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【あと一歩に泣く】第36節 松本山雅戦【雑感】

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「試合終了間際の被弾と言えばジャーン モーゼルだよねぇ~」と思ってたけど、あれってもう5年も前の話なのね。時の流れ is 残酷。塚川の90+5分の得点 is もっと残酷。まぁでも糧にするしかないッスね…

①スタメン

①スタメン

長崎は前節から4人変更、毎熊・玉田・名倉・富樫が先発入り。毎熊は32節群馬戦以来、4試合ぶりとなる出場でようやく本職サイドバック不在問題は一旦解消された。

松本は前節から3人変更、塚川・高橋・ジャエルが先発入り。前回対戦時は4-4-2だったシステムがいつの間にか5-3-2(3-1-4-2)に代わっていた。古今東西、下部リーグに降格した翌年は苦しむもので、松本もその穴にすっぽりハマる形になった2020シーズン。一時は最下位が視界に入るほど不振を極めたがここ8試合は5勝2分1敗、状況は好転している。そもそも能力のある選手は揃っているわけで、これくらい勝ちが先行しても何の不思議もないチームではある。途中加入した佐藤・前のフィットも試合内容の向上に大きく貢献しているようだ。

②5人のプレスと5人の最終ライン

前回対戦時はどんな内容だったか?布監督の時は4-4-2でブロックを組んできた松本は2トップの規制がとにかく緩くカイオへのパスを出し放題、特に苦労する感じでもなく畑とルアンのゴールで先行、しかし謎にイバルボを投入したことで守備のバランスを大きく崩して2失点。個人的にはあまり言い切る事はしないが、あの試合だけは確実に手倉森監督の采配ミスで勝点を失ったと断言できる内容だった。

あれから2ヶ月、布監督の解任を受けて急きょチームを率いる事になった柴田監督は全く違う形に松本を作り変えていた(ように見えた)

②松本のプレス

基本的なシステムは5-3-2、後ろは人数を揃えて固く守りながら前線のプレスでショートカウンターを狙うのが基本戦術。特に2トップ3ボランチで形成される五角形のプレス隊はかなり訓練されていて、長崎の可変3-1-4-2ビルドアップに対してキーマンになるフレイレ・二見に持ち運ぶスペースすら与えなかった。特に塚川・前の運動量は尋常ではなく、またパスコースの塞ぎ方も適切で長崎は上手くボールを前進できない時間が続いた。江川・毎熊に対してはサイドバックの浦田・高橋が対応することで蓋をした。

長崎も左右にボールを動かしながらプレス回避を図ったが、やはり左サイドバック不在問題に直面する。この日の江川はなんとか局面を打開しようとこれまでより無理のある縦パス・ドリブルを選択する回数が増えたが中々効果的にはならなかった。江川の前方パス成功率は16%、クロスとドリブルの成功数は0…結局前半で交代となった。

松本は狙い通りの守備からショートカウンターで何度か決定機を迎えたがシュート数は2本のみ、長崎もゴール前に迫るシーンは作るものの再現性には乏しかった。スコアレスでハーフタイムを迎えるかと思いきや40分に玉田のファインゴールで先制に成功する。後方から丁寧に組み立てて名倉→玉田のワンツーからプレスを交わして前進、氣田のドリブルで前進した綺麗な攻撃はパス17本を繋いだものだった。

③5-3-2の泣き所を突いて試合を優位に進める

③押し込む

後半頭から長崎は鹿山を投入して右サイドバックに配置、毎熊を左サイドバックに移した。一方の松本はジャエルに代わって阪野を投入。

前半とは打って変わって押し込めるようになった長崎。さすがに前半から飛ばしてきた松本の運動量が落ちてプレス回避が容易になった事、そして毎熊を左サイドバックに回したことで縦の推進力が出たことが要因だった。松本の5-3-2は一度押し込んでしまえば構造的に3ボランチの両脇が空くシステムになっており、特に二見・毎熊・氣田が上手く絡みながらボールを前進させる場面が増えた。

後半の飲水タイム前後からは松本もやや集中を欠いたパスミスが出るようになり、何度か決定機を作る事が出来たが決めきることはできなかった。あと一点取れていれば試合は決められた可能性が高いが…

④痛恨の失点

終盤には畑・加藤を投入した手倉森監督、試合を締めにかかった。前線からのプレスを緩めず、極力相手ゴールに近い陣地で時計の針を進めていく。このまま試合終了かと思いきや名倉のファールを取られて、このフリーキックから塚川にヘディングを叩き込まれて痛恨の失点。ほぼ手中にしていた勝点3をするりと落としてしまった。

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今年の長崎はとにかくセットプレーに弱い。総失点の30%をセットプレーから奪われており、これが10点目の被弾だった。長崎は基本的にマンマークで守るがどうにもシュートを打たれる回数が多く、正直この守り方が正解なのかは分からない。

今回、塚川のマークを外したのは恐らく鹿山だった。鹿山は190cmと上背に恵まれているほど空中戦に強いという感じではなく、千葉戦でも180cmのアランピニェイロ相手にかなり苦戦を強いられていた。元鹿島・岡山の岩政大樹さんの著書によると「空中戦は体格よりタイミング(意訳)」らしく、鹿山は誰も競らないようなボールには驚くほど高い打点でヘディングできるが相手と競り合うと急に力なく見えてしまう事がある。タイミングとはつまり駆け引きであり、鹿山が目線を外した瞬間にゴールど真ん中に入った時点で塚川の勝利だった。

センターバックやゴールキーパーのような守備の選手はミスして失点に絡んで、それを糧にして成長していくタフさが求められる厳しいポジションだ。この失点は昇格争いに大きく影響するだけにチームとしても痛恨事だったが、結果は変えられない。鹿山が未来を変えてくれる貯金だと思って今は次に進むしかないだろう。(畑も上がってきたGK村山のマーク外してたし、どちらにせよ失点してた可能性は大きかった)

⑤おわりに

松本と前回対戦したときのレビュータイトルは【悪癖再び】となっていた。つまり「リードしながら稚拙なゲームコントロールで追いつかれる」ことを悪癖と表現している。AWAY琉球戦(1-1)AWAY新潟戦(2-2)AWAY金沢戦(1-1)AWAY松本戦(2-2)…先制しながら追いつかれた試合はこれまで4試合あり、このHOME松本戦が5試合目となった。

本稿のタイトルを【5度目の悪癖】にしようと思っていたが、やっぱりやめた。2点リードしながら攻撃の手を打って追いつかれた前回と違い、今回はゲームを締める手を打って後半はほぼコントロール下に置いたという点で変化は見られた。あとワンプレーさえ凌げれば…そのワンプレーに真価が問われると言われればそれまでだが、糾弾されるような試合内容ではなかった。ゴール期待値も上回っていた。逃げ切りに失敗して勝点2を失ったが、この取りこぼしで必要以上にチームに変化を加えてしまう方がリスキーだろう。

次節は奇しくもまた前回対戦時に悪癖を露呈した新潟。ここで勝ちきれないようだと昇格はいよいよ黄色信号から赤信号に変わってしまう。中2日の厳しい日程もホーム連戦の利を活かして、確実に勝点3を勝ち取ってほしい。

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