見出し画像

早稲田アカデミー「知らなかった自分が、そこにいた。」はどうしてこんなにも胸に響くのか #2

********
【シロウトからみた広告の世界】
広告代理店に新卒入社した、社会人1年目のシロウトが
広告をみて感じたあれこれを
真面目に、楽しく、時に生意気に綴っていくシリーズ。
********

「知らなかった自分が、そこにいた。」

画像1


早稲田アカデミーのこのCMをご存じの方はどのくらいいるだろうか。
Youtubeを中心に電車広告等で流れていたそうだが、私自身は早稲田アカデミーの広告を検索したときに知った。

私はもともと、早稲田アカデミーの広告の中でも、
芦田愛菜さんが起用された「天才はいない。」という鋭いコピーのこのポスターが大好きである。

画像2

この広告についてもいつかnoteを書ければと思っている。

その話はいったん置いておくことにして、
「知らなかった自分が、そこにいた。」のブランドムービーも最高なので1度ご覧いただきたい。

とはいえ電車に乗っていて音が出せないとか通信制限がきてしまって動画を再生できないとかなんか忙しいとかいう方のためにざっくりと概要を書くと、
高校受験を控えた中学生の女の子が、数々の「受験あるある」を経験し壁にぶつかりつつも、成長し受験を乗り越えていくストーリーを描いている。

この広告のなにがまず良いかというと、
「受験あるある」があまりにも”あるある”で共感しまくれる点である。

「勉強を始めないのを、なにかのせいにする」
「もっと前から勉強しておけばよかったと、後悔する」

もう、身に覚えがありすぎる。

そして、早稲田アカデミーの主張があまりにも控えめな点も特徴。
塾で勉強をしているシーンは本当に1秒にも満たなくて、ほとんどが家と学校のシーン。

でも、考えてみれば実際の受験生活もそう。

受験直前の半年間くらいは塾に住んでるのかというくらい通うけれど、
それでも勉強は1年生の時からの積み重ねが重要で、それってやっぱり家と学校での勉強で。
私も塾講師のアルバイトをしていたけれど、塾ができることって限りなく少ない。

そういった面をリアルに表現していて、
「塾に通えば受かる!塾の勉強がすべて!」
みたいな広告にしないあたりが、この広告が素敵だと感じる理由の1つになっていると思う。

そして、非常に地味だけど注目していただきたいのが、
お父さんのキャラクター。

娘が勉強しているのを横目で見ながら、洗濯物を干しているんですよ。

時代の流れというか、私は平成生まれなのでそこまで昔を知っているわけではないが、変化してきているのを感じる。


さて、この広告が素晴らしいことは伝わったと思うが、
この広告はなにを目的に作られたのだろうか。
なんせ「早稲田アカデミー」の登場があまりにも少ない。早稲田アカデミーがどんな塾で、集団授業なのか、チューターはいるのか、どんな先生がいるのか、そういった部分はまるで伝わらない。

書いていて気が付いたが、東進ハイスクールのCM(クセが強い講師陣の授業が流れるやつ。林修先生の「今でしょ」はあまりに有名ですね)は、この早稲アカのCMとは真逆をいっている。

では、目的はなんなのか。

まずは、「ブランドムービー」というくらいなので、
早稲田アカデミーというブランドの立ち位置、すなわちブランドプロポジションを世の中に発信することが目的だったのだと思う。

ブランドプロポジションがなにかイマイチしっくりこない方に向けてわかりやすい例をあげると、
「日清」というブランドには、なんとなく「なにを言っても許される感」がないだろうか。
たしか日清は「食品業界のビートたけしになりたい」と言っている。
そういうことである。

急に投げやりになってしまったが、検索すればブランドプロポジションについてはきっと詳しく載っているので調べてみてほしい。

早稲田アカデミーは、このブランドムービーを通じて次の2点を伝えたかったのではと思う。

一つ目は、上述したことと重なるが「受験は塾だけがすべてではない」ということ。
塾に通えば解決、ではなくて、
受験は自分自身の努力が必要なのですよ、そこをわたしたちは理解してお子さんに寄り添っていきますよ、
というスタンスを伝えているのだと思う。
塾の勉強だけしてれば受かるんじゃ!というかのような、学校の宿題を考慮しない膨大な宿題を出す塾はよくありますが、
学校や家での様子も想像してくれる塾って、なんだか安心して頼ることができますよね。

そして二つ目は、「受験はなにより家族の支えが大事」ということ。
中学生という多感な時期は支える家族も大変ですが、
やっぱり家族の応援ってなにより力になって、合格を一緒に喜んでくれる人がいるというのはなにより心の支えになる。
お子さんだけじゃなくて、ご家族のこともトータルでサポートしますよ、
という早稲アカの姿勢が表れている。
なんとなく親子の面談とかたくさんしてくれそうですね、これは勝手な想像ですが。

余談ですが、家族全員を登場させることで
いろんな立場の人が共感して見入ってしまう点もこの広告の魅力ですね。

長くなってきてしまったのでこの辺で。
本当は、この広告は「受験という文化をポジティブな印象にしようとしている」という話も書きたかったのですが、それはまたいつか。

最後に、この広告のフレーズを引用して終わりたい。

”受験はおそろしい。
自分の中に、カッコ悪いくらい必死な自分がいたことを知らされる。”

大人になっても、必死な自分に出会い続けていきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?