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「百万円と苦虫女」鑑賞記録

今日は思い切って目にとまった映画を観るぞーくらいの気持ちで、ネットフリックスで配信中のこの映画を観ました。

「百万円と苦虫女」

蒼井優演じる佐藤鈴子はバイト先で知り合った女の子とルームシェアを始める。2人でルームシェアかと思いきやその女友達の彼氏まで一緒に住むことに… 挙句の果てに女友達は彼氏と別れちゃって、赤の他人とひとつ屋根のもと暮らすことになってしまう。相手は金が無いからしばらく一緒に住んでもらわないと困ると強引で、言いたいことをはっきり言えない性格の鈴子は流されに流されて仕方なく一緒にその男と暮らし始める。がしかし、拾った子猫を鈴子がいないうちに捨てられてしまい(道路わきで死んでた)、もう我慢できず男のいない間に男の持ち物を全て捨ててしまったのだ!すげえ

そこからはもう鈴子も想像がつかなかっただろう展開。まさかの刑事裁判で有罪判決で前科持ちの犯罪者となってしまったのだ。ひえ~そんなこったで家にもいづらい。弟からは馬鹿にされるし、親は気遣ってくれるけどぎくしゃくしてるしで、鈴子は100万円たまったら家を出る!と宣言し、その言葉通り、誰も自分を知らない土地へと旅立った。

公開されたのは2008年。私てっきりもっと新しい映画だと思ってて、古めの映像だな、そういう演出かな?と思ってたのですが、演出でもなんでもなかったです(笑)おそらく「アズミ・ハルコは行方不明」と勘違いしてました。

いやあ、とても私は好きな作品でした。自分探しとか綺麗なもんじゃない。ただ人間と関係を作るのが怖くて、深く付き合うのが怖くて、だから色んなところを転々としている。鈴子は全然この旅を楽しんでないと思うんですよね。むしろ苦しい、逃げだせば少しは楽になるかと思ったけれど、むしろ逃げ出した自分がどこに行ってもついてきて、自分からは逃れられない。

こっからはネタバレです。

鈴子の弟拓也は学校でいじめられてます。でも、拓也はある日、いつもは弱弱しくて情けない鈴子が勇ましく立ち向かう姿を見かけます。拘置所にいたことでいびってきた同級生に鈴子は敢然と立ち向かい、戦った。その姿に拓也は少し心を動かされる。そんなこともあって、拓也は家を出てからも自分に手紙を書くように鈴子にお願いします(携帯は持ってないので)。一方的に鈴子が送り続けていたのですが、ある時、拓也から鈴子に手紙が届きました。

弟は姉の姿に心を動かされ、逃げずに戦うことを決めたんです。「逃げずに戦う」それは鈴子ができなかったこと。戦う前から逃げ出してたから。

色んな土地に行って、流れて漂って、逃げてきた。でも、本当は逃げられてはなかった。前向きになるための旅ではなかったから、その旅自体がプラスになることはないと本人も分かってはいたと思うけれど、どこかでこの場所でなら、と何度となく思ったんじゃないだろうか。ここでなら生きていける、と。もちろん、人や環境ってすごく大事だと思う。優しくない人もきっといっぱいいる。でも、鈴子はちゃんと出会ってた。優しくない人も沢山いる世の中で、偶然やってきた土地で、ほんの一握りかもしれない優しい人間に出会えてた。

むしろ同じ土地で暮らし続ける弟拓也の方が逃れようのない現実と向き合ってた、戦ってた。優しくない人間に囲まれて。

結末としても、ああこうやってまた鈴子は大事な人を失ってしまうのか、次の街では果たしてうまくやれるのか、このまま旅は続いていくのか、と悩みこんでしまいました。気付いてないというか、気付きたくないという気持ちもあるのか。どこかで人間を諦めてしまっているし、信頼してない。失うのが怖いし、裏切られるのも嫌だから。ただ、自分は逃げてたってことに気付けたことってすごく大きい。そう思えたことがすごく大きい。だからどうしたらいいんだろうってのは自分で見つけていくしかないけど。

鈴子の逃げちゃうクセ、自分にも思い当たるというか、少し似たことがあったかなと思います。人との出会いを大切にできなかった時期がありました。変なプライドとか、どうせ言ったって分かってもらえないとか、そういうのを抱えて他人とのつながりを断っていたような気がします。大学に入って初めて人と関わる、つながるということを肌で感じたような気がします。でも、それって周りの人間や環境が変わったから、その人たちだけでしか成り立たなかったものなんだってわけじゃないと最近気が付きました。もちろん、今の私があるのは今自分の周りにいてくれる人たちのおかげです。今出会えている人たちを心から大切に思います。ただ、今の私が過去の環境に戻った時、もう少し違う思い出が沢山作れていたんじゃないかなって思います。

今の自分が自分でいいのかなんて今でも自信はないけど、前の自分よりは良いって思えるから今を歩んでいける。鈴子は21歳、私は22歳。大して変わらない。結局偉そうなことなんて言えないなあ。

でもとにかく色々やってみる、実際にやってみる鈴子の行動力は心底尊敬します。たとえそれが逃げのためであっても。

きっとこの先今まで感じたことのないような絶望とか苦しさとか別れとかがあるはず。そんな時にまた観たいなって思う作品です。

普通にDVD欲しくなったなあ。いつか買います。

それでは、また。




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