オール讀物新人賞の中間発表を確認し、応募作国葬の儀

我々は一つの作品を失った。しかし、これは敗北を意味するのか?
否! 始まりなのだ!
若くしてデビューする気鋭の作家の方々に比べ、わたしの才能は30分の1以下である。
にもかかわらず今日まで書き続けてこられたのはなぜか?
諸君! わたしの執筆の目的が作家になりたいという夢だからだ。これは諸君らが一番知っているはずだ。
わたしは地球に生まれ、間もなく非リアにさせられた。
そして、一握りの天才と、天才の足を引っ張ることしかできなかった俗人どもが、一般社会の常識とやらを支配するのを遠巻きに眺めて四十余年。
非リア界に住むわたしが新人賞獲得を目指して何度落選したか!
ワナビ公国の掲げる一人一人の夢のための戦いを神が見捨てるわけはない。
わたしの近作、諸君らが評価してくれたオール讀物新人賞応募作は一次審査も通らずに死んだ。
なぜだ!?

「凡作だからさ」 (サングラスの人、バーカウンターにて)

新しい時代の文学界を我ら努力できる国民が担うは、歴史の必然である。
ならば、我らは襟を正し、この戦局を打開しなければならぬ。
我々は過酷な非リア空間を生活の場としながら共に苦悩し、錬磨して今日の文化を築き上げてきた。
かつて、マイケル・ジョーダンは「失敗することには耐えられるが、挑戦しないことには耐えられない」と言った。
しかしながら夢の前に立ちはだかる壁どもは、自分たちがワナビの生殺与奪の権利を有すると増長し我々に抗戦をする。
わたしの前作も、今作も、その壁どもの無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!
この悲しみも悔しさも忘れてはならない! それを今回の応募作は死をもって我々に示してくれた!
我々は今、情熱の限りを結集し、次回以降の新人賞に叩きつけて、初めて真の勝利を得ることができる!
この勝利こそ、落選作全てへの最大の慰めとなる。
国民よ! 悲しみを情熱に変えて、立てよ国民よ!
我らワナビ国国民こそ努力の才能を持った民であることを忘れないでほしいのだ。
努力家である我らこそ世界を変え得るのである。
ジーク・ワナビ!


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