読書会・勉強会のすすめβ (1)―読書会って何?

読書と読書会

「読書会」や「勉強会」、あるいは「自主ゼミ」ということばを聞いたことがあるでしょうか。もしかすると「読書会」ということばはあまり馴染みがないかもしれません。一方で、学生時代に「定期テスト対策のため」と銘打って友人と集まって課題に取り組む勉強会をしたことがある人もいるかもしれません。

一般に「読書会」(または一部の「自主ゼミ」)と言われるのは「複数の人が集まって、同じ本について感想を言い合ったり、内容について議論する場」のことです。「読書会」ということばの響きから、なんとなく文学的なものを想像する人もいるかもしれませんが、読む本は小説に限るわけではなく、専門書のようなものでも構いません。特に、大学などの場では、学術書や学術論文を題材にする「読書会」が開催されることが少なくありません。

この「読書会・勉強会のすすめβ」の一連の記事では、特に専門書等を題材とする読書会を想定し、その内容や進め方について紹介していきます。特に大学生以上の方を主な対象として「独学をするにはハードルが高い内容を、ほかの人と協力して学ぶ手段」としての読書会についてまとめます。ただし、記事の内容は、すべて執筆者(もとみず)の個人的な経験に依拠するものなので、あくまで1つの参考として読んでもらえれば幸いです。

なぜ読書会なのか

専門文献を題材とする読書会は、大学においてよく行われます。しかし、よく考えてみるとこれは少し不思議なことでもあります。大学には大学の授業がありますし、図書館に行けば1人で自習するスペースもあるはずです。そんな中で、なぜ授業でも自習でもなく「読書会」という選択をとるのでしょうか。

実は読書会は、いわば「授業と自習のいいとこどり」をすることができるのです。自覚的であれ無自覚的であれ、学びの手段として読書会を行う人は、このことを狙って読書会を開催していると考えて良いでしょう。では、読書会のメリットとは何でしょうか。

第1に、読書会は「定期開催を行うことによって、学びのペースメーカーとなってくれる」という利点があります。たとえば、読書会を毎週1回の頻度で定期的に開催すると、独学の場合と違って週に1度必ず読書会の場で学びの機会を得ることになります。また、後述するように読書会は事前の準備が不可欠であり、これによって継続的・計画的な学びを自らに促すことができます。いわゆる「積読」消化に役立つ、ともいえるでしょう。

読書会の2つ目のメリットは「自分の理解を人に共有することで、理解を深められる」というものです。読書会では、題材となる本の内容について、参加者が自らの理解を言語化する機会が生まれます。すると、頭の中でなんとなく「分かったつもり」になっていたことが、口にすると上手く言葉にできないことなどがあります。こうした経験を経ることで、自分の理解の深さを「人に説明できるか」という物差しで客観視することができます。

更に読書会には「人の理解を聞いて、視野を広げる」というメリットもあります。他の参加者の理解や解釈を聞くことで、自分には無かった思わぬ気づきを得られる場合があります。また、背景知識などの情報を参加者同士でシェアすることで、相互に「教え合う」ような関係が作られることもあります。

読書会=読書+勉強会

さて、ここまで読書会のメリットについて見てきました。最後に、もう少し詳しく読書会の進め方を見ていきましょう。

大雑把に言うと、読書会は「事前の読書」「当日の議論」の2つのパートから成ります。よくある誤解として「読書会では、人があつまって、そこで初めて一緒に本を読むのだ」というものがありますが(そして、そのような読書会のスタイルが一概に否定されるわけではありませんが)、あまり一般的なものとは言えないでしょう。

読書会を構成する主要なパートの1つが「事前の読書(予習)」です。読書会では、参加者が実際に集まる読書会当日に先立って、事前に対象となる本(多くの場合、指定された範囲)を読んでくる必要があります。参加者は、前もって本を読んでおき、理解を深めつつ論点と疑問を整理しておくことが求められます。こうした、自立的・自律的な学習は、読書会において不可欠です。

読書会の第2のパートは「当日の議論」です。ここでは、各自の予習を前提として本の内容の整理・確認・疑問の共有・ディスカッションなどを行います。本文内容を各自がどのように理解したか、は何らかの形で共有される必要があり、この共有がディスカッションの取っ掛かりとなることも多いです(この点については、今後の記事でより詳しく掘り下げていく予定です)。

以上のように、読書会は当日のディスカッションと同じかそれ以上に、事前の自立的・自律的学習が不可欠であり、こうした意味で学ぶ個人が集まることに読書会の特徴があると言えます。換言すると、基本的な自習・独学のスキルと、読書会参加のスキルには一定の関係性があると言えます。自習無しに読書会は行えず、また読書会(特に当日のディスカッション)を行うことで「自分の自習の不備を見つける」ことができます。

読書会運営は難しい

ここまで、読書会のメリットと大まかな流れについて概観してきました。読書会には様々なメリットがあり、複合的で極めて高度な学びの形だと言えると思います。だからこそ、読書会を実際に運営することは存外難しいものです。

実際に読書会を行ってみると、読む本のレベルが合わなかったり、当日の議論の進行がスムーズにいかなかったりと、想定外のトラブルが起こることも多々あります。酷ければ、読書会自体が空中分解、なんていうことも。

そのような事態を防ぎ、円滑かつ効果的な学びの場を作る助けとなることが、この連載記事の目的です。次回以降の記事では、読書会の流れの詳細や、進め方のいくつかのパターン、参加者に関する注意点など、読書会の実施に役立つであろう情報を整理していきます。最初はなかなか難しいところもありますが、この記事の内容があなたの充実した学びをサポートすることを祈っています。ひとまず、今回はこのくらいで。

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