見出し画像

幼なじみが異世界転生して一ヶ月が経ちました。

インターホンから指を離し、ようやく失敗に気づく。幼なじみの大翔くんが死んで、もう一ヶ月。それなのに時々、こうして呼びに来てしまう。小学校から、あの事故の日まで。彼のいる通学路が当たり前だったのだから。

…十数分後。鞄の中のお弁当箱は二つに増えていた。

「つい、お父さんのと一緒に、ね」

おばさんは苦笑していた。忘れることは難しい。家族ならなおさらだ。でもあたしにも、もう一つ理由があった。

それは毎日見る、剣と魔法の世界の夢。そこに彼はいる。あたしなんかより断然可愛い女の子に囲まれて。

夢の中のあたしは、ただの村娘。彼は時々村に来て、冒険譚を聞かせてくれる。「君が幼なじみに似てるから」そんな理由で。

この夢はどこかの現実か。それともただの願望か。前者であって欲しかった。たとえもう会えなくても、彼が笑っていてくれるなら。滲んだ涙を隠そうと、俯いて歩く。それがまずかった。

信号無視のあたしに、黄色い軽自動車が…

【続く】

それは誇りとなり、乾いた大地に穴を穿ち、泉に創作エネルギーとかが湧く……そんな言い伝えがあります。