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【相手を動かす】第19節 栃木SC【雑感】

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もしこの日の試合がグリーンスタジアムで開催されていたら現地には行かなかっただろう。なぜならあのスタジアムには申し訳程度の屋根しか設置されておらず、とても雨風を凌げるとは思えないからだ(雰囲気は良いんだけどね)糸を引くような加藤聖のクロス、都倉賢のどんぴしゃヘディングを見られたのは去年7月に完成したカンセキスタジアムとちぎのお陰だった。ありがとうカンセキスタジアムとちぎ、やっぱり屋根 is 大事。

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懐かしのグリスタ
後半ATに大久保択生がPKを止めてくれた試合
三好GKコーチが退席処分になった思い出の地
左に映りこんでいる申し訳程度の屋根

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カンセキスタジアムとちぎ
全席屋根に覆われた素晴らしいスタジアム
風向きによっては普通に濡れるけど笑

①スタメン

①スタメン

長崎は前節と変わらないスタメン。ベンチには米田が復帰、高卒2年目の植中は今シーズン初のメンバー入りとなった。

栃木はスタメンを1人変更、右サイドハーフに2002年生まれの植田が入った。長崎からレンタル移籍中の畑潤基、2017年J1昇格の立役者となった乾大知、怪我が発表されている髙杉亮太は残念ながらベンチ外となった。

2019年から指揮を執る田坂監督は栃木の戦術をストーミングであると公言している。簡単に説明するとストーミング(Storming)とはボールを失う事を厭わずにロングボールで陣地を回復し、嵐のようなプレスで即時奪還→ショートカウンターを目指す戦術である。長崎出身者には「小嶺忠敏が率いた2000年代の国見高校」という表現が最も想像しやすいだろうか。栃木を攻略するということは、つまり嵐のようなプレスをどのように掻い潜るかということと同義になる。

栃木さんの強みというのは前からのプレス。それをどうかいくぐるかというのが、われわれの今日のミッションでした。
(松田監督)

②迷いのない栃木のプレス

②マンマーク栃木

後ろから組み立てたい長崎に対して、栃木はほぼマンツーマンの守備をぶつけてきた。4-4-1-1のような形に変形して矢野が長崎のセンターバック2人にプレスを掛けることから栃木の守備は始まる。ジュニーニョは1列下がってボールを受けに来るボランチのマークを担当、加藤大とカイオは出入りを繰り返したがジュニーニョはマークを外さない勤勉さを見せた。矢野のプレスでボールをサイドに誘導させたらボールを奪いきるプレスを実行、長崎のサイドバックには栃木のサイドハーフが、長崎のサイドハーフには栃木のサイドバックがぴったりとマンマークについた。これは高木相模原が長崎のサイド攻撃を機能不全に陥れた方法と似た手法だった。

上手くサイドで前進できない長崎は立ち上がりから栃木の守備ラインの裏にボールを出したり、都倉の頭を目掛けてロングボールを蹴りこんだりしてみたもののJ2屈指の武闘派CBコンビ柳と三國は簡単に競り勝てる相手ではなかった。栃木としてはマークするべき相手がかなり明確になっていたため迷いがなく、プレスの出足が相当早かったことも長崎を苦しめた。

逆にボールを奪った栃木はとにかく縦に早い攻撃を仕掛けてくる。ターゲットマンの矢野を目掛けてロングボールを蹴りこみ、セカンドボールを回収してシュートまで持っていく形を何度か作っていた。一本のパス、一本のシュートの精度が高ければ失点した可能性もあった立ち上がりだが、長崎は松田流の原則を守ったゾーンディフェンスでチャレンジ&カバーを徹底、ペナルティエリア内には侵入を許さない堅い守備を展開した。

③ジャブのように効いた左右のスライドとウェリントンの狙い

栃木のプレスにも慣れてきた10分過ぎからは落ち着いてボールを左右に振りだした長崎。相模原戦から新たな武器として追加された富澤のビルドアップ参加のおかげで、かなり安定してボールを散らすことができたが中々ボールを前進できない。富澤がビルドアップに参加することで後方ではかなりの数的優位を保てていたが前方では数的不利の状況になっており、どうしてもウェリントンで行き止まりになってしまう。

③攻めあぐねる長崎

余談だが、巷で流行りのポジショナルプレーという概念は後方で確保できた数的優位を前方まで運ぶための方法論という捉え方をすることができる。今回は栃木の訓練されたプレスを前に数的優位を運ぶことはできなかったが、富澤で確保された優位性を一歩前まで運ぶことが出来れば栃木の守備を崩すのはもう少し容易だったかもしれない。ポジション可変のせいでネガティブトランジション(攻撃→守備の局面)時のバランスが崩れるのを嫌がりそうな松田監督がどう考えるか分からないが、伸びしろとしては面白い部分かもしれない。

長崎に栃木攻略の兆候が見えたのは13分の場面。ウェリントンが少し下がり目の位置でボールを受けたとき、栃木の左SB菊池が相当長い距離を走って猛然とプレスを掛けてきた。菊池が空けたスペースはボランチの片割れが埋めるという仕組みになっている。この後14分、20分、22分と栃木のサイドバックを引き出すような動きを繰り返して、栃木サイドバックが空けたスペースにカイオが飛び出すという狙いを定めていった。

飲水タイム明けの26分、次は左サイドで同様の現象が起きる。左右に振られて矢野がプレスに行けない代わりに右SHの植田が江川に喰いつく→次にボールを受けた加藤聖には右SBの大島が喰いつく→中盤で浮いた加藤大が前向きにボールを受けることで栃木のプレスを完全に外すことに成功して澤田のシュートまでたどり着いた。

28分にも栃木サイドバックを動かしてウェリントンが侵入する場面を作った。栃木からすると急に崩され始めたような時間が続く中、29分に長崎は先制点をあげる。

④栃木を動かせ1

またしてもウェリントンは低い位置で毎熊からボールを受け取る。栃木の左SB菊池はウェリントンめがけて長い距離を走ってプレス、菊池が空けたスペースは左DH佐藤が埋める。マンマークについている勤勉なジュニーニョが自分に付いてくることを理解して、カイオも菊池が空けたスペースに侵入する。

④栃木を動かせ2

一連の動きによってピッチ中央に一瞬エアポケットのようなスペースが生まれ、3分前と同じく加藤大が前向きにボールを握ることができた。この後はボールを受けたカイオが2人を交わして中央に絞ったウェリントンに渡し、ウェリントンは左の大外でフリーになった加藤聖に素早く渡した。かなり短い時間で左右に振られた栃木はスライドが間に合わず、栃木の右SH植田が詰め切る前に加藤聖はアーリークロス、糸を引くような弾道で三國の頭を超えたクロスは都倉の頭にどんぴしゃで当たってネットを揺らした。

この得点の半分くらいは高精度のクロスを上げた加藤聖の手柄だと思うが、ドフリーでクロスを上げられる状況を作れたのはウェリントンとダブルボランチの連携だった。栃木のサイドバックを動かす試みは5回の布石を経て、6回目のチャレンジでゴールにたどり着いた。立ち上がりから執拗に左右に振って栃木の運動量を削りに行ったのも奏功したかもしれない。ベンチからは松田監督の「(左右に揺さぶって相手を)走らせろ!」という声が響いていた。

前半、多少、戸惑ったところというか慣れないというか。トレーニングと本番は少し違う部分がある。それでちょっと大事に、大事にという感じになりましたが慣れていくにしたがって、良い配置が取れるようになった。栃木さんのほうは、かなり長いスプリントでプレスを掛けてくることが多い。そのスプリントをかけてくる間にちゃんと解決策を見つけるということが、時間の経過とともにできるようになりました
(松田監督)
--ある程度前からハメる時間もありましたが、徐々に長崎にボールを動かされた印象です。
相手のベンチからは「走らせろ!」という声は聞こえていました。SBが少し低い位置にいて、サイドハーフが開き気味になって、FWがサイドの背後に流れてくることで、ウチのSBを困らせるようにやっているのは分かりました。
(菊池大介)

その後は選手を変えながら攻勢を強める栃木の圧力を凌ぎ切り、加藤聖のコーナーキックが矢野のオウンゴールを誘発して課題だった追加点を獲得。最後までチャレンジ&カバーを徹底して栃木のパワープレーをシャットアウト、5戦連続の無失点で5連勝を飾った。

④おわりに

現地で見ていたから余計に感じたのかもしれないが、栃木の圧力は相当なものだった。特にエジガルvs三國のド突き合いは相当な迫力だった。栃木としては田坂式ストーミングをベースに勝点を積み重ねるなら、やはりNEXT明本が欲しい…と思ってしまうところだろうか。

長崎は次節、なんと6戦連続無失点で6連勝中の磐田をホームに迎える大一番。まさに勝点6の価値があるシックスポイントマッチとなる。松田長崎が昇格への挑戦権を得るに相応しいチームなのか、それを試す試金石としてはこの上ない相手でありシチュエーションとなりそうだ。


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