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iQOSでディストピアの空気を吸え!

 今や財布と定期はスマートフォンの中に入り、多くの人は鍵とスマートフォン(人によっては鍵もいらないのかもしれない)さえ持っていればちょっとした買い物にも出かけることが可能だ。未来は手軽な方向へ、荷物を少なくする方向へ向かうのだと思っていた。
 クリミア戦争において、パイプを失くした兵士がタバコ葉を紙で巻いて吸ったあの時から、喫煙具とタバコ葉は一体のものとなった。必要な道具はライターだけ。しかしながら加熱式タバコというものが現れ、パイプタバコやキセルのように喫煙具とタバコ葉は再び分たれることとなった。まるで時代に逆行するかのように。

 今更ながら以前から吸ってるiQOSの話をしたいと思う。新型iQOSはタバコ葉を電磁誘導を利用して加熱することにした。電磁誘導はIHクッキングヒーターや高周波焼入れにも利用されるようなテクノロジー。タバコはライターで火をつけるなんとも原始的なやり方から一気に40万年くらい進化したのだ。
 iQOSの素晴らしいところはこれだけのテクノロジーを盛り込み、プロダクトとしては洗練されたデザインを持ちながら、その味は決して進化していないどころかやっぱり紙巻きタバコの方が美味いというところだ。
 以前私が敬愛するアニキのお家にお邪魔した時、奥さんに言われたことがある。
 「タバコは格好良さ込みで吸っている。匂いや健康や吸える場所のことを気にしてiQOSを吸うなんてナンセンスだ。ベンジーはそんなこと気にしない。」

デザインはマジでいいよ


ここの光り方とか最高だよね


 美味くないし、吸ってるところカッコ良くもないiQOS。じゃあなんでこんなものを吸うのかと言われれば、コレこそが未来だと感じるからだろうか。
 この腐った世界に生きる我々は、NTRじゃないと恋愛のリアリティを感じられないし、ディストピアじゃないと未来を感じられない。政府はタバコに税金を多くかけながら一方でタバコは体に悪いと吹聴する。個人の自由と公共の福祉。ニコチンに頼りたい人々もいるが、クリーンな世の中を実現したい。そういう矛盾の中で技術とアイディアの粋を集めて生まれた歪なものがiQOSだ。
 コレを吸うことはまさに未来のテクノロジーを吸うことで、ディストピアな未来の空気を吸うことだ。素晴らしい。

 この先タバコというものがどういう方向に向かうのか、正直わからないし、自分の想像の範囲内には収まって欲しくない。ただ、時代やカルチャーに密接に関連しているタバコというものがなくなって欲しくないとだけは思うのだ。

 ちなみに自分は酒も飲むが、酒はノンアルが味を極めていっている一方でただ酔うためだけのアルコールが強い飲み物も発売されておりタバコよりカオスだ。タバコの未来が「ガタカ」だとしたら酒の未来は「マッドマックス」かもしれない。いや、どっちも「エリジウム」の世界観なのかも。

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