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あの日みた花の名前を僕たちはまだ知らない。 放送から9年後に見た私。

「空の青さを知る人よ」を見て、とても感動した私は岡田麿里さんが脚本を手掛けた他の作品も見てみたいと思い、彼女の代表作と言っても過言ではない「あの日みた花の名前を僕たちはまだ知らない」をAmazonPrimeにあったので見てみました。「あの花」という作品自体は有名なので聞いたことがありましたが、手をつけておらず、、、、。合計13話の「あの花」ですが脚本が巧妙に作られていて、後半になるにつれて目が離せなくなり、どんどん惹きつけられました。

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「空の青さを知る人よ」の感想のコラムでも書いたが、岡田麿里さんの脚本は日常生活の中に微かなファンタジーを織り交ぜるのがとても上手い。「あの花」は、めんまの死に様々な気持ちを心の底にしまいながら生活していた高校生5人が再び集結することで、もがき苦しみながらも成長していく物語だが、その中に死んだはずのめんまがじんたんの前にだけ幽霊??として現れるというファンタジー要素が交ざる。このようにファンタジーな雰囲気を醸しつつ、人間の繊細で脆い感情がリアルに描かれるのである。高校生活を送ったことがある人は誰しもキャラクターのどこかに共感してしまうのではないだろうか?私は自分の嫌な醜い部分と重なることが多く、後半は涙が止まらなかった。

特にじんたんゆきあつの関係は共感するばかりだった。
じんたんとゆきあつは、お互いに認めたくないけれど劣等感を抱きまくってる。ゆきあつはめんまが子供の頃から好きで今でも思っている。(めんまの髪色に似たかつらを撫でるくらい、、、この件に関してはあの花フェスで声優陣にとてもいじられてました。)しかし、子供の頃からめんまとじんたんが両想いなことは察しており、自分はじんたんを超えられないことを心の中ではわかっている。

一方で、じんたんは子供の頃超平和バスターズのリーダーで慕われていたにも関わらず、高校受験に失敗し動物園と揶揄するような学校に行くことになる。そして、引きこもりになってしまうのだが、その事実に対してとても劣等感を感じていた。
第一話でめんまを追いかけて電車の線路の近くを歩いている時に、久々に高校受験成功組のゆきあつとつるこに出会うのだが、2人の制服を見てじんたんは学歴に対して劣等感を抱いていた。この過去と逆転した立場にゆきあつは優越感を感じているようにも思えた。子供の頃はじんたんがリーダーで皆の上に立っていたが、今は目に見える学歴と言う尺度でゆきあつの方が上になっているからだ。一方でじんたん本人は気づかないようにしていたが、じんたんにだけめんまが見えるという点では優越感を感じていた。

「優越感」や「劣等感」は高校時代に一番感じるものだと思う。どちらもあまり良い感情ではないが環境が変化するにつれ、周りと自分を比べるものが増えるからである。特に「あの花」のように高校受験がそうだ。今まで小中学校は学力に関係なく決められてところに行っていたのが突然「偏差値」というものでレベルが付けられている高校に振り分けられる。
私は県で偏差値3番目のところに受かったので、どちらかというとゆきあつの気持ちがわかる。中学まではよく話していた友達が偏差値の低い学校に行っただけで、自分とは違う世界の人に見えてくるのだから不思議だ。それでいて偏差値が上の高校に行っただけなのに、無駄に優越感を感じる。他にも人間をはかる尺度はたくさんあるのに、中学生高校生の多くにとって「偏差値」は異常に価値が大きい。この中学から高校への環境の変化があの花では上手く描かれていた。実際、つるこがあなるに向ける言葉の中にも偏差値の低い高校を見下すようなものがあった。

そして「あの花」ではキャラクター達の様々な葛藤が描かれる。自分の醜い部分や認めたくない部分に罪悪感を抱いているが吐き出せない状態でいる。

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「じんたん」 
めんまが好きで、自分だけ見えることに優越感を抱えている。                      「あなる」 
じんたんが好きで、じんたんとめんまが両想いなことを知っている。めんまがいなくなれば、自分がじんたんの近くに居れるかもという感情を抱いていた。                       
「ゆきあつ」
めんまのことがとても好きで忘れられない。子供のころからじんたんに劣等感を抱いている。       
「つるこ」 
ゆきあつが好きだが悪あがきはせずに、良き理解者でいたいと思っている。しかし、ゆきあつが頼るのはいつもあなるであることに対し、めんまが死んだ時、あなるとじんたんが上手くいけばいいと思っていた。     
「ぽっぽ」  
めんまが死んでまったのは自分のせいだと思い罪悪感を抱え込んでいる。

この様々な葛藤は神社で思いをぶつけ合うことで、昇華される。そして、それからの展開がとても良い。最後じんたんにも、見えなくなってしまっためんまの姿を必死に探し、めんまから手紙をもらった超平和バスターズがみんなが

「めんま、見ーつけた!!」


と言うクライマックスのシーンは彼らが子供の頃よく遊んでいたかくれんぼと重なって見え、超平和バスターズが昔のような関係に戻ったのだなと思える演出でした。

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まさにそのめんまが現れたひと夏のおかげで、

これによって、「超平和バスターズはずっとなかよし」になったわけだ。

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それにしてもEDのシークレットベースがとても良かった。昔発売された曲のカバーなのですが、あの花のために書いたのではないかと思うほど歌詞がとてもマッチしていてこの曲が良いタイミングで流れる度に感動しました。


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