【衝撃的な内容と妥当な結果】第25節 愛媛戦【レビュー】

僕はブーイング不支持派だ。
「選手はプロなんだから悪いプレーにはブーイングしないと」という理由は分かるけど、ブーイングと罵詈雑言を区別できるほど長崎サポが成熟してるとは思えないし、安易なブーイングは新規サポの獲得にとって弊害にしかならないと思っているからだ。

そんな自分でも愛媛戦を現地で観戦していたら試合後はブーイングしてたかもしれない。それほどに内容が悪かった。悪かったというか何もなかった。愛媛に対するリスペクトもなければ対策もない、自分たちの積み上げもない…

大雨のフクアリで5失点したときも辛かった。
横国でマリノスに5失点したときも辛かった。
柏に5失点したときも辛かった。
(5失点試合を生観戦する確率高いw)
それでも怒りが込み上げてくるなんてことはなかったし、どの試合でも選手を拍手で迎えて「俺らがついてる」と歌った。それが昨日の愛媛戦だけは一晩たっても冷静になれないし、考えれば考えるほどむかっ腹が立ってくる。

このままだと精神衛生上とても良くないので、久しぶりにレビューでも書いてガス抜きを図りたい。あくまで自分のために…

サンドバッグになりながら勝点3を奪った前期・愛媛戦

個人的に愛媛はすごく印象に残っているチームだ。

人件費が限られるJ2チームの大半は3421の人海守備重視、ワントップに屈強な選手を置いてカウンター一発、もしくはセットプレー狙いになる。反町・松本の成功体験が地方クラブの道しるべとなり、最もコスパの出やすいシステムとして踏襲するチームが多い。実際、長崎も同様の戦術でJ1昇格を果たした。

対して愛媛の川井監督はボール保持にこだわる。
ボールを持って相手を押し込み、再現性を持ってハーフスペースを攻略する。押し込んでいるがゆえに守備もプレス重視、ボールを失っても襲い掛かるように相手を囲み、またボールを保持する。なかなかこの人件費の規模感ではできない戦術だし、結果が伴っているとは言い難い順位にいるのも事実なんだけど、すごく志が高いし応援しがいのあるチームだと思う。

前期・愛媛戦はキュベックのCKから幸先よく先制点を取れたけど、その後は終始サンドバッグ状態。角田、キュベック、徳重というJ2では質的に優位性のある3人がなんとか踏ん張ってクリーンシートを達成、辛くも勝点3を得た。
支配率35%、シュート5本で勝てたのだから望外の結果だったけど、内容だけで観れば完敗に近い内容だった。

ボール保持にこだわりたい手倉森監督

就任当初から手倉森監督が掲げているのは「柔軟性と割り切り」だ。
柔軟性とはポゼッションもカウンターもできる、リトリートもプレスもできる、相手や戦況に応じて戦い方を変えられる戦術的な幅を持つことで、どんな相手にも対抗できることと言っている。
これはベガルタ仙台時代からリオ五輪のチーム作りまで持ち込まれたコンセプトで、手倉森監督の根幹にあるフィロソフィーともいえる。

手倉森監督はロシアW杯のアジア最終予選でコーチとして入閣した時、ハリルホジッチ監督と意見の相違があったことを自伝で述べている。アルジェリア代表の監督としてブラジルW杯でベスト16に進出し、ドイツ代表をあと一歩まで追い詰めた実績をハリル監督は相当自負しており、縦に早いサッカーには相当なこだわりがあったと言われている。

日本人選手と長所を活かすにはボール保持も大事で、体力を温存する意味でも縦に早いサッカー一辺倒では問題があると考えた手倉森監督はハリルホジッチに進言したこともあったとか。灼熱のテヘランで開催されたAWAYイラク戦では先制しながら、試合終盤にガス欠を起こして同点ゴールを許し勝点1に留まった。

この辺の経験からして「厳しいコンディション下においてはボール保持して試合をコントロールする力が重要だ」という発想があるのかもしれない。
(これは完全に自分の想像)

ボール保持するための夏の補強

手倉森監督の思惑通りにはいかず、開幕当初の長崎はなかなか波に乗れない。

それまでの高木長崎はボール非保持に強みがあり、ハードワークと攻守の切り替えを徹底的に強化して成功体験を得た。玉田を中心にボール保持とコンビネーションで得点を重ねたくてもボランチがボールを捌けない、結局玉田が降りてきてゴール前の枚数が足りない、負のスパイラルに陥った。
幸いにして緊急補強した呉屋大翔は個人で打開できる選手で得点力不足は解消したが、いつの間にか裏抜け一発狙いでゲームコントロール力は養われないまま前期日程を終えてしまった。

その対策として獲得したのはカイオセザールと秋野央樹、ボールを持てるボランチを補強することでボール保持率を上げるのが目的だと思う。相手の勢いに飲まれるまま前半に押し込まれ、相手がガス欠した試合終盤に押し返すという試合の繰り返しを是正するための補強。試合をコントロールしながら柔軟性を出すという、手倉森監督の理想を実現するための一手になるはずだった。

スタメンから想像した選手起用の意図

長崎は前節からスタメンを2人変更、玉田を長谷川、中村を秋野。
特に長谷川悠は身体の強さ、高さ、懐の深さがあり、ポストプレーで時間を作れる選手。ちゃんと調べてないけどかなり久しぶりのスタメン起用だったはずで、愛媛の3バックは割と身長低くてビルドアップ上手い選手がそろってるから長谷川のモンゴルパワーで粉砕するのかと思ってた。

また前期・愛媛戦で徹底的にハーフスペースを蹂躙されたことを考えれば3バックにするなり1アンカーにするなりスペースを埋めて対応するやり方もあったはずだけど、手倉森監督は普通に442フラットで試合に入った。

対する愛媛は前節からスタメンを6人変更。ちゃんと確認してないけど結構思い切ってターンオーバーしてきたし、事実足が動いててフレッシュだった。長崎はルヴァンを経験してるからターンオーバーには慣れてるという俗説は迷信だった。残念。

なぜか愛媛の土俵に乗っかってポゼッションサッカーを披露する長崎

愛媛戦をじっくり再確認するほどドMじゃないので覚えてる範疇だけど、試合内容はこんな感じだったと思う。

①カイオ、秋野が加入したことで強気になったのか、かなりボール保持を意識した戦い方
②攻撃は全てボランチ経由、ダイレクトプレーもスペースへのパスもでない各駅停車地獄
③ちんたらしてる間に愛媛は54のブロックを作って待ち構える、稚拙な長崎のボール回しはミスを待つだけで簡単対応
④失点を重ねながら焦りを募らせる攻撃陣は数的不利を顧みず玉砕覚悟の単騎プレス、中盤から後ろはカウンターが怖くてラインを上げられず、スカスカの中盤を愛媛のシャドーが蹂躙

何もかも、攻撃も守備も、選手交代も、すべてがかみ合わなかった90分間だった。

一番衝撃を受けたのは徳重がゴールキックをショートパスで繋いだ場面。これは長崎がボールを握ることをテーマにしていたことの表れだと思う。なぜ手倉森監督がこんな戦い方をしたのか不思議でならないけど、想像するにアジア最終予選の「コンディションが厳しい時はボール保持も必要」という教訓が脳裏にあったのではないだろうか?
だとしても、ボール保持に関しては愛媛の方がシーズンを通して取り組んでおり、一日の長があるのは明らかだった。ボールを持てるボランチを2枚補強したからといってボール保持に大きく方向転換したのは本当に不思議だし、自分たちのサッカーにフォーカスするあまり、相手を疎かにしてしまったのではないかと思う。

愛媛からするとどんな展開が嫌だったか。
例えば長崎が前期の反省を活かしてスペースを消してくる守備をしてくる、球際を強調して呉屋と長谷川がゴリゴリくる、前からのプレスをあざ笑うように裏にボールを送られて翁長と澤田がなだれ込む、疲弊してきたところに戦術兵器イバルボが入ってくる…
相手を嫌がらせるための手札はいくらでもあったはずなのにそれを活かすことなく、愛媛の土俵に乗っかってボール保持合戦を繰り広げるも徐々に完成度の低さを露呈、選手は頑張ってるはずなのにまったく報われない。あまりに辛い90分だった。

とどめは愛媛・川井監督のこの言葉。
「前期も普通にやれたし別に長崎対策はしていない(けど4点も取れた)」けっこうショッキングw

産みの苦しみは続く

手倉森監督の理想は高く、それ自体が間違えているとは全く思わない。
人海守備とハードワークを追求しただけで残留を果たせるほど、J1が甘くないことは全ての長崎サポが見てきた。事実高木監督もボール保持に取り組むそぶりを見せたし、手倉森監督が取り組むのも分かる。

ただ今回ばかりは試合のアプローチが悪かった。
正直、愛媛を甘く見たとしか思えないようなプランと試合内容だった。
これで10敗目、自動昇格を目指すにはあまりに痛すぎる一敗で、あまりに高い授業料だったけど、この手痛い敗戦から何かを掴んでくれていると期待するしかない。

ほんと手倉森監督お願いします…

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