【残酷な甲府のテーゼ】第41節 ヴァンフォーレ甲府戦【言いたいだけ】

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結果は無念の引き分け、昇格への夢は断たれた。

①スタメン

①スタメン

②3バックが苦手な手倉森長崎

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手倉森長崎にはどうにも苦手なタイプが2つある。1つは徳島や琉球のようなプレス耐性のあるボール保持特化型チーム、もう1つは3バックで守ってくるチームである。守備時にウィングバックが下がって5−4−1のブロックを形成されると上手くゴール前まで運ぶ事ができず、再現性のある攻撃をできなくなる。1試合平均の得点を比較すると顕著で4バック相手だと1.8点も取れた得点が、3バック相手だと0.8点…いくら何でも差が出過ぎである。

要因はいくつか考えられる。長崎はボール保持志向ながらGKがビルドアップに参加できないという構造的弱点があり、3−4−2−1でハイプレスに来られると上手くプレスを外せずに簡単にボールを失う場面が目立つ。3バック相手ならウィングバックを誘い込んで最終ラインの脇を狙うのがセオリーだが、プレスを上手く外せないと中々難しい(徳島はこの辺が相当上手い)

もう一つ、雑に放り込んでも何とかしてくれる屈強なセンターフォワードがいないのも3バックを崩せない要因だろう。例えばファンマやウタカのような懐の深いキン肉マンがいれば攻略の糸口が掴めるかもしれないが、エジガルジュニオはそういうタイプの選手ではない(身体の使い方は上手いけど)本来であればイバルボが屈強ターゲットマンの役割を果たす予定だったのかもしれないが、シーズンが深まるにつれてボディコンタクトを異様に避けるようになってしまった彼にはその役割が果たせない。

反町松本がJ1昇格を果たした頃から大流行した3−4−2−1、ピーク時はJ2で半数近くのチームが採用していたが今季は5〜6チームというところだろうか、かなり数は少なくなった。少なくなったがまだ存在しており、間の悪いことに負けられない最終盤で当たる甲府も3バックを採用しているチーム。1点勝負になるのは試合前から互いの監督が想定していただろう。

③守りきれなかった虎の子の1点

試合は予想通りボールを保持する長崎、ハイプレスとカウンターを狙う甲府という形で推移していく。甲府は伊達に4位にいるチームではなく、連動したハイプレス、ドゥドゥを中心とした縦に速いカウンター、5−4−1で固く守るブロック、大ベテランのバンディエラ山本英臣を中心にしたボール保持…どの局面をとっても隙がなく、ハイレベルなチームだった。

福岡との勝点差は2、引き分けでもシーズン終了の可能性がある長崎には当然得点を取らないといけないが、どうも得点できる気配を感じない。それほど固かった甲府相手に、カイオセザールが年間ベストゴール級のミドルシュートをぶち込んだのは天から降ってきた恵のような得点だった。年間通して好調を維持してチームを牽引し、大きく成長したカイオセザールの一年を象徴するようなゴールだった。

惜しむらくはこの得点が前半24分とかなり早い時間帯に生まれたということ。どう考えても1点差の勝負になる甲府戦、選手は満身創痍、勢い任せに攻め倒してカウンターを喰らうのは最悪の展開…長崎はこのまま試合が終わってくれと願うような展開になる。

甲府は後半頭から中村亮太朗を投入。大卒1年目のボランチは前回対戦時にコーナーキックから得点を決めており、長崎としては嫌な選手が入ってきた。前半は何とか耐えてきた長崎だが、4−4−2のライン間で上手くボールを受ける中村に手を焼きズルズルと押し込まれていく。そして後半22分、秋野のミスから奪われたコーナーキックで、中村亮太朗にまたしてもヘディングを叩き込まれた。マークに付いていたのは秋野、短時間に2度のミスを犯し、結果的にこのミスが致命傷になった。ここまで大黒柱として長崎を引っ張ってきたキャプテンがこの土壇場で…あまりに報われない、サッカーという競技の残酷性を感じざるを得ない瞬間だった。

失点したことで何としても得点を奪わないとシーズンが終了してしまう長崎は必死の形相で甲府ゴールを目指す。しかし前線にパワーを投入したところで簡単に崩れる相手ではなく、シュートは放てど決定機は作れず。主審のホイッスルは試合終了と、昇格争いの決着、そして手倉森長崎の航海が終わったことを知らせる笛となった。

④おわりに

昇格目前で足踏みとなった徳島は大宮相手に勝利し、文句なしの昇格とほぼ優勝を手中にした。福岡も愛媛相手に全く危なげのない完勝を収め、またしても5年ぶりの昇格を手にした。三度繰り返された5年周期恐るべし…

勝負の世界に“もし”は無意味だが、もし39節福岡と金沢戦のラストプレー、セランテスが必死で守った勝点1がなければ今節での決着はなかった。「最悪引き分けでも最終節まで可能性は残る」という精神的余裕があれば、甲府戦の後半22分以降の展開は違うものになっていたかもしれない。それほどにセランテスが守った勝点1には価値があった。

試合翌日、手倉森監督の退任が発表された。契約期間を残しているので、事実上の解任、要するにクビである。正直今の段階では「なぜ?」という思いの方が強い。果たしてフロントが手倉森監督をどう評価したのか、どのようなプロセスで解任という決断に至ったのかを推し量るには今後出てくるであろう会見を待つしかない。

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