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僕は吸わない煙草を半額で買った

近頃、煙草はどんどん値上げをしている。
数年前にはエコーとわかばが値上げされたが、あの時は本当に驚いたものだ。
エコーなどのいわゆる旧三級品と呼ばれている煙草はニコチンがきつく吸えたものではないのだが、安いという理由でよく売れている。
しかし、1箱に300円もかかってしまうのなら、それはもう安い煙草だなんて言えないだろう。

最近になってから、更に驚くべきニュースが飛び込んできた。
「旧三級品が販売を終了する」というものだ。
まあ、完全に廃止されるという訳ではなく、紙巻き煙草から撤退するというだけの話なのだが、それでもこのニュースは喫煙者に大きな衝撃を与えた。
ニュースといえば、最近放送されたドラマで高校生が煙草を吸っているシーンがあったのだが、これが大きな問題になっている。
「子供が真似したらどうするの!」と抗議が殺到し、ネット上で大炎上。
お昼の帯番組ももっぱらこの話題でもちきりだ。
こんな事よりももっと取り上げるべき問題が山ほどあると思うんだけど、やっぱり視聴率の為か世間の関心が高い話題ばかりが取り上げられる。まあ、仕方のない事ではあるが。
そんなこんなで喫煙者は肩身の狭い思いをして生きている、と思う。

最近、僕が働いているコンビニに新人の女の子が入ってきた。
スノーボードが趣味の18歳。
高校を出てすぐに大阪に越してきて、専門学校に通いながら土日だけここでバイトをしているんだそうだ。夜勤の僕と土日の昼間しか入っていない彼女とは基本的にシフトがかぶらなかったので、僕は人づてに聞いたこんな情報しか知らなかった。
この前、その新人の彼女とシフトが被った日があった。いつもお昼に入っている子が来られなくなったので、急遽僕が代わりに入ったのだ。
土曜日ということもあり客も少なかったので、僕は品出し、彼女はレジをしながら煙草の補充をしていた。品出しを終えレジに戻ると、彼女が僕に話しかけてきた。
「あの、これ…。」
差し出された彼女の手には、ビニールの封が開いた煙草が握られていた。

「すみません、煙草を出そうとした時に、間違えてこのビニールも一緒に破っちゃったんです」
「あー、これはもう売り物にならないなぁ」
「すみません。弁償します…。」
「いやいや、未成年の君に買わせるわけには行かないから、僕が買い取るよ。僕、煙草吸うし」
「でも…。せめて半分だけでも出させてください」
「いいよいいよ気にしないで」
そう言ったは言いものの、普段僕が吸っている煙草はセブンスターのソフト、彼女が破ってしまった煙草はマールボロのメンソール。「メンソールは苦手だから吸わないんだよなぁ」
と心の中で思ったが、彼女に買わせるわけにもいかないからこれでいいのだ。

彼女は早上がりだったので、僕よりも先に帰っていった。「すみません、すみません」と何度も謝りながら店を出ていった。

16時になり、自分の勤務が終わったので一息つこうかと思い、事務所の机の上にある灰皿に手を伸ばした。
「?」
灰皿の上には小銭が置かれていた。
「260円…」
ちょうどぴったり半額の260円だった。
「まいったなぁ、一本取られた」
メンソールは苦手だから本当は吸わずに捨ててしまおうかと思っていたのに、半分お金を払ってもらったからなんだか吸わなければいけないような気がしてきた。

こうして僕は半額のタバコを吸った。
「うーん。スースーするなぁ…。」
メンソールはやっぱり僕には合わない。
でも、そんなに嫌いでもない。と思った。


↑これは、去年私が初めて書いた小説に少しだけ手を加えたものになります。辞書で無作為に引いた三単語を使って作った文章で、確か『撤退、帯番組、スノーボード』の3つだったかな。結構無理やり入れてますけど、我ながら頑張ったなと思います笑笑「小説はこうあるべきだ」という考えに囚われていたので、文章を上手くまとめようまとめようとしていますが、その結果ありきたりなお話になりました。が、やっぱり初めて書いたものなので思い入れが強くて好きです。


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