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太宰治「人間失格」の最終舞台考察

太宰治の小説が大好きです。

中でも「人間失格」は素晴らしい。これを読むと心が落ち着くのは私だけでしょうか?(一般的には、暗い気持ちになると言われていますが…)

さて、その小説の最終舞台は次のような場所です。

(本文より引用)

「自分の生れて育った町から汽車で四、五時間、南下したところに、東北には珍らしいほど暖かい海辺の温泉地があって」

基本的に「人間失格」は太宰治の人生をなぞっています。そうなると「自分の生れて育った町」は青森県の金木(現:五所川原市)、そこから南下する暖かい海辺の温泉地…と考えるとまず福島県いわき市の「いわき湯本温泉」が思い浮かびました。

いわきはとても温暖であり、縄文人が住んでいた北限とも言われています。

しかし、人間失格が発売された1948年の時刻表を調べてみると

青森 23:45発

盛岡 05:00着

郡山 13:12着

青森から5時間かけても盛岡までしか着きません。完全に推理ミスです。そもそも金木から青森までも数時間かかるので話になりません。また、郡山からいわきまでも数時間かかります。

ちなみに2020年現在でも青森~盛岡は新幹線を使わないと3時間程度かかります。

では、振出しに戻って

1.青森県のどこか(五所川原、弘前、青森、八戸辺り)から4~5時間南下

上記の青森~盛岡の所要時間(1948年に5時間、2020年に3時間)を参考に、2020年に在来線で3時間かかる距離と考える

2.海沿い

以上を満たす場所を考えると、

日本海側では弘前~象潟(にかほ市)が3時間強

太平洋側では八戸~宮古が3時間強 となります。

さすがにどちらも「東北には珍らしいほど暖かい」とは言い難く、小説の舞台には該当しません。

そもそもの推理ミスであり、また太宰治もそんなところを気にしなかったという所でしょうか。




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