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香らない枝、よく育つ木

吉祥寺駅の中の花屋を歩き回って、いいフォルムの観葉植物を買った。多肉植物のぷりぷりとしたあの質感とフォルムにはあこがれるものがあるが、ある日突然真ん中から枝が生え花が芽生えるのがちょっと怖くて今回は見送ってしまった。

そんななか選ばれたのが、根っこのぷりっとしたアデニウムである。別名砂漠のバラとも言うらしい。砂漠のバラというだけのことがあり、さほど水やりをせずともよく育ち、日光が生きていく上での肝らしい。

と言いつつ、夏場は水を挙げたほうがよく育つとのことで気が付いたときに水をやった。植物に関してはことさら丁寧な暮らしと程遠いので、手のひらで包み込めるほどの大きさのプランターをそのまま洗面所に持ち込み、コップに水を灌ぐがごとく水をだはだはにかける。下から水が出てきたら止める。土がはみ出てくるのを待って、定位置の出窓の際に置く。

定位置は、普段私が仕事をしている机の目の前の出窓である。仕事柄PCと戦うことが多いので、スタンドの上のPC越しにアデニウムの端くれを見る。
夏場は少し椅子から腰を浮かせないと見えないほどの大きさだったアデニウムは、いまや普通に座ってもPCの奥から顔をのぞかせるようになった。水やりに比例して順調に背を伸ばしている。

いまだ水やりを派手に忘れてしまうことは許してほしいが、いつかその枝から自然に花をつけてくれる日を楽しみにしている。あわよくば、両手で抱えなければならないほどのプランターに植え替える日のことも。

PCの向こう側は忘れがちなので、とうに海辺の香りの枯れた枝もどきもインテリアとして、アデニウムに沿えるように置かれたままになっている。

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