当な内容だった。んー悔しいッスね。

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おわりに

決意を持って挑んだアウェイ3連戦、終わってみれば勝点2。結局は新潟戦でラストワンプレーを凌げなかったのが尾を引いたような形になった。「最悪なことは、最悪なタイミングで起きる」という言葉を何かの漫画で見た気がする。対戦相手的に一番厳しい5連戦で、しかもアウェイ3連戦で、一番パワーを出したいタイミングで富樫、澤田、秋野とチームの中心を相次いで失ったのはあまりに間が悪すぎた。まぁでもリーグってこんなもんだし、人生もこんなもんかと悟れば少し心も軽くなる(個人差あり)

次節は久々のホームで磐田戦。時期的に首位陥落という事実は全く気にする必要ないけど、必ずや昇格争いのライバルになるであろう磐田は叩かなければならない。まさに6ポイントマッチ。たぶん長崎の刺身食べたらパワー出るから大丈夫だと思う。

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