旅・人・酒
旅に出て何が記憶に残るか。
世界遺産が素晴らしかった。
特産品が美味しかった。
アクティビティが楽しかった。
色々あると思うが、僕の場合やはり現地の人との交流かもしれない。
当時、僕は所謂ハネムーンというやつでイタリアへ行った。
初の海外旅行で僕のテンションは成田空港で既に最高潮だった。
所謂、海外旅行者向けのお土産の法被を買ったのだ。
※わっしょーいなやつ
家内からは「本気でやめて。」と言われたが、「新婚旅行ってお祭りでしょ!!日本の魂を見せてくるんじゃい!」と珍しく引かなかった。
それどころか、その場で開封。飛行機に乗った時点で既に法被姿であった。
今思えば成田離婚もありうるかなり危険な綱渡りだったと思う。
新婚旅行は、小規模なツアーで、自分たちの他に3組の新婚さんだった。
現地について顔合わせした際「法被着てる人がいたから、その人と一緒だったらやばいなと思ったらまさか同じ組み合わせになるとは。」と皮肉でも何でもないストレートなディスも受けた。
しかし、お祭りモードの自分ははっきり言って無敵のマイハートウィルゴーオンだった。
行く場所行く場所で「KARATE!!」と言われ「ノン! ジャポネフェスティボー!」と言いつつ空手ポーズで一緒に写真を撮られるのだった。
まさか初の海外旅行で自分自身が写真の被写体になろうとは。
そんなイタリアでの3日目、もはやツアー全員が法被に慣れ、自由時間終わりの集合ポイントにすらなってた時(目立つから)、家内がイタリア料理に胃が疲れたというので、その日の夕食は適当に買って食べるかということになった。
ホテルへの道すがらに惣菜屋があったのでそこで購入することに。幸い店主も英語が分かるようなのでお互いカタコト英語でやり取り。
すると、常連と思しきおじいちゃんがやってきて自分にまず絡み始める。
もはや慣れた空手やりとりで、どうやら気に入られ、ワインをおごってくれることに。
なんとこの店惣菜屋でもあり、スタンディングで軽く一杯やれるところであった。1グラス1ユーロというシンプル価格設定なのでお言葉に甘える。
酒が入ると人間不思議なものでイタリア語を喋るおじいちゃんと単語での意思疎通が出来てきた。何だか自分の家内が孫の嫁に似てるだとかなんとか。
そうこうしている内にさらに別の常連のおじさんも合流。
もはや普通に立ち飲み屋モードだ。当然ワインの追加もする。
合間合間で店主の英語通訳も入り会話はますます盛り上がる。さらに店主が音楽を流し始め、踊り始める。
ついには、家内がカウンター内に入り込み常連のおじいちゃんとダンスをしていた。
年をとっても流石イタリア人といったところであろうか。ていうか、カウンター内まで入ってええんかい。
最終的に、お惣菜もサービスされたのだった。
家内も随分楽しんだようで、夜、お店へ行きこういう時のためにもってきていた味噌汁をその店主へ渡したのであった。
翌朝、バスで街を離れる際、駅前に常連のおじいちゃんがいて、当たり前ながらその場所その場所の生活があるんだな、その人の人生の楽しい思い出に関われたなら幸いだな、と思ったのであった。
こんな時代でお酒の風当たりも強くなってる。僕もおそらく人並み以上のお酒の失敗をしている。終電寝過ごして小旅行くらいの場所へ行ってしまったことなんてざらにある。その風潮にNOと言えるはずもない。
ただ、色んな形でこれだけ世界中にあるお酒は、やはり文化と地域と密接につながっている。旅先での酒場は、その土地を教えてくれる。
旅・人・酒。人をほんの少しでも非日常のスパイスで挟むとまた違った味わいになる。これからもケの中でそんなちょっとしたハレを味わっていきたい。
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