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彼女が春を連れてきた

日本には四季がある。とは言うものの、最近は段々と二季になりつつあると思う。
温暖化の影響?詳しい事は分からないけれど、春と秋の期間がどんどん短くなってきている。

「四季」なんていうとまるで4つの季節が平等に訪れるように聞こえるけど、実際のところ、春と秋の期間は短い。というか殆ど無いに等しい。
誤解を呼ぶから四季なんて呼び方はやめて欲しい。
来年は春と秋が来るのかと、期待をしてしまうから。


きっと多くの人が同じ意見だと思うけれど、私は夏と冬が嫌いだ。
夏は、日焼けもするし、こまめに水分を取らないと倒れてしまう。少し動いただけで汗をかいてしまうから気持ち悪い。
暑さに頭をやられて何も出来ない。
冬は、寒くて動けない。朝は起きられなくなるし、外に出るためには厳重な装備が必要になる。
寒さで凍えてしまうから何も出来ない。

春があるから冬を乗り越えられるし、秋があるから夏が乗り越えられるのに、これらが無くなってしまったら私はどうやって季節を乗り越えていけばいいのか分からなくなる。



今年の冬、3つ年下の友人とショッピングをしたのだが、彼女はその際に春物のピンクベージュのコートを購入し、その場で着た。
そしてそのまま外に出ると、彼女は通行人に見せびらかすかのようにコートをひらひらさせながらくるくると回った。
「みんなはまだ冬の格好をしてますけど、もう春ですよ〜」
そんな事を言いながら楽しそうに回る彼女を見た時、わたしは、彼女が春を連れてきてくれたような気がした。


段々となくなりつつある春だが、特に今年の春は短かった。
コロナの影響で殆ど外に出られなかったから、気温を感じられなかった。
だから、実際に春が来たかどうか私には分からない。でも、お花見や、春らしい格好をして出掛けるなど、春にしたかった沢山の事が出来なかったので今年は春は失われたも同然だ。


わたしは、一緒に買い物をした彼女の事を考えていた。
春のコートを買った事をあんなに喜んでいたのに今年は外に出られなくて残念だな、と。


先日、彼女のインスタのストーリーが更新されていた。友達と一緒に撮ったプリクラが載せてある。あの時買ったコートを着ながら笑顔でピースをしている彼女を見て、少し嬉しくなった。
今年の春は失われたけれど、確かにそこにあったのだ。


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