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異業種にも役に立つ!?成果につながるスマホゲームのSNS/Twitter活用の大原則 〜あの企業に根掘り葉掘り聞いてみた〜

2020年11月20日に3回目のSGMSウェビナー「成果にコミットするスマホゲームのSNS/Twitter活用」を開催しました。第1回は「スマホゲームマーケターのキャリアとスキルアップのリアル」、第2回は「ここが変だよ(闇だよ)、スマホゲームのマーケティング」というテーマで、スマホゲームのマーケティングの課題とあるべき姿をテーマに議論しましたが、今回はさらに実践的な「成果にコミットするスマホゲームのSNS/Twitter活用」をテーマに選択し、具体的に議論しました。

スマホゲームに限らず、あらゆる業種のマーケターのヒントになる内容だったと思いましたので、レポートで内容をお届けします。

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■ゲスト
株式会社NAVICUS 武内 一矢 さん
株式会社ディー・エヌ・エー 鶴川 将志 さん
株式会社バンダイナムコエンターテインメント 辻本 正太 さん

スマホゲームのSNSを活用したマーケティングの課題

先日のnoteにも書いたとおり、スマホゲームにおいてSNSを活用したマーケティングは、多くのユーザに遊び続けてもらうためには必須の施策になっています。その背景は以下の記事をご覧ください。

しかしSNSの重要性の認識が広がっている一方で、現場で実際に取り組むにあたっては課題が多く、うまく取り組めていないと感じている方も多い現状があります。今回のウェビナーの参加者に「SNSを活用したマーケティングの課題」のアンケートをさせてもらった結果は以下になりました。

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【上位になったSNSを活用したマーケティングの課題】
①そもそも目的設定が難しい
②目的設定に合わせた戦略作成やそのための情報収集が難しい
効果測定や振り返りが難しい

各社がSNSを活用したマーケティングに取り組む理由

2021120_SGMSウェビナー03 投影資料

まずはゲストのDeNA鶴川さん、BNEの辻本さん、NAVICUSの武内さんの3人に各社のSNS/コミュニティマーケティングに取り組む目的や意義について伺いました。

DeNA鶴川さんの考える目的や意義

<DeNA鶴川さん>:背景として、SNSはゲームに限らずいろんなコンテンツと接続する存在になっています。コンテンツの提供者がSNSを活用する/しないではなく、お客様が自然にSNSを使っているので、そもそも切り離すのが難しいものだと考えています。

その上でSNSをゲームのマーケティングに活用する目的は「ゲームのUX(魅力)の拡張と強化」と、その過程における「運営とお客様の信頼関係の構築」の2点と考えています。

SNSマーケティングは性質上、"バズ/リーチ"、その結果としての"新規ユーザの獲得"の目的で語られることが多いと思いますが、上記の2点の前提がないと、その目的は達成しにくいとこれまでの経験から感じています。お客様は魅力的な体験に思えず、運営も信頼できないものをシェアしようとは思わないためです。

ゲームのUX(魅力)の拡張と強化とは、例えばシンプルな例ではキャラクターであれば、ゲーム内だけでは語られないキャラクターのストーリーをSNSで提供する、バトルであれば、新しいスキルの紹介をSNSで行うことで実際にゲームプレイの前に使い方をイメージしてもらってより楽しみにしてもらうなどです。

また、ゲームタイトルによって、魅力的な体験もそれを魅力的と感じるユーザの属性も異なるため、当然あるべきSNSの施策はゲームタイトルによって異なります。さらにゲームのリリース前、リリース後などのフェーズによってもそのゲームに求められる成果は変化します。

ゆえに、目的を固定化するのは危険だと考えていて、まずは「ゲームのUX(魅力)の拡張と強化」と「運営とユーザの信頼関係の構築」という共通の目的を捉えて、タイトルやお客様の状況に合わせて柔軟に個別の目的を設計していくことが必要だと感じています。

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(補足コメント)DeNA鶴川さんの言っていた「ゲームのUX(魅力)の拡張と強化」はこれはとても本質的でヒントになる考え方だと思いました。先日書いたnoteにも載せた以下の図の考え方にも近いところがあると感じました。

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BNE辻本さんの考える目的や意義

<BNE辻本さん>:スマホゲームの市場の成熟化が進むにつれて、セールスランキングの上位も長期運営タイトルが独占していて、新規ユーザの獲得が難しくなってきており、既存ユーザの満足度の向上が重要になってきていました。同時にユーザがゲームを選ぶ際に他のユーザのレビューをとても重要視している傾向も強くなり、メーカーからの一方通行な情報発信の限界も感じていました。

そんな背景もあり、ユーザの接点として強力で、これまで十分に注力できていなかったSNSの活用を、ユーザの満足度向上による売上/LTVの向上ユーザレビューの強化を目的に、この2〜3年で再度深堀りをしてきました。

最初に取り組んだことは、自社タイトルの現状理解と他社の取り組みの情報収集でした。自社タイトルと他社タイトルのSNSの活用度合いの比較や、自社タイトルの中でSNSに相性が良いタイトルは何なのか?ということを分析し、取り組むタイトルの優先順位やジャンル別の戦略を考えていきました。

例えば、アイドル系キャラクターを題材にしたアプリゲームは、ユーザのSNSの利用率も高く、他ジャンルと比べても抜群に相性が良いのですが、ファン同士がSNSで自発的にコミュニティを作っているために、運営が積極的に前に出てユーザと対話していく必要性は低く、そのユーザコミュニティを支援すべきと定義しています。このようにゲームタイトルやジャンル別にユーザのSNSの活用傾向を見ながら施策を進めていくことが重要だと考えています。

その上でゲームタイトル別にSNSを戦略を策定していくのですが、NAVICUSの武内さんにもアドバイス頂きながら、大きく2つの施策の型を作って取り組んでいきました。一つは「認知、行動、目標ドリブン」、もう一つは「ユーザ成長軸ドリブン」です。それぞれ相性の良いタイトルがあるのですが、詳細はこちらのスライドをご覧ください。

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(補足コメント)ゲーム運営において「ファン」の存在はとてもありがたい存在です。BNE辻本さんがお話をしてくれた目的の「顧客ユーザの満足度向上による売上/LTVの向上」と「ユーザレビューの強化」はファンベースなアプローチと言えると思いました。

NAVICUS武内さんの考える目的や意義

<NAVICUS武内さん>:ゲームに限らず、様々な業種のSNSマーケティングに関わっているのですが、共通する背景として今は必ずしも製品/プロダクトの品質だけでは売れない、もしくは品質だけで競合に勝負するのは効率が悪い時代になっていると感じています。ユーザはシビアに競合と比較するし、ちょっとした違いだけでは先行者に勝てないからです。そこでSNSでの体験が差別化になり、魅力を強化する武器にもなると考えています。

ユーザがゲームに本気になってもらうための要素は3つあると考えています。一つ目は「このゲームが面白い」こと、二つ目は「このゲームが流行りそう」と感じること、三つ目は「このゲームを応援したい」と思えることです。この中でユーザとユーザ、また運営とユーザとの関係性を作ることができるSNSでできることは、二つ目と三つ目の強化だと思います。

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また、SNSの活用においてプロモーションとコミュニケーションを同じように扱ってしまっているケースが散見されます。プロモーションは「関係を始めるきっかけを作ること」で""の施策、コミュニケーションは「関係を作っていくこと」で""の施策です。コミュニケーションは全く異なる発想とKPIの「一筆書き」で施策を作っていく必要があります。

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コミュニケーションの施策において、他社の施策をそのまま真似してもうまくいかないのは、「一筆書き」の施策が必要なためで、点だけ真似をしても結果が出ないのは当然と言えます。

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(補足コメント)成熟した市場において、SNSの活用による関係を作っていくことが「競合との差別化と魅力の強化」になる点もとても重要な目的の一つになると思いました。

SNSを活用したマーケティングの「3つの目的」

3人の話を伺っていくうちに、スマホゲームにおけるSNSを活用したマーケティングの目的を以下の3点に分類/整理することができました。この整理は戦略策定や施策検討のヒントになるのではないでしょうか。

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①ゲームのUX(魅力)の拡張と強化
②運営とユーザの信頼関係の構築
③製品/プロダクトの差別化と魅力の強化

→結果としてのユーザの満足度向上による売上/LTVの増加

SNSを活用したマーケティングのKPIと施策の評価

次に大きな課題として声が上がっていた「効果測定や振り返りができていない」という声に対して、各社の取り組みについて伺っていきました。

BNEの施策評価や振り返りの取り組み

<BNE辻本さん>:SNS活用の成果は、中長期にユーザのLTVを向上することで売上増加に貢献すること、と定義していますが、直接的にはっきり分析できるわけではないので、LTV向上につながると考えている中間指標を定義して取得、分析しています。もちろんタイトルやフェーズによって指標は変わるので、試行錯誤しながら取り組んでいます。

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特に面白いと思った分析アプローチは、IPやゲームタイトルのSNS上のクチコミの数や言及しているユーザの数の推移、また言及しているユーザのゲームアクティビティと変化を分析していくことです。

ゲームの場合はMAUやDAUなどのアクティブユーザの数で盛り上がりを測ることが多いと思うのですが、SNS上で言及している熱量の高いユーザの数の増減を見ることで、アクティブユーザ数とはまた異なる視点での評価ができるようになりました。

また、ゲームの公式SNSアカウントのフォロー状況や言及しているユーザのゲームアクティビティと変化を分析していくと、公式SNSアカウントをフォローしている人、またSNSで言及している人のほうがゲームのアクティビティが高い傾向があることがわかりました。

さらにSNSのフォローやSNSでゲームについて言及したあとは、よりゲームのアクティビティもLTVがポジティブに変化しやすい傾向があることがわかりました。この分析によって、施策の振り返りや施策の費用対効果の評価もできるようになり、施策への投資もしやすくなりました。

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DeNAの施策評価や振り返りの取り組み

<DeNA鶴川さん>定量分析と定性分析の両方を活用して振り返りや評価をしています。定量分析とは、SNSの言及数やいいねなどの指標と、ゲームのDAUやHAU(時間別アクティブユーザ)などの指標を分析すること。最初にSNSの指標に想定していた反応があったかを見て、次にゲームの指標への影響や相関を分析して評価しています。

定性分析とは、TwitterやCSに届くお客様の声を元に定量の反応の理由を分析することです。この最初のSNSの指標への反響が小さいと分析がしづらいので、反響が大きい施策を特に深く分析し、その分析結果を反響が小さい施策にも適用して分析するようにしています。

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個人的にもすごく大事にしていることが、施策検討時のなぜこの施策にSNSやゲームのKPIに反響があるのか?という仮説を持つこと、そして実施したあとに定性分析を元に反響の理由を学ぶことです。施策の評価が難しいからこそ、施策の大小に関わらずこの仮説検証をすることが再現性とスピードを高めることにつながると考えています。

DeNAもBNEの両社は、「売上増加に貢献する」という大目的の元に、SNSの指標とゲーム内の指標の両方をしっかり定義して、詳細に分析しており、かなり力を入れて進んでいると感じました。武内さんには、SNS活用の分析のファーストステップや体制についての話を伺いました。

NAVICUSがおすすめする施策評価や振り返りの第一歩

<NAVICUS武内さん>:施策の評価が課題に感じる人が多いのは、予算やリソースを確保するために、稟議などの説明が必要になるからだと思います。鶴川さんと辻本さんの話をしてくれた取り組みはかなり先進的な取り組みでしたが、まず第一歩としてはざっくり自社タイトルにSNSの活用がプラスの効果があるのか、どういうユーザがSNSを活用しているのかを把握することが大事だと思います。

簡単な方法としては、ゲーム内のアンケートで「公式Twitterを見てますか?」「他のユーザのツイートを見てますか?」を聞いて、見ているユーザと見ていないユーザのゲームアクティビティの違いを見てみることです。これだけでもSNSの効果について見えてきます。

また、細かく分析をしていくことは大切なのですが、分析に囚われるあまりにユーザ視点がおろそかになってしまっては本末転倒です。そのため現場のSNSの担当者は大枠で効果を捉えた前提でユーザに向かい、チームとしてより詳細な分析をしていくなどの体制にするのが良いと思います。

今後も成果を出し続けるためにどうすればよいのか

最後に今後SNSを活用したマーケティングで成果を出し続けていくためには何が課題になるのか、どんな取り組みが必要になるかを伺いました。

<DeNA鶴川さん>:どんなマーケティングでも「顧客理解」は必須だと思うのですが、「顧客理解」の難易度が急速に高くなってきていると感じています。その背景には市場の成熟化、ニーズの多様化、顧客の選択肢の増加などがあると思いますが、今後はゲーム業界は海外市場へのアプローチの重要性が高まるので、さらに難しくなると感じています。

「顧客理解」を深めていくための手段の一つがSNSの活用ですが、ただソーシャルリスニングをしたりCSに届く声を聞くだけではわからなくなってきているので、定量と定性の組み合わせや、プラットフォームを横断した取り組みにもトライしています。

<BNE辻本さん>:SNSの活用は「顧客理解」と「タイトル理解」をした上で、戦略的にアプローチをしていけば、成果を出せることはわかっているのですが、そもそもの難易度が高く、人員リソースも不足していることで、全てのタイトルで十分にはできていない状況です。

人員の確保と育成、さらに業務の効率化が大きな課題と感じており、外部のパートナーの力を借りる取り組みもしながら、模索している状況です。

<NAVICUS武内さん>:ゲームビジネスにおけるSNSの活用の必要性が認識されてきていますが、より深いゲームとの連携など、部門を超えたSNSへの取り組みが重要になると考えています。

ゲームとSNSの活用が分断された設計ではなく、まさに「ゲームのUX(魅力)の拡張と強化」を実現するためには、SNSの担当者だけでなく、ゲームの開発や運営に関わる人の全てが早期からSNSを意識していくことが今後求められるのではないかと思っています。そのためにはSNS担当者の社内への情報発信が重要になると思っています。

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以上、とても具体的な話がてんこもりだったウェビナーのレポートでした。SNSを活用したマーケティングの「目的設定」や「施策評価とKPI」など、ゲームはもちろんですが、ゲーム以外の事業にも活用できる話も多かったのではないかと思います。

少しでも参考になった方はぜひいいねやシェアをお願いします!

今回のウェビナーのゲストで登壇してもらった武内さんの経営する株式会社NAVICUSではSNSマーケティングやコミュニティマネージメントの支援をされています。SNSマーケティングの課題をぜひご相談してみてください。

次回のウェビナー告知

2020年最後に「2020年の日中ゲーム業界を振り返る、ゆく年くる年」のウェビナーに参加します。2020年の振り返りを日本と中国視点のそれぞれから振り返る貴重な機会になるかと思います。興味がある方はぜひご参加ください!

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