見出し画像

使いやすいシャープペンシルについて考える(1) 芯について

はじめに

Twitterで「シャーペン同好会」を名乗っていることもあって、フォロワーの方からシャープペンシルについて質問をいただくことがあります。その中でいつも困惑してしまうのが、「○○(商品名)って使いやすいですか?」や「使いやすいシャープペンシルはどれですか?」といった質問です。というのも、こういった質問に出てくる「使いやすい」について考えていくと、結局のところ質問には「分かりません」としか答えられなくなってしまうからです。

もちろん自分にも、使いやすいシャープペンシルはあります。しかし、そのシャープペンシルが質問者たちにとって使いやすいという保証はありません。私とその人たちとは、用途・持ち方・筆圧等々、使い方が異なっているはずです。それらの事情を知らない状態では、何が質問者にとって使いやすいかも分かりません。それどころか、そもそも私と異なる使い方をしているならば、私にとってその使い方はいわば「専門外」となるので、適切にアドバイスすることも難しくなります。

シャープペンシルを部位ごとに考えてみる

とはいっても、私にとって使いやすいシャープペンシルがある以上、どのような点で「使いやすい」と私が判断しているかを伝えることは可能です。ただしシャープペンシルを使っている場面では、その時の自分の使い方や、シャープペンシル本体各部分の形状や構造、芯の性質…などといった要素が複合的に絡み合っています。そのため分かりやすく説明するには、この複合的な事柄をいわば「解きほぐす」必要があります。そこで本記事では、まずシャープペンシルを芯が出る先端部から尾部にかけて各部位に分け、その他の要素を考慮に入れながら、その部位においてどのような点が「使いやすさ」と関係しているかを考えてみたいと思います。考察する部位と順番は、以下のとおりになります。

芯→先端→口金→グリップ→軸→クリップ→ノックボタン

1. 芯について

芯径と硬度を選択する

芯のシャープさとなめらかさ、折れにくさと折れやすさ、細い描線と太い描線。これらは、主に芯の太さ(芯径)と芯の硬さ(硬度)によって決まります。また、シャープペンシルの「使いやすさ」をとりわけ書き味の側面で考えるなら、芯の選択が「使いやすさ」において最も重要になるのは言うまでもありません。現在、日本国内のシャープペンシルの中で最も一般的な芯径は0.5mmで、最も手に入れやすい硬度はHBですが、もちろんこれだけに囚われる必要はありません。使用場面や自分の好み、使い方などに応じて芯径や硬度を変えてみることで、それぞれの条件に相応しい芯を見つけることができます。いくつか例を挙げてみましょう。

強い筆圧でも折れないようにしたい、ノックの頻度を少なくしたい
→硬い芯または太い芯径
なめらかな書き心地にしたい、なぐり書きのメモに使いたい
→軟かい芯または太い芯径
小さくて細かい字を書きたい
→細い芯径
書いた字が擦れないようにしたい
→硬い芯

ただし、芯の選択はどんな芯でもできるという訳ではなく、そこに制約がある点にも注意しなければなりません。まず、多くの場合シャープペンシル本体の方で対応できる芯径のバリエーションが限られています。対応する芯径は0.5mmのみか、あとはせいぜい0.3mmという場合というのがほとんどでしょう。0.4mm芯や0.2mm芯だと、対応するシャープペンシルの種類がかなり少なくなります。また硬度の方も、種類がいちばん豊富なのはやはり0.5mm芯で、他の芯径では硬度のバリエーションも限定されます(例えば、HとBの間に位置する硬度Fは、0.5mm芯でしかラインナップされていません。さらに0.5mm芯には、メーカーによって硬めのHB(HHB)や柔らかめのHB(HBB)もあります。下記リンク参照)。このような制約に対しては、芯を保護する機構(パイプスライド機構など)のように、シャープペンシル本体の機構で芯が折れないよう対処する方法などが考えられます。また、本体を改造することで別の芯径を使用可能にする方法もありますが、これは多少技術を要する対処法になるでしょう。

「シャープ」ではない太い芯も含め、シャープペンシルには現在売られている芯径(mm)として、0.2、0.3(0.35)、0.4、0.5、0.7、0.9(1.0)、1.18(1.1、1.15)、1.3、1.4、2.0、3.15(3)、3.8(4.0)、5.6(5.8)がある。カッコ内は、商品名としての寸法(呼び寸法)が違うが、互換性のある芯(ただし呼び寸法1.18mmで1.1mmの芯が使えない場合あり)。このうち、0.2mmはぺんてるのみ、0.4mmは日本国内のみで発売されている。ちなみにかつては1990年代にトルコで0.6mmの芯が発売されていた(参照)。他にもヴィンテージペンシルでは1.8mmなどの芯径もある。

私が使っているシャープペンシルの芯径と硬度

画像1

よく使っているシャープペンシルと芯ホルダー
上から
0.3mm: ニューマン 商品名不明
0.5mm: 無印良品 ABS樹脂最後の1mmまで書けるシャープペン
0.7mm: Autopoint Twinpoint
0.7mm: WÖRTHER Compact
0.9mm: KRAMA Ceramic coated Mechanical Pencil
1.3mm: ぺんてる ケリー(改造品)
1.3mm: ステッドラー 925 25 木軸(非公式品)
2.0mm: ぺんてる ケリー(改造品)
2.0mm: パイロット S20(改造品)
3.15mm: David Hayward 200年レザー
3.15mm: LAMY Scribble
3.8mm: KOH-I-NOOR 5356

私が実際使っている芯について話しましょう。イラストを描く訳でもなく、授業や受験勉強に使う学生でもないので、芯に対してはそれほど専門ではないのですが、0.5mm以外の芯がどんなものか、具体的な一例として参考にしていただけたらと思います。

なお黒鉛芯の硬度については、特に言及がない場合はHB芯を使用しています。私の主な用途は一般筆記ですが、私の場合は経験上、一般筆記ならHから2Bまでの間の硬度で事足りるようです。

0.3mm芯は、外国語のテキストなどの行間や欄外などに、単語の意味など細かい書き込みをするのに使っています。芯が折れないようにパイプスライド式を使っているのですが、このニューマンのシャープペンシルはパイプも細く引っかかりも少ないのが気に入っています。

0.5mm芯は、ノート(5ミリ方眼や6ミリ罫)に書き込む時に使います。以前は筆圧が強く0.5mm芯だとよく折っていたので、0.7mm芯や0.9mm芯のシャープペンシルを使っていたのですが、持ち方を矯正してからは芯を折ることもほとんどなくなり、主に0.5mm芯のシャープペンシルを使うようになりました。0.7mm芯や0.9mm芯では、書いているうちに偏った減り方をして太くなってしまうと細かめの字が書きづらくなるのですが、0.5mm芯ではその心配もほとんどありません。0.5mm芯が安心して使えるようになってからは、個人的には0.7mm芯や0.9mm芯を使う機会は減っているようです。今使っている芯の硬度はHBですが、個人的にはFやHでも良いかもしれません。ノートにきれいに書き込む場合だと、書き損じを消しゴムで消して書き直すときに汚れずきれいに字が消えるかどうかや、紙に跡が残らないかも硬度選択の基準となってくるでしょう。

強く書いても折れる心配がなく、細芯特有の引っかかる感じもなくなめらかに書けるのが太芯の特長ですが、メモ書きなどで最近よく使っているのが、1.3mm芯や、鉛筆の芯と同じ太さの2.0mm芯です。これらの芯が好きなので、改造品を自作したぐらいです(下記リンク参照)。ケリーの1.3mmはメモ帳と一緒に持ち歩くことが多いので、濃い目の芯(コクヨの鉛筆シャープ用芯の2B)を入れています。3.15mm芯もメモ使い専用です。また、太芯は細芯よりも露出量を増やしても折れにくく、芯も細芯に比べて減りにくいので、ノックする頻度が少なくなるというメリットもあります。

色芯は0.7mmと3.8mmで使っています。0.7mm芯ユニナノダイヤのカラー芯を使っています。この芯は発色も良く、消しゴムでもよく消えるので好きな芯です。0.5mm芯もあるのですが、柔らかくて若干脆いので0.7mmの方を選んでいます。字も書くこともあるのですが、アンダーラインを引くのによく使っています。ライン引きとしては0.7mmは少し細いので、0.9mmのナノダイヤカラー芯が欲しいところです。

3.8mm芯は黄色のクレヨン芯でなめらかな書き心地です。コヒノールの芯ホルダーはマーカーとして使っています。インクのマーカーのように、紙によっては乾きにくいという心配もありません。それと、マーカーの軸がどうしても安っぽいのしかないのが不満であまり使いたくないというのもあるので、マーカーよりもこの芯ホルダーの方を使っています。芯はホームセンターで売られているタジマツールの「すみつけクレヨン細書き4.0mm」ですが、3.8mm芯のホルダーは4.0mmにも対応しています。ちなみにこの3.8mm(もしくは4.0mm)という規格は、クレヨン芯だけでなく黒鉛芯はもちろん、ノック消しゴムやシャープペンシルのノックボタンに収められた繰り出し消しゴムなどもあり、バラエティに富んだ興味深い規格です。

私のように用途によって使いやすい芯径を選んでみると、「この一本」のようにシャープペンシルを決めることができないように思います。芯について考えるだけでも、「使いやすいシャープペンシル」というのは多種多様だということが分かりますね。

次回は「先端」についてお話しします。

参考リンク
芯径(0.2〜0.9mm)と硬度(4H〜4B)のバリエーションが豊富な芯

ぺんてる Ain シュタイン芯
三菱鉛筆 uni ナノダイヤ芯
パイロット ネオックス・グラファイト芯

ぺんてるケリーの改造方法
Pentel Kerry 2.0mm mechanical pencil
Pentel Kerry 1.3mm mechanical pencil

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

16
シャープペンシルについての概論と文房具に関するエッセイを書いていきます。