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わたしの好きな映画館「松竹セントラル」

銀座、日比谷、有楽町周辺には映画館がいくつもあります。
そのなかで私が好きだった映画館は晴海通りを勝鬨橋方面に歩く途中にある「松竹セントラル」。
今はもう取り壊されてありませんが、最後の数年、私はこの映画館を愛して足しげく通っていました。

晴海通り沿いにあった「松竹セントラル」

銀座四丁目から、東銀座の方面に向かって歩いていると歌舞伎座があります。さらにそこを超えると、目の前に現れるのが「松竹セントラル」という映画館です。
この映画館は1,2,3と3館が入っていて、メインは松竹セントラル1。そして次に大きいのが松竹セントラル2。松竹セントラル3は、今でいうミニシアターぐらいの規模で、後ろを振り返ると映写室から飛び出す黄色の光が見える距離です。
私はこの温かい光りをずうっと見てるのが好きでした。
この光りがスクリーンにぶつかると絵が動き出す。
この不思議な現象を何も考えずただ見ているのがいいのです。
それはもしかすると、映画「ニューシネマパラダイス」のトトに似た気持ちだったのかもしれません。

1度入場料を払えば、一日映画館で過ごせる

松竹セントラル1は封切館なのに対して、松竹セントラル3は名画座的な立ち位置でプログラムが組まれています。
2本立て、3本立てで流れている映画は、かつて一世を風靡した作品ばかり。
今みたいに入れ替え制ではなかったので、ちょっと時間が空いたら途中からでも入ってもOK。
気に入った映画は、朝から晩まで何度も、何度も繰り返し見ることも出来るので、映画マニアはお弁当持参で映画館に行くことも日常茶飯事でした。
またサラリーマンが映画館で爆睡している姿は、よく目撃したものです。

この映画館のことを書きながらフッと浮かんだのが、原田マハの小説「キネマの神様」。主人公ゴウがいつも入り浸っていた映画館は、きっとこんな感じだったのかもしれませんね。
椅子も硬いし、キレイではないんだけれど、でも真っ暗な場内では余計なものは一切、見えない。私にはとても落ち着く空間でした。

扇形に湾曲しているスクリーンが、大迫力の映像を映し出す

一番規模が大きい松竹セントラル1は、もちろん建物は古いのですが、スクリーンが大きくて、扇形に湾曲しているため、大画面の迫力がプラスされて臨場感マックスです。
音響もそこそこ良いので、日比谷、有楽町あたりの映画館と比べても、遜色なく映画が楽しめます。
松竹セントラル2,3と違い、広々とした館内は、映画が娯楽の王様だった時代、多くの人が押し寄せて笑ったり、泣いたりしたんだろうなーという思いが沸きだしてきます。

近くにはボウリング場や喫茶店も揃っている

さらにこの映画館に併設されたボウリング場は、ランチにはボウリングとランチ1000円ぐらいで楽しめるセットもありました。
また裏が松竹本社になっていて、近くにある「シャトー」という喫茶店は、たまーにスターさんも訪れて一休みしてました。

現在はビジネスマンが闊歩する街に

そんな私の愛した松竹セントラルですが、残念なことに1999年に閉館。
そして2002(平成14)年、跡地にできたのが「銀座松竹スクエア(築地松竹ビル)」です。
同時に、どんどん周辺の景色もかわり、今ではビジネス街としてすっかり様変わりしています。

昔懐かしい、松竹セントラル。
アナログな映画館で観た高倉健、松坂慶子、吉永小百合は、ロードショーの常連スター。
そして松竹セントラル3で初めてみた高峰秀子、原節子、高峰三枝子は、銀幕から私に笑い、涙、感動を届けてくれました。
今でも東銀座界隈を歩くと、あの時の映画館の匂いが「フワッ」と感じられ懐かしい気分になります。

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