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経済学・経済論

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マクロ経済学や国際経済学、財政金融政策、貿易政策、産業政策などについて論じたコラムをまとめます。 2017年6月~9月分をまとめた第一巻はこちらhttps://note.mu/m… もっと読む
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#コラム

一般的貯蓄と経済学的貯蓄の意味の違い

貯蓄と言われて思い浮かぶのは、普通なら銀行預金でしょう。もう少し意味を広げても、保有証券(株式etc)あたりでしょうか。保有不動産(持ち家etc)まで貯蓄だと解釈する人は稀かもしれません。 一般的な貯蓄は、上記のように、金融貯蓄(その中でも特に銀行預金)のことだと理解されがちだと思います。 一方で、経済学的貯蓄は、実は金融的貯蓄と一致するとは限りません。経済学的貯蓄では逆に、不動産のような実物の保有を、より確実に貯蓄だと見做すのです。 こうした貯蓄の意味合いの齟齬は、経

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バブルと長期停滞の関係と対策 / "北欧モデル"の落とし穴

近現代型の金融資本主義経済は、バブルとは切っても切れない関係にあると言っても過言ではありません。 (バブル経済-Wikipediaより) 昨今は特に、日本のバブル景気(崩壊後、"失われた20年"に陥った)、中南米バブル(崩壊により、メキシコ通貨危機などが生じた)、世界的な不動産バブル(このバブルの崩壊は、俗に”リーマンショック”と言われる世界同時金融危機を起こした)といった具合に、バブルとその崩壊(ブームとバースト)は、その規模と頻度を大きくしてきているように見えます。

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中央銀行の存在意義と機能限界 後編

※※※「望月夜の経済学・経済論 第一巻」(11記事¥2800)発売中!(ただしこの記事は含まれていません)※※※ 中央銀行の役割・役割範囲については、いくつかのnoteで間接的に触れてきました。 例えば、なぜ異次元緩和が失敗に終わったのか(及びアベノミクス(ないしリフレ派)の理論、及びその欠陥(マニアック))では、中央銀行がマネーサプライおよび総需要に影響を持たなくなる経済状況(信用創造の罠)について論じました。「お金」「通貨」はどこからやってくるのか?では、マネーサプラ

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ケインズ経済学モデル概説…IS-LM、マンデルフレミングモデル、AS-AD

「ケインズは死んだ」と喧伝されるようになって、既に長い年月が経過しています。(ロバート・ルーカスが『ケインズ経済学の死』というスピーチをしたのは、1970年代のことだそうですので、死が宣告されてから実に40年もの年月が経過していることになります) ケインズの死として表現される事象には色々なものがありますが、大まかに言えば 「『名目総需要が経済において問題になる』という考えが、新しい理論において否定された」 「したがって、金融財政政策が経済に対して有効であるという考えも否

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JGP(一定賃金雇用の無制限供給)は経済を救えるか

現在、日本経済は1990年代から続く20年来の不況(長期停滞)に悩まされています。 世界経済も、リーマンショック(世界同時金融危機)の余波を未だ脱し切れてはいません。 また、仮に今後こうした不況から脱することが出来たとしても、脱するまでに多くの人々が経済的被害を受けたことは払拭できません。 なぜ不況は起きるのでしょうか。 ミンスキーの金融不安定性仮説にもあるように、金融資本主義経済は、「バブルとその崩壊」というサイクルを不可避的に持ちます。あるバブルの崩壊を別のバブル

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「誰かの黒字は誰かの赤字の原則」→「財政"黒字"の危険性」

「もしAからBへ資産が移動すれば、Aの資産は減り(Aの赤字)、Bの資産は増える(Bの黒字)」ということは、容易に理解できることと思います。 これをさらに、「金融資産・負債の生成」という段階にまで掘り下げて適用して考察することで、金融システム全体の大まかな構造理解に至ることが出来ます。 また、タイトルの通り「財政"黒字"」(赤字ではなく)の経済上の危険性についても理解することが出来るのです。 以下の章立てで論じていきたいと思います。 ①「誰かの黒字は誰かの赤字」「誰かの

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「お金」「通貨」の実態・正体

前記事である「お金」「通貨」はどこからやってくるのか?では、今私たちの手元にあるお金がどのような経緯で生まれ、そして消えていくのかについて詳細に解説しました。 その説明を聞いたとき、かつての「お金」「通貨」へのイメージと随分違う印象を受けた人が多かったかもしれません。 特に、「市中銀行が貨幣を発行する」というくだりでは、「これって”詐欺”じゃないの?」という印象を受けた人が少なからず居たのではないかな、と思います。 実際、信用創造(銀行借入・貸出による貨幣創造)について

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「お金」「通貨」はどこからやってくるのか?

ATMから現金を引き出して店頭で物を買う、通販を預金振り込みで利用する、クレジットカードで買い物をして後日口座から引き落とされる……。 私たちはこういった様々な形で、「お金」「通貨」を購買に利用しています。 しかし、我々が利用しているお金(貨幣、money)は、元々はどこからやってきたのでしょうか? 「中央銀行がすべて作ったのだ」あるいは「中央銀行がすべての源である」という主張もありますが、実はそれは大いなる誤解です。 (こうした誤解は、「中央銀行が貨幣を完全にコントロー

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財政政策の指針 ―公共的側面と総需要的側面―

読者からの質問で、「では、望ましい財政政策とは一体何なのか」というものがありました。 そこで、「財政政策は、どのような観点、哲学で決定されていくべきなのか」ということについて、簡潔に述べていきたいと思います。 ①財政政策の公共的側面 ②財政政策の総需要的側面 ご関心のある方はぜひご購読願います。 ※※※このコラムは、望月夜の経済学・経済論 第一巻(11記事 ¥2800)、望月夜の財政論まとめ(7記事 ¥1600)にも収録されています。※※※

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なぜ異次元緩和は失敗に終わったのか

2013年3月に黒田東彦総裁が就任して以来、いわゆる『異次元緩和』は4年以上に渡って続けられてきました。 2013年3月は130兆円ほどであったベースマネーは、2014年3月に210兆弱、2015年3月に280兆強、2016年3月に360兆強、2017年3月には実に436兆円にまで拡大しました。まさに「異次元」の緩和であったといえます。 (マネタリーベース額面の推移 日本銀行「主要時系列統計データ表」より) 一方で、目標として掲げられた「2%インフレターゲット」の方は、

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自由貿易の栄光と黄昏

自由貿易それ自体を非難することは、経済論議上、事実上のタブーとなっています。 実際、日本で名の知れた経済学者の中で、公然と自由貿易を批判した人はほとんど居ませんし、世界レベルでも少数派です。 数少ない批判者も、その多くは「自由貿易が全くダメというわけではないけれども……」といった及び腰の批判に終始する人々が大多数です。 一方で、いわゆる経済学者以外では、自由貿易それ自体への批判は珍しくありません。尤も、反自由貿易を唱えた瞬間に『素人』レッテルを貼られて議論の場からの退場

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なぜ日本は財政破綻しないのか?

「日本財政破綻論」は現代日本で極めて根強い風説です。 経済評論家の多くが、多少の違いはあれど日本財政破綻論を唱えています。 代表的な存在として浅井隆がいますが、彼は早くも1996年に「97年の逆襲 国家破産か、超食糧危機か」という著作を上梓しています。他にも、2000年に著した「2003年、日本国破産 警告編」、2005年に著した「小泉首相が死んでも本当の事を言わない理由」、2010年に著した「2014年日本国破産 警告編」などで繰り返し財政破綻論を喧伝しています。 他

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イノベーションは私たちの生活を必ずしも豊かにしないかもしれない、という話

イノベーション、ないし技術革新という言葉は基本的に肯定的な意味で使われていると思います。 実際、私たちの生活が昔に比べて豊かなのは、間違いなくイノベーションのおかげです。 しかし、「イノベーションが私たちの生活を豊かにできる」という事実は、必ずしも「イノベーションが私たちの生活を”必ず”豊かにする」ということを意味しません。 昔、産業革命下のイギリスでは、手工業者が織物機械を破壊して回るというラッダイト運動が猛威を振るいました。それは明らかに産業革命というイノベーション

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