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ネタバレ★ミニ感想『ドッグマン DOGMAN』

製作年:2023年 製作国:フランス 114分 リュック・ベッソン監督 
出演ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、ジョジョ・T・ギッブス他

あらすじ

ある夜、不審なトレーラーが警察に止められる。
運転していたのは車椅子に乗った血まみれの男で、女装していた。トレーラーの荷台に、たくさんの犬たちを乗せて・・。

ミニ感想

見るまで気づきませんでしたが『レオン』のリュック・ベッソン監督作品でした。
それをおいても、あらすじを見るだけで「この人に何が起きたの?」と期待させてくれる内容なのではないでしょうか。

映画の冒頭で、ラマルティーヌの詩が引用されます。

「不幸な人がいるところ、あまねく神は犬を遣わされる」

この一文が、ドッグマンがどんな映画なのかをよく表していると思います。これは不幸な境遇におかれた主人公の、愛と痛みについての映画です。
ドッグマンのキャッチコピーに「規格外のダークヒーロー爆誕」なんて書かれていましたが、そういうノリを期待すると肩透かしを食らうかもしれません。

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!ここから先ネタバレ!
映画を観てから読んでメェ
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なんで保険会社の人が警察みたいなことしてんだよ、とか、「死刑執行人」たちの脅威がどの程度なのかいまいちわからん・・・犬がきれいすぎる!!みたいなところでちょっと退屈になりましたが、主演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズのキュートな笑顔でどうにか全部見ることができました。
人物描写をもうひと掘りしてほしい・・・という思いもありつつも、犬たちがめちゃくちゃかわいいので忘れましょう。では感想です。

大人のための寓話


ドッグマンの個人的な印象は、ダークヒーローものというより「ファンタジー映画」です
子供向け映画によくある、犬が涙をなめてくれたり、ピンチの時にアイテムを拾ってきたりするあれです。
あれをリュック・ベッソンがやったら、そりゃあPG12にもなりましょう。

大人のためのファンタジーは、美しかったり壮大である必要はないのです。血みどろで暴力的で、日常に潜んでいる。そんなファンタジーがあったっていいじゃないですか。

主人公はつらい現実を生き延びる手段として女装していたわけですが、それも一種のファンタジーです。彼が生きるショーの世界も、虚構でありファンタジー。
生きるためには虚構が必要です。
映画を観ることだって、そうじゃないでしょうか。

マンガ、ゲーム、映画でもなんでも、現実世界からちょっと離れて息継ぎをする経験は、主人公だけではないはずです。

しかし現実の人生は厳しく理不尽なもので、そこには「痛み」が伴います。
主人公が長年ひそかに思いを抱いていた女性が、イケイケ男と結婚し子供までいた・・・
主人公にとって痛みを伴う象徴のシーンです。
『ジョーカー』であれば皆殺しにしていたところですが、ドッグマンの場合は犬たちが彼の「痛み」を理解してくれたおかげで、そうはなりません。
犬たちが痛みから助けてくれることで、ドックマン自身も他人の痛みに気づき、それを助けようとします。
犬であれ人間であれ、痛みを助けること、それが本作で言うところの愛であるのかもしれません。犬たちからの愛が無かったら、主人公だって神への愛を信じられなかったでしょう。

他人を愛することはとても難しいですが、それを簡単にやってのけてしまうのが犬という動物です。
ラストのドーベルマンの表情に、みなさんは何を感じたでしょうか。


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