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第7回 工場がはじまる

雨降って地固まる。新しい工場がはじまる。


「工場候補が見つかったんだ!」

それはモインからの電話でした。
靴工場を間借りして生産を続けていた間にも、
モインは新しい工場を見つけるために、ダッカ中を飛び回っていました。
そして、ようやく一つ、私たちの拠点になりそうな場所を見つけ出したのです。
それは、ダッカの下町的な場所・ランプラーの雑居ビルのワンフロア。
工場と呼ぶには決して広い場所ではありませんでしたが、
それでも今の私たちには十分すぎる大きさでした。

すぐに、モインやマムン、山口や山崎をはじめとした
工場の全スタッフが現地に行き、チェックしました。

「ここなら十分。やっていける。」
「ここでなら、倍以上の生産量になっても大丈夫だね。」
「今の環境の比にならない良い環境だね。早く移りたいよ。」

スタッフの反応も、総じて上々。
全員一致で、この場所に私たちの工場ができることになりました。
合わせて、現地語でマザーハウスを意味する言葉「マトリゴール」
という生産会社を新たに設立。
正式にモインがそのトップであるディレクターをつとめ、
マムンが工場長をつとめることになりました。
幾多の苦難を乗り越えて、今の生産体制につながる礎が出来上がったのです。

バングラデシュでNo.1の工場を目指して


こうして苦しみの末に立ち上がった自社工場は、
マザーハウスという名前の通り、私たちの「第二の家」のような存在になりました。
モインとマムンという強力なマネジメントだけでなく、
マムンを慕って新しく加わったサンプルマスター・モルシェド、
他の工場で生産マネージャーをしていたミトゥなど
新しい仲間も加わりました。

また、自社工場の立ち上がりに合わせて、株式会社H.I.Sと組み、
お客様が工場を訪問し、生産スタッフと共にエコバックを作るツアーを開始。
工場がお客様と生産スタッフが直接交流し、
互いを理解し合うことができる場所へと進化しました。

そして、自社工場の立ち上げから6年たちました。
マザーハウスの生産は工場の進化と共にあります。
委託工場から自社工場への生産シフトも進み、
今では自社生産の比率も80%を超えるまでになりました。
また、2度のお引越しを経て工場も拡大し、スタッフも160名を超え、
バングラデシュ有数のバッグ工場になりました。

「バングラデシュで、労働環境、品質、デザインなど全てでNo.1の工場をつくりたい」

自社工場・マトリゴールのスタッフがいつも口にしている言葉です。
そのゴールは決して楽なものではありません。
しかしお客様と共にそのゴールに向けた挑戦をし続けている、
その思いを工場スタッフみんなが持っています。
これからも夢に向かって進化し続けていきます。

最後に。マザーハウスの今。


マザーハウスは来年、創立10周年を迎えます。
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念のもと、
途上国にある素材・人材の可能性に光を当てて、モノづくりを続けてきました。

その挑戦はバングラデシュだけではありません。
2009年に進出したネパールでは、自社工房をかまえてストールの生産を行っており、
今では現地のシルクを最も多く発注している会社のひとつになっています。
また、ネパール大震災の際には、お客様からお預かりしている
ソーシャルポイントカードのポイントで、マザーハウスから400万円を拠出、
現地で家を失った人々への支援や電気のない地域への街頭の提供などの支援を行いました。

更に、この秋からはインドネシアでも、
現地の職人と共にジュエリーづくりを始めています。
ジュエリーをつくるにあたり、現地に残る伝統の線細工・フィリグリーに注目。
金や銀などの素材の配合から研究し、新しいジュエリーつくりを進めています。

一方で、販売国も少しずつ拡がりを持てるようになってきました。
16店舗の直営店を展開する日本だけでなく、2011年から台湾で販売を開始、
現在は直営店5店舗を運営しています。

これからもマザーハウスは、世界に存在しているモノづくりの多様性を見つける旅を続け、
世界のみなさんにそれを伝えていきたいと考えています。

読んでいただいてありがとうございました!マザーハウスをもっといろいろな角度から楽しんでいただける毎日の出来事を、生産地やお店からお届けしていきます!