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【レポート #1】長野県・飯田市長選挙レポート(2021 10.18)

南の島から(逃げるように)長野に移住してから四半世紀、思うところ(後述)がありまして少しずつ「選挙ウォッチャー」という、各地の選挙を追いかけてレポートにまとめるというコトを始めてみました。 まずは私が住んでる街からクルマで1時間ちょっと離れてる長野県・飯田市長選挙をレポートします。

飯田市の「現状」

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①概要

まず最初に飯田市を取り巻く状況について説明いたします。 飯田市は人口が97,116名(2020年9月1日現在)で長野県で人口第5位(長野市・松本市・上田市・佐久市に続く)の比較的大きな市です。 ただ、上位の4市は新幹線が通っている北信(長野県北部地方)&東信(東部地方)と中央本線が通っている中信(中部地方)に位置しており、飯田市が位置する南信(南部地方)は電車だと「日本一過酷な在来線」とも言われる飯田線が走っているのみです。 辛うじて愛知県の豊橋駅から飯田駅までは特急が走っていますが飯田市より北に位置する南信地区は(私が住んでる街も含めて)ほとんどが2両編成の飯田線が唯一の電車であるため県外への移動等の長距離移動は高速バスがメインです。 不便さは当然感じますが、そのせいか南信地区は新型コロナウイルスの感染者数が他の地区に比べて少ないのでコロナに関しては快適に暮らせる市と言えるかと思います。 とはいえ人口減少が課題になっており、2005年に南信州(飯田市より南側の町を表す言い方)中山間部の 旧 上村と、旧 南信濃村を編入(吸収合併)しましたが、両地区は2005年と比較して人口が4割減と過疎化が進み、飯田市全体でも人口が10万人を割ってしまっています。

②駅前の状況

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こちらが飯田駅。 飯田特産のりんごをイメージさせる真っ赤な屋根が印象的な駅舎です。

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人もまばらですが、これ、昼の12時の様子、しかも豊橋から来た特急が着いて数分後の様子です。 平日だし、交通インフラとしての効果が薄い現状を鑑みれば仕方ないのかもしれませんが、それにしても少ない・・・ 私が移住した四半世紀前に来た時には、もうちょっと人がいた記憶が有ります。

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こちらも、ランチタイムで賑わっている(ハズの)メインストリート。 もう少し坂を下ったところの方が人通りが多いと思われますが、それにしても駅前でコレです。

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メインストリートから横に入ると呑み屋街。 店の多くが夜からの営業なので人通りが少ないのは当然だとしても、建物の様子や路面の(不自然な)綺麗さを見ても、そこまで賑わっていないであろう様子が伺えます。 そして駅の向かいに建っているスーパーマーケットは・・・

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寂れた町のお約束の如く、2年前に閉店していました。 幸い2022年春に商業エリアに公民館、民間会社のオフィスを加えた複合施設としてオープンするコトが決まっているので今しばらくの辛抱といったところです。 この駅前エリアは通称「丘の上」と呼ばれており北側が山、西側と南側が谷になっています。 そしてこの地に建っていた飯田城の城下町として栄え、岐阜県高山市のような綺麗な街並みだったそうですが昭和22年の飯田大火で大部分が消失してしまいました。 そこから頑張って復興して一時期は賑わいを取り戻したのですが生活環境の変化によって、この現状になっています。 ただ、こんな駅前の状況にもかかわらず今回の候補者は「駅前再開発」を公約として大きく打ち出していません。 それには二つ、理由が有りまして・・・

③商業の中心は飯田バイパスエリアに

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飯田駅から南西に約3km離れた飯田ICが有り、そこから南に伸びる飯田バイパスと国道153号線沿いが商業エリアとして発展しています。 これまた地方の街のあるあるかもしれませんね。 そしてどこでも見られるような、似たり寄ったりの街並みになってしまうコトも・・・ バイパスと繋がる国道153号線が片道1車線のために発生していた渋滞対策で新たなバイパス(写真の青看板が有る交差点を左折した道)が出来ましたが、それも駅の裏を通っているため駅前の賑わいには貢献していません。 現在、ひとつ隣の飯田南IC新東名自動車道が繋がる三遠南信自動車道を建設中で開通すれば飯田ICと そこから伸びる飯田バイパスの重要性は更に増すことでしょう。 ちなみに、今回立候補したうちの主要2候補が、このバイパスエリアに選挙事務所を構えていました。 それを見ても飯田市における駅前エリアのヒエラルキーが低いコトを表しています。 そして駅前再開発が進まない理由のもうひとつが、2027年に開業が予定されているリニア新幹線です。

③リニア新駅は飯田駅に直結していない

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コンビニやパチンコ屋が有る駐車場、ここと周辺合わせて6.5ヘクタールを再開発して大型駐車場や商業施設を含めたリニア新幹線の長野県新駅が出来る予定になっているのですが、ここは飯田駅から東に2km離れた場所。そう、リニア新駅は飯田駅と直結していないのです。 「意味ねぇじゃん!」という話なのですが丘の上に建つという飯田駅の立地条件や用地買収等の面から、この案になったようです。 予定ではパチンコ屋の屋根あたりに新駅ができて、

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電信柱の辺りを通って奥の山にトンネルを掘って東京方面に続いていくルートです。 開業まで時間があるせいか用地買収も殆ど進んでいないのが現状ですが、このリニア新駅の開発について3候補とも意見が分かれていて(後述)今回の選挙戦の数少ない争点となっています。

前置きが長くなって申し訳御座いません。 それでは各候補を紹介します。

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  佐藤 健  (52) 新 前副市長
  牧野 光朗 (59) 現 5期目を目指す
  熊谷 章文 (68) 新 会社役員  

佐藤 健(さとう たけし)候補

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佐藤健候補は東大卒後、自治省(現 総務省)に入省。 地方県庁をいくつかまわったのちに霞が関に入り、総務省・経産省・内閣官房で勤務したアト、2011年から9年間、飯田市で副市長の座に就きます。 2019年に総務省に復帰しましたが今年3月に退職。 飯田市長選の準備を進めていました。 4期も続いた牧野市政からの「ギアチェンジ」を掲げ、現場主義で市民と対話するリーダーをと訴えています。 どういう政策を打ち出しているかと思いHPを見たのですが・・・

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50って!! 多いよ!! 長野県民は理屈っぽくて議論好きだと良く言われますが、よそから来た私のような人間から見ると こうやって自論をとにかく並び立てる姿勢は「長野県民らしいな~w」と思ってしまいます。 しかも中には「飯田市公認「ふるさとユーチューバー(仮称)」を育成し、世界に情報発信します!」という結構「アレ」な公約も有り、読んでて心配になってきました。 まぁ選挙公報では14項目に絞り、パンフレットでは、

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更につに絞っていましたが・・・ 尚、リニア新駅については現在のリニア新駅の近くに在来線の新駅を作る案はコストがかかりすぎるためシャトルバスによるピストン運送を提案しています。

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選挙事務所は服屋(だったと思う)の空き店舗で構え、中は広くてスタッフも大勢いて賑わっていました。 初の選挙事務所訪問で緊張しましたが優しく接してくれて、今後のスケジュールを伺ったらスタッフ用のスケジュール表を丸ごとカラーコビーを頂戴できたのにはビックリ! 今回の取材にあたり、元祖選挙ウォッチャーのちだいさんから「為書きをチェックすると面白いよ」とアドバイスをいただいたので壁を見渡すと、立憲民主党の杉尾秀哉参議院議員や羽田雄一郎参議院議員に加えて、衆議院の地元(飯田市は長野5区)選出議員である自民党の宮下一郎議員の為書きが有って、「これは・・・?」となりました。 やはり為書きを見るとイロイロ見えてきます。

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川路駅前で行われた街頭演説は予定より少し遅れて到着。 クルマから降りた佐藤候補は集まった観衆ひとりひとりと握手を交わしてまわっていました。 新型コロナの折、握手は大丈夫なのかと思い良く見ると握手用に肘から手まで覆う別の手袋を着用しているようです。(ただコレ、候補者は良いかもしれませんが観衆同士は佐藤候補を介して手を繋いでるのと一緒なワケですが・・・)

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喋りは丁寧朴訥。 見た目と同様に爽やかな印象を受けます。 ただ気になったのが(佐藤候補から見て)右半分ばっかりを見て喋っているのです。 左半分にも観衆はいるのに・・・

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実は佐藤候補の先には地元のTVカメラが有り、終始そこを見て喋っていたのが引っかかった点。 左半分にいた観衆の心中や如何に・・・

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とはいえ、演説前には全員と握手し、演説後は帰ろうとする観衆に近づき手を振る姿勢からはキャッチフレーズの「対話するリーダー」像が感じられ、50名を超える観衆には伝わったようです。 それと、もうひとつ気になったのが演説の内容がふわっとしていること。 マニフェストの内容も そうでしたが具体的な政策を打ち出すことは無く、長年続いた牧野市政からの変革と未来への希望を終始語っていた印象です。 新人だとはいえ前副市長なのですから佐藤候補ならではの具体的な政策を聞いてみたいところでした。

牧野 光朗(まきの みつお)候補

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牧野候補は早稲田大卒後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。 ドイツ駐在などを経て2004年に新人4人の選挙戦を制し初当選。 以降4選して(3期、4期は無投票当選)今回5期目を狙います。 4期16年の実績と経験、全国市長会筆頭副会長としての国とのパイプをアピールし、新型コロナによる非常事態に対応するために市政の継続を、と訴えます。 HPを見ると、

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佐藤候補より少ない、定番である10の政策を掲げていますが、10というのは大見出しのようなもので、それに付随する小見出しの政策は合わせて100近くもあり、いくら現職で具体的な政策が提案しやすいとはいえ、こういうところが「長野県民ダナーw」と思ってしまうのです。 尚、リニア新駅については新駅の近くに在来飯田線の新駅を設置し、その間を屋根付きの歩道で繋げるとしています。

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選挙事務所は飲食店の空き店舗に構え、受付からは建物の構造上、奥を見ることが出来なかったのですが、私への応対は丁寧でチラシをいただきスケジュールも教えていただきました。 為書きは全国市長会の繋がりからか各地の市長さんからのものが見えて、きっと奥にはもっと飾られているのでしょう。 為書きと言えば牧野候補は、

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菅自民党総裁からの為書きを大きくアピールし、室内で催される演説会では、この為書きを背面にドーン!と貼って演説されていました。 自民党総裁の為書きは現職側に有るのに地元選出の衆院議員の為書きは新人側に有る(もちろん現職側にも有るのかもしれませんが)。 ここに、この選挙を読み解くヒントがひとつ有るような気がします。

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JAの駐車場で行われた街頭演説。 忙しい選挙戦なので仕方がないのですが選挙事務所で聞いたスケジュールでは18時、新聞には18時半となっていた開始時間が現地で聞くと19時からと判明。 更に別の場所総決起集会が開かれており、そこを中座して駆けつけるとのコト。 いくらクルマで5分ちょっとの距離とはいえ、そんなん可能なのかなぁ? と思っていたら案の定20分遅れで到着。 選挙ウォッチの経験が無いので分からないのですが、こういうコトはフツーなのかなぁ・・・? 候補が到着するまでの20分間、支援者が一生懸命時間を繋いでいました。 お疲れ様です。

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牧野候補の演説は、まずエエ声w 「めざましテレビ」の初代司会者だった大塚範一アナウンサーに似た声です。 喋りの間も良くて聞き取りやすく、万全の医療体制で新型コロナへの対応が出来ているコトや全国を見ても殆ど出来ていない市内小中学校の生徒約8000名全てにパソコンを1台配布するコトが出来たコトや赤字財政の健全化に努めたコト等の これまでの実績と、これからの政策を丁寧に説明していて「さすが現職!」と思わずにはいられない風格溢れる演説は完全に佐藤候補より説得力が有りました。 佐藤候補の演説内容が ふわっとしたものだっただけに、牧野候補の具体的な内容が際立った印象です。 ただ、「必勝」の はちまきが時代錯誤な感じがしますが・・・

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演説後は観衆とグータッチで触れ合います。 きっと新型コロナ対応なのでしょう(パーでもグーでも手が触れるならどっちも一緒のような気もしますが・・・)19時40分に終わったアト急いで総決起集会の会場に戻っていきました。

熊谷 章文(くまがい あきふみ)候補

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熊谷候補は飯田市内で設計事務所を開いている一級建築士。 未だに公共事業の業者選定に指名入札制度を続けるのは不正の温床だとして、一般競争入札制度への変更を訴えて告示日直前に立候補を表明しました。 街頭演説等は行わずHPとYouTubeで政策を訴えるとのコトなのでHPで政策を見たのですが、これがもう、長い・・・ いくらスクロールしても終わりが見えない長さです。 想いが強すぎて短くまとめるコトをせずに全て書き連ねてしまう。 これぞまさに「THE 長野県民」という感じがします。 尚、リニア新駅については予定地の住民が望まなければ無理に立ち退かせずに そのままいてもらって、そのうえで新駅を作ろう、と。 新駅は乗り降りできるダケの空間が有れば充分だ、と訴えます。 HPには牧野市政の不正を告発する文章も載っているのですが、立候補表明後のインタビューでは一転して「牧野市長は新型コロナの対応は良くやっている」と現職を評価するコメントをしており、ネットでは「票を削るために別の候補から立候補を依頼されたのでは?」と疑う声が出るほど。 選挙戦が事実上、佐藤候補と牧野候補の一騎打ちと見られたため熊谷候補の取材はしていません。 御了承ください。

「特徴」と「争点」

今回の飯田市長選、実に12年ぶりの市長選ということで関心も高いようで、

高校生が候補者に質問する討論会や高校生による模擬投票が行われたり、

JC(青年会議所)主催のZoom討論会が行われていたのですが、内容が どうにもこうにも、ヌルい!  特にJCの討論会では司会者が「相手候補に対する質問が有ればどうぞ」と言いお互いの討論を促していたのですが最後までそのような場面はなく終始お互いが自論を披露するのみ。 政策を見ても大きな違いは無く自民も連合も支持が分裂している状況を見ても、やはり今回の市長選の争点は「牧野市長か、否か」一点のようです。 それと、この市長選が他の首長選挙と違ったのは、

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SNS有効に使っていた点です。 佐藤陣営も牧野陣営もTwitterに細目に情報を載せていて演説の映像も毎日YouTubeにUPしていました。 しかもより積極的に利用していたのは現職の牧野陣営だった点も特筆すべき点です。

選挙結果

 [当]佐藤 健  (52) 新 35,448票
 [落]牧野 光朗 (59) 現 15,980票

    [落]熊谷 章文 (68) 現   897票

新人の佐藤候補が現職の牧野候補らを破り、16年ぶりに新しい市長が誕生しました。 やはり関心が高く投票率が64.17%で12年前の投票率(52.03%)を12.14ポイント上回り何と開票開始直後の21時に地元新聞が当確を出すというゼロ打ちで当落判明し、最終的にはダブルスコアの大差がつきました。 ある陣営の支援者は「民主主義だから仕方が無いとはいえ、どっちが勝っても遺恨が残る。 市民も市役所も真っ二つだ・・・」と こぼしていましたが、他の市町村は4年に一度は この試練を乗り越えてきているのであって飯田市だけの特別な悩みでも何でも有りません。 佐藤氏には公約通り現場主義で市民と向き合う市政運営をしていただきたいと思いますが、佐藤氏は8年間副市長として牧野市長に仕え、しかもその8年間は牧野市長が2回無投票当選をしてチカラをどんどんつけていった時の右腕だった人物です。 果たしてそのような人物が市政を刷新出来るのか。 選挙ウォッチャーとして、そして同じ南信地区に住む人間として注意深く見守っていきたいと思います。

牧野候補の敗因を分析する

さて、5選ならず敗れた牧野候補。 実績経験も充分、演説する姿には風格が有り公約具体的である。 非の打ち所がないように見えた牧野候補が何故負けてしまったのか・・・ 実は新聞等による投票3日前に出た事前調査「佐藤氏リード、追う牧野氏」と出ていたのです。 事前調査と言えば「現職リード、追う新人」「両候補、横一線」といった文が半ばテキスト化され現職に有利な状況を伝えるコトが多い中において「新人リード」という事前調査が出てしまい、その時点で勝負アリ!という空気が漂っていたのが正直なところでして。 それは16年という長期政権に対する閉塞感抵抗新しい風を期待する声といったものも有りますが、熊谷候補がHPで告発したような悪い噂が聞こえてきたのも事実です。 そして何より、牧野陣営が この選挙中に「負けフラグ」ドンドンドンドン立てて行ったコトが敗因だと見えたのです。 一体何が起きていたのか? 牧野陣営の「アレ」(ちだいさんが言うところの「POK」)な部分をひとつずつ説明するとしましょう。

①「広報担当B」が「アレ」

牧野陣営は佐藤陣営より積極的にSNSを活用していたというのは先程書きましたが、牧野陣営はSNSを扱う広報担当が3名いたようで、それぞれ「A」「B」「C」を名乗りTwitterを更新していたのですが、その中の「B」を名乗る広報担当が書く文章が、結構な「アレ」でありまして・・・

「さぁ!これから #牧野みつお候補 の具体的で、わかりやすい、
飯田市の今と、これからのお話が・・・」
と、妙に上から目線だったり、

「・好き嫌いだけで選ぶなよ!」って、牧野候補が嫌われていると認めるかのようなコトを書いたりと、他の二人の広報担当が真面目にツイートしていたのに対して非常に「アレ」な部分が目につき、挙句の果てに、

「広報担当B(アニメ好き)」と自分語りまで始める始末。 親しみやすい姿勢を演出したつもりかもしれませんが、「親しみ」「フザけてる」「無礼」の境界線が分からない人が広報なんて大役をするべきでは ありません。 反省が必要かもしれませんね。

②「自称広報担当D」が「アレ」

牧野陣営のツイートに積極的にリプを送ったり、自らも積極的に牧野候補支持を訴えていた或るアカウント、

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スタッフでは無いようですが勝手に「自称スタッフD」と名乗り牧野陣営に絡んでいたのです、が・・・ 21世紀も20年経過したというのに文末の(笑)の表現(今でいう「w」「草」)に「藁」を使う人がいたなんて・・・(しかも「チャオ!」って・・・)

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広報担当B悪ふざけ(にうつる)ツイートもどうかと思いますが、それに更に悪ふざけを重ねて、トドメの「藁」で締める・・・ どちらも自分だけ楽しめればそれでヨシで、飯田市長選のコトを調べるために このツイートを見た人がどう思うか、という俯瞰的視点が著しく欠落しています。 これは地下アイドルを囲む古参ヲタや駅前で弾き語りを始めた女性の最初のファンになったはイイが勝手にマネージャーを気取って弾き語りを聞きに来た他の客を勝手に仕切りだすシンガーソングライターおじさんと全く同じ行動であり、本人に悪意が無い分タチが悪いです。 彼は私の取材キャスも聞いてRTしてくれていたので、「貴方の行動が牧野候補の足を引っ張っている可能性が有りますよ!」とキャス内で忠告したのですがね・・・

③応援演説が「アレ」

牧野候補の出陣式には全国市長会筆頭副会長の人脈の広さを示すように、三重県名張市やリニアで繋がる岐阜県中津川市三遠南信自動車道で繋がる静岡県浜松市から市長が応援に駆けつけていたのですが、それに加えて何故か、

慶応義塾大学院教授で、TVでもお馴染みの岸博幸氏が来て応援演説をしたのですが、その内容が、まぁ「アレ」でして、佐藤候補を叩く発言をするのは まぁ理解できたとしても、その内容が「旧自治省出身の人間に改革は無理です!」(3:53)と言い放ち、「だから今、多くの都道府県知事は私がいた経産省出身の人間が増えてるんです」とドヤっているのですが、経産省の官僚が側近として働いていた前政権でどれだけ国が衰退したと思ってるんだ! 寝言は寝て言え! という話です。 しかも「改革が進んでいる自治体」として福井県鯖江市を例に挙げていたのですが(8:18)、鯖江市は4期16年務めた前市長が退任し、10月4日に新市長が誕生したばかり。 これから5期目を目指そうとする候補への応援としては最も不適切な例えではないでしょうか? 牧野陣営も「田舎者は有名人に弱い」と思って牧野候補のTwitterのトップにこの演説のリンクを固定していたのかもしれませんが、バカにしてはいけないのです

④出陣式の決意表明が「アレ」

そして牧野候補の決意表明。 頭に燦然と輝く「必勝」ハチマキが既に前時代的ですが、その内容も2020年とは思えないほどのクラシカルスタイル。 最初は大塚アナウンサー似のエエ声で観衆に語りかけますが、8:45頃からエンジンがかかり始め、「大激戦になっているのは、ひとえに私の不甲斐なさであります! 申し訳ない!」と、まるで「敗戦の弁」のような言葉を出陣式で言って涙ぐんでしまいます(8:52)。そこからフルスロットルで喋り続け、最後には多くの演説で使っている決め台詞「伏してお願い申し上げます!」(16:01)と叫ぶのですが、この出陣式では本当に土下座してしまったのです。 動画ではカットされていますが その様子は県内ニュースでバッチリ流れてしまったとのコト。 SNSを有効に使って時代に合った選挙戦をしていた牧野陣営ですが、選挙演説中の土下座は負けフラグだというコトに気づかなかったようです。

⑤最も伝えたい主張が「アレ」

YouTubeで演説動画をバンバン載せていた牧野陣営が「90秒でわかる牧野みつおが飯田市の切札である理由」という動画を出していて、最も有権者に伝えたい主張は何かと見てみたのですが・・・

それは「小中高の生徒約8000名にパソコンを配布した」コトでもなく、「新型コロナ発生を最小限に抑えている医療体制」でもなく、「赤字財政の健全化」でもなく、「私は(815市町村を束ねる)全国市長会筆頭副会長だから、エラい!」という内容でした。 各地の演説でも本人や応援弁士が「全国市長会のナンバー2だから、飯田市は日本で2番目に良い市なのだ!」というトンデモ理論を展開。 もし落選したら飯田市が「815番目の市に堕ちてしまう」恫喝と取られかねない発言もしてしまい、しまいには「市長が替わったら飯田市民は『補助金など不要』などという選択をしてしまったことになります」という明らかにデマな内容が書かれた文章を「後援会だより」というオフィシャルのチラシに書いてポスティングしてしまうという・・・ 2009年に政権交代が起こった衆院選で自民党が「日本を壊すな」という広告を出したのちに負けた歴史を知らないのでしょうか? そもそもこの動画の通りなら飯田市は牧野市長という「切札」16年間切り続けたコトになり、その結果が現状の飯田市だと言われて喜ぶ人がいたのでしょうか? あまりにも牧野陣営は戦い方が前時代的すぎました。 もし4年後、または他の選挙に出るのでしたら戦略を改めた方が宜しいかと思います。

⑤5選を狙ったコトが「アレ」

私は前職で少しだけ出世したコトが有り、その時に上司に言われたのが「上に立つ人間の最大の仕事は、後継者を育てるコトである」という言葉でした。 その言葉に倣って今の仕事に転職する際、後継者を育てて引継ぎをした経験が有ります(ただ、その後継者が出世した瞬間に性格が豹変し組織が崩壊しかけましたが・・・)。 牧野市長は4期16年も務めたのに後継者育成を怠り「自分でなければ出来ない」という思い込みで市長を続けていたのではないでしょうか? 私個人の意見ですが首長は どんなに長くても3期12年までで終えるべきであると思っていて、その間に正当な後継者を育て退任後は院政でもドンでも何でもなっていいから市長と言う表舞台からは消えるべきだと考えています。 欲深く市長を続けた結果、落選で全てを失ってからでは、遅いのです。

市長選の陰で見落とされているコト

さて、今回の選挙戦を取材していて、ひとつ引っかかったコトが有ります。 それは「リニア新幹線に反対という声が全く聞こえない」というコト。 静岡県の川勝知事がリニア計画に反対しているコトは多く知られていますが、長野県の新駅が建つ飯田市では候補者も新聞も反対の声が聞こえません。 当然、飯田市の東西もトンネルを掘るのですが市の東側のトンネルは他の町村で飯田市に直接的関係は無く、市の西側は飯田市内の山ですが そこには住人が殆ど住んでおらず反対する声は出ない、という構造の様です。 しかし飯田市の東側、同じ長野県にトンネル工事の影響が出ている村が有るのです。

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ここは飯田市から東に約20km離れた、長野県大鹿村。 南アルプスの山間にある人口約1000人の小さな村です。「日本で最も美しい村」を謳う この村にリニア工事という公共事業が降ってきました。 計画では写真中央を流れる小渋川を挟んで左右の山にトンネルを掘り、写真右側から飯田市へ繋がっていきます。 しかしこの辺りの山は蛇紋岩という崩れやすい性質の岩が多く、更に中央構造線という断層が通っています。 そういう脆弱な地質にトンネルを掘っているのです。 村では地下水の枯渇や動植物の生態系の変化、そして工事の影響による災害の発生が懸念されています。

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実際、昭和36年に梅雨の長雨の影響で山が崩壊し集落が呑みこまれて多くの犠牲者を出した歴史(三六災害)が有るのです。 写真のように崩壊した山の姿は現在も残っており、村民が決して忘れるコトは有りません。

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同じ県内でもリニア誘致に湧く街も有れば、工事に苦しむ村が有る。 故郷の南の島で基地移設問題を体験した私としては、そのコトは絶対に覚えていなければならない。 そう思うのです。

初の「選挙ウォッチ」を終えて

私は小さい頃から選挙を見るのが大好きで、国政選挙が有ると全国の候補者が載っている新聞を片手にラジオを聞いて当落をチェックするような(変な)子供でした。 だからツイキャスで ちだいさんが選挙ウォッチャーとして全国を駆け巡っているのを知ってから一気に のめりこんでヘビーリスナーになったのです。 でも、つい最近まではキャスを見ているダケで満足していて、重要なコトをRTすれば社会に貢献できると思っていました。 いや、体力強いメンタルも無い私には これぐらいしか出来ない、と思っていたのです。 ただ、全国を飛び回って選挙を取材するちだいさんもそうですが私より年下の大袈裟太郎さんがBLMの取材でアメリカに飛び、菅野完さんが日本学術会議への人事介入に抗議するために官邸前でハンバーストライキを2週間も続けています。 そして彼らは異口同音に「立て」「戦え」とリスナーに言い続けていていました。 それを聞いて自分に何が出来るかと問い続けた結果、ただひとつ(諸事情により)圧倒的にが有る私が出来るコトとして、ちだいさんがイロイロ忙しくて取材に来られない代わりに飯田市長選を取材しようと思いついた次第です。 コロナのリスクが怖いので暫くは南信地区に限った取材になる予定ですし、この行動が本当に社会に貢献できているかどうかは自分では分かりかねますが、自分なりに出来る行動を起こしたつもりです。 私みたいな者が言うのも失礼に聞こえるかもしれませんが、この記事を読んでいただいた皆様、もし宜しければ貴方なりに出来るコトを、今よりもう一歩、踏み出してみませんか?


私は、動きました

次は、貴方の番です

もし宜しければサポートをいただけると大変嬉しいです! いただいたサポートは今後の取材費として使わせていただきます。