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「きみの鳥はうたえる」鑑賞記録

映画を観るのが好きなのですが、こういう風に記録を残すのは久しぶりなので、ぐだつくかも分かりませんが、ちょっとずつ言葉にしてみようと思います。

今日はなんだか集中力が高まっていたので以前から気になっていた映画「きみの鳥はうたえる」を観ました。個人的に良い映画ほどしっかり余すところなく観たいので集中力が高い時にじっとテレビの前に座って観るんです。

ストーリーについて少し説明を。

柄本佑演じる主人公の”僕”は本屋でアルバイトしてる、ちょっと不真面目で、ちょっと変わった奴。裏表がないようで、何を考えているのかよく分からんタイプの男。同じバイトの石橋静河演じる佐知子と出会って、まあなんとなく恋人みたいな感じになるんですね。”僕”と同居してる、染谷将太演じる静雄と3人でなんとなく飲んだり遊んだりする関係になって、大人の青春みたいなとでも言えばいいのか、そういう日常が描かれてます。

毎日を楽しく、適当に生きているように見えていっぱい悩んで感じている、そんな感じの若者の中にある色んなごちゃまぜの感情を丁寧に捉えてると思います。登場人物のちょっとしたやりとり、美しい映像と上手く組み合わさった音楽がそういう空気、感情の機微を表現してる。だからこの映画を言語化するのはすごく難しいですね。私自身、こんな感情を味わうのが初めてでなんと言っていいのか… ただ確実に言えるのは、私のような人間でも彼らの感じるものを少しでも感じられていると思えるようにすること、人の中に共通してあるのかもしれないけど言語化して認識できていなかったような感情を引き出してみせること、これはなかなか難しいことだと思います。それをやってのけたこの映画はかなりすごいと言っていいんじゃないでしょうか。まるで私も彼らの一員となって同じ時を過ごしたかのような没入感を味わいました。決して不快ではないのだけれど、その流れ込んでくるものの正体は不明というなんとも不思議な体験でした。

ここから先はちょいとネタバレもありますので…

佐知子がバイトの休憩中、お弁当屋さんでアルバイトのみずきと交わした会話が印象的でした。「若さってなくなっちゃうんですかね」というみずきの問いかけに「さあどうなんだろうね」てな感じに答えた佐知子。う~ん、たしかに若さってなんだろうなあ。みずきは多分学生だし、佐知子は多分20代後半~30代前半くらいか。年齢でいえばみずきよりも佐知子の方が”若さ”は少ない。でも、映画の中の佐知子はとても若々しかった、青春してたと思うんですよね。”若さ”はどんな風に今を生きるかで決まる気がします。どんな風であれ、これが私の道だと思って生きられたならいつまでも若くいられるんじゃないかなあ。

静雄と佐知子の関係について。初めて会った日の夜、3人で飲んだ時に多分それぞれがそれぞれに「あ」って思ったんじゃないかと思います。佐知子に惹かれる静雄とそれに気付いて揺れる佐知子の気持ちに”僕”は気付いてたし、見て見ぬふりをしたし、大人にふるまって自分も他人も誤魔化そうとしたけど、できなかった。これはすごく共感できましたね… こういう風に分かってても素知らぬふりをして、何も分からないよってふるまうことは色んなことを円滑に回せるから、自然とやってしまう。そういう風に自分の感じたものを否定して静かな湖面の状態に無理やり戻すのを繰り返してると、だんだん波風が立たなくなるんですよね。その方が生きやすいとは思いますけど、”僕”の最後の行動を見てああやっぱりそうだよねと思いました。こうありたいという自分の像を持って自分を見つめ直すと、自覚せざるを得ないし、自分を変えたければ自分に嘘をついたままでは変われない。佐知子は”僕”の中にいる自分の虚像に惹かれたのかもしれないなとか思ったりしました。店長との不倫をする自分の中に、本当は罪悪感や自己嫌悪で溢れかえっていたんじゃないかなと。そんな自分にふたをした矢先に自由気ままに生きているように見えて実はすごく不器用な”僕”を放っておけなかったのかな、とか思いました。

最近の若者がどうこうとかあんま分かりませんし、自分も若者なので客観的な意見ではありませんが、人とのつながりを恐れるというか人に自分のペースを乱されるのを嫌がる人が結構多い世代なのかなと思います。他人は他人、自分は自分、そう考える方が楽だし自分を守れることもあるので全否定するつもりは全くありません。ただ、誰かに迷惑かけられたり、誰かを本気で心配したり、そういうことが自分にとって果たしてマイナスかどうかなんて後にならないと分からんものじゃないかなと個人的には思います。誰かと思いっきり喧嘩したり、誰かを苦しいほどに好きになったり、人とつながるのは快いものばかりじゃなくてもいいんじゃないかなとか思います。上手に生きられなくてもいいじゃない、と思います。

なんか色々書きなぐってますが、とにかくすごい映画でした。本当はもっと静雄の感情とか書きたいことあるんですけど、長すぎるし上手く書ける気がしないのでこの辺で止めておきます。ここまでわざわざ読んでくださった方、ありがとうございます。良かったら映画観てみて下さいね。観た方はこれ読んで思い出したり考えたりしてくださったら嬉しいです。

それでは、また。


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