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いまなら、どこにだって行けるだろう。


髪を切るとすごい心が軽くなる。もっと言うと、お得意の美容室で髪を切ってもらうとすっきりして、安心できる。その美容室には犬が3匹いて、人懐っこく足元にやって来て、膝の上にのせろと目で訴えてくる。こちらの体感時間1分ほど粘った後、膝に上げてもらえないとわかると、あっさり他の客のもとへ行く。なんと愛らしい後ろ姿!それ見たさに、わたしは美容室で犬を抱き上げたことがない。誰かにしてもらうシャンプーは気持ちがいいし、カットが終わって再度髪の毛を洗ってもらった後のマッサージも最高。そして、いつもお願いしている年上の美容師さんは、わたしの素直で丈夫な髪の毛をいたく気に入ってくれていて、髪を触っている間は終始ずっと褒められている。だいたい、はじめて行ったときに、「短くしてほしい」と言ってショートヘアにしてもらって以降、とくにどうしたいという注文もしないのだけれど、毎度全て終わった後の「今回はこれぐらい切っちゃった」の塩梅がちょうどいい。

いま目の前の鏡に映るわたし、最高。

心が弱ると、髪を切って見た目を変える。ショートヘアなので、少々長さが短くなり、量が減り、もっさりがすっきりする。他人から見たら、些細な変化だ。そんなもので、弱った心が強くなってたまるか。そもそもこころを強くするためには、もっと鍛錬のようなことが必要なんだ。自分に自信をつけるだなんて、一朝一夕にはいかない。難しいことなんだよ、と言われれば、わたしは真摯に頷く。そうだね、難しいよね。歯がゆいね。

ただなぁ、いま目の前の鏡に映るわたしのフォルムは最高なんだよなぁ。

「うん、いいね。今日もいいショートヘアだね」

自分で開けられるお店のドアを、わざわざ美容師が開けてくれる。一歩足を踏み出す。この時感じる風は、どんな季節の風でも好きだ。せっかくセットしてもらったけどな、春何番目か分からない強風よ。まあ、いい。許す。

幸福な瞬間の直後、

人はもっとも勇敢になるんだと思う。

最後まで読んでくださりありがとうございました。スキです。