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#30. 病名はギリシャ語なので余計に覚えにくい *welH- [ileus/イレウス]

病名は日本語でも普段使わない語彙が使われて難しいが、英語だとギリシャ語なので余計に覚えにくい。また、ただの言い換えかなと思っていたが実は厳密に違うことだったりする。

最近知ったのは、腸閉塞(intestinal (or bowel) obstruction)をイレウス(ileus)と言ったりするが、厳密に言うと「イレウス」は腸の機能が停止して、腸管が麻痺状態になっていること全般を指し、「腸閉塞」はもっと狭義に、物理的・機械的に異物(胆石など)や腫瘍(癌など)によって閉塞された状態を指すらしい。腸閉塞、腸捻転、癒着や嵌頓(ヘルニア)など、物理的に形が歪むことによる機能障害を「機械性イレウス」と呼び、ウイルスによる炎症で腸自体の機能が麻痺している状態は「機能的イレウス」と呼ぶそうだ。

この「イレウス」が何度聞いても覚えられない。
英語 ileus
← ラテン語 īleus
←ギリシャ語 εἰλεός
    εἰλέω (eiléō) "roll up"
    εἴλω (eílō) "shut in, pack close"
← 印欧祖語 *welH- ("to turn, wind")

この印欧語根 *welH- に関係する別の単語は
・ラテン語 volvere → 英語 volve (involve, evolve, revolve) ほかにも valley, valve, volumeなど。これはもっと探って行きたい。

・walk (毛織物を縮絨するときに記事を「転がす」と同時に「踏みつける」やり方があったことが「歩く」の意味の発達に関係していると考えられる)

なるほど、巻いてねじって固めるニュアンスが分かったような気がする。ただ、「腸閉塞」という用語を狭義に使い、全般的な語彙として「イレウス」と言い分けるようになってきているが、「イレウス」の語源はやっぱり「腸閉塞」だった。

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