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開けろ!「社会保険料半額負担警察」だ!(改訂版)

モチベーション

みなさんこんな話、聞いたことないですか?

「社会保険料は会社が半額負担してくれている」

すごいですね!サラリーマンうらやましい!

そうかそうか、そんなありがたい事をしてくれるなら、いっそ全額負担してくれる世界があったら、手取りも増えてめちゃくちゃハッピーな世界に違いないですよね!
なにせ社員のために半分払ってくれてるんだから!

ではでは、会社が全額負担してくれる世界へ旅してみましょう(^^)

あなたの手取りの計算式

比較のために、まず我々の世界について知る必要があります。なので、簡易的ですが自分の手取りについて計算してみましょう。

いろんな控除とかあるんでほんとは複雑ですが、今回の問題にフォーカスするために、抽象化した式は以下の通り。

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※他の控除も存在するが、他のパラメータに影響しない固定額なので除外。

では簡単にするために、以下のペルソナを想定します

40歳未満、扶養家族なし
給与所得:500万円, 賞与0円(標準報酬27等級, 40,467円/月)
社会保険料負担: 242,802円(会社負担242,802円)

計算してみよう

まず先に給与所得控除を計算しときます
500万x20%+54万 = 154万(給与所得控除)

500万(給与収入) ー 1,540,000(給与所得控除)  ー 242,802(社会保険料控除)
321.72万円(課税所得)

321.72万(課税所得) x 所得税率(10%) - 97,500円(所得税額控除)
224,000(所得税額)

321.72万(課税所得) x 住民税率(10%)
321,700円(住民税額)

500万 - 224,000(所得税) - 321,700(住民税) - 242,800(社会保険料負担) 
= 4,211,500(手取り) 

ここからもしもボックス

今日から法律で社会保険料はすべて会社の負担となりました!!!
そのかわりあなたが負担していた半額分については給与を下げる事にしました。

ま、フェアだよね?

つまり、こういういうことになりました

給与所得:4,757,200円(標準報酬27等級変わらず)
社会保険料負担:0万円(会社負担485,604万円)

再び計算してみよう

まず先に給与所得控除を計算しときます
4,757,200 x 20% + 540,000 = 1,491,440(給与所得控除)

4,757,200(給与収入) ー 1,491,440(給与所得控除) ー 0(社会保険料控除)
3,265,760(課税所得)

3,265,760(課税所得) x 所得税率(10%) - 97,500円(所得税額控除)
229,000(所得税額)

3,265,760(課税所得) x 住民税率(10%)
326,500(住民税額)

4,757,200 - 229,000(所得税) - 326,500(住民税) - 0(社会保険料負担) 
= 4,201,700(手取り) 

これってばどういうことだよ??

4,211,500円 から 4,201,700円 ( マイナス9800円 )になってしまいましたね🤔

はて、会社は「従業員のために半額負担してくれている」はずでは...

会社の税額から見てみよう

我々の世界での、会社の経費
給与500万 + 社会保険料負担24.2万 = 524.2万(経費総額)

もしもボックスの世界での、会社の経費
給与475.7万 + 社会保険料負担48.5万 = 524.2万(経費総額)

つまり、経費は同じ=法人の支払い税額は変わんないっすね🤔

税収から見てみよう

我々の世界での、あなたの支払い税額
224,000(所得税額) + 321,700円(住民税額) = 545,700円

もしもボックスの世界での、あなたの支払い税額
229,000(所得税額) - 326,500(円(住民税額)  = 555,500円

納税額が9800円増えてんじゃん!!

It's show time!

式を見れば明らかですが、なぜこうなるか、というと
「社会保険料控除が0になる」
「給与所得控除は給与収入額に基づく」
のあわせ技です。

会社にとって経費負担が変わらないのであれば、従業員にとって最も幸せなのは「社会保険料分全額を社員に給与として支払う」
が正解なんですね。
もしもボックスの世界とは逆に、給与所得が増える=給与所得控除が増える=課税所得が減る=税金が減る=手取りが増えるんですから。

会社にとってみると、社会保険料の負担割合なんて、どっちだっていいんですよ。むしろ「社会保険料分も全額社員に支払ったほうがハッピー!」はずです。

なんでかというと、同業種の派遣や自営業に対して、プレゼンスが上がります。なにせ、見かけの支給額は増えるんですから。

なんでこんな世界になったのか?

社会保険料負担按分の歴史については詳しくないのでわかりませんが、単純にいうと、社会保険料分もすべて給与として支給して個人で支払うようにすると給与所得者からの税収が落ちるんです。

つまりこのルールは
❌「会社は(従業員のために)社会保険料を半分負担しなさい!」
ではなく
⭕「会社は(国税局のために)社会保険料を半分負担しなさい!」
ということなんですね。

「会社が半分負担してくれている」

という発言の頓珍漢さをわかっていただけたでしょうか。

これからそんな発言をしてる人に出会ったらこのnoteをぶつけてみてね(^-^) #露骨な宣伝

この記事の嘘(追記)

実は後で気がついたんですが、社会保険料負担額は給与収入、つまり標準報酬等級に影響されるので、給与収入が増えると社会保険料そのものが上がることがあります。この数字は等級毎に決まるので線形にはなりませんので予測が難しいです。

全額負担してくれる世界の場合、会社の経費を固定に再計算すると、手取りの減少を打ち消す方向に働くことがあります(支給額が減る=会社の負担する社会保険料総額が減る=あなたの給与所得は増える)

逆にすべてを給与として支給した場合も、手取りの増加を打ち消す場合もあります

ただし、これらの等級の移動による金額は大きな影響ではないので、最終的に会社が全額負担しようが、あなたが全額負担しようがほとんど変わらないが、社会保険料分すべてを全額給与でもらったほうが多少は手取りが増えるという結論になりました。

参考資料

国税局 - No.1410 給与所得控除
国税局 - No.2260 所得税の税率
中野区 - 住民税の基本の計算式
全国健康保険協会 - 令和2年4月分(5月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

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