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「スマホ脳」スマホから目を離せ、それは危ないドラッグだ。代わりに散歩しようぜ。

「スマホはもはや俺の臓器」

とキュウソが歌っていたのは2013年のこと。

あなたは一日何時間スマホを見ていますか?

誰よりも君見つめてる
好きなあの子よりも長く
一日2時間は見てる
小さな電化製品を

発達しすぎた文明
手のひらの中に世界が
現実よりも現実な
僕らのリアルを蝕む

―キュウソネコカミ「ファントムヴァイブレーション」―


時は流れ2021年。
ステイホームが叫ばれる昨今、ますますスマホという文明の利器は、我々の生活になくてはならないものとなっています。

iPhone発表当時、ガラケー全盛期の日本では、物理ボタンの一切ない携帯電話など流行るはずはないという風潮でした。
それが今や一家に一台どころか1人1台や2台は当たり前という状況です。

スマホには出来ることが多すぎました。
ありとあらゆるモノとコトとヒトの代替品になり得るポテンシャルを秘めていました。

電話はもちろんのこと、時計、目覚まし時計、ストップウォッチ、カメラ、ビデオ、メモ帳、電卓、懐中電灯、辞書、地図、GPS、切符、時刻表、新聞、手紙、年賀状、メール、カレンダー、天気予報、音楽プレイヤー、ラジオ、テレビ、漫画、映画、ゲーム機、カーナビ、写真アルバム、パソコン、財布、ポイントカード、銀行口座、証券口座、家計簿、・・・

などなど、たった1台の黒い液晶画面で出来ることはそれこそ無限にあります。
わざわざ切符を買わないといけない。
わざわざ銀行でお金をおろさないといけない。
わざわざ書店で本を探して現金を渡さないといけない。
わざわざ会社に出社して働かなければならない。

ありとあらゆる煩わしい「わざわざ」を体を動かすことなく、親指だけでそのすべてが完了できる素晴らしい世界です。
こんな便利なもの、使わない方が異常です。

かつてここまでの汎用性と応用性に満ちたデバイスが、ヒト以外に存在したでしょうか?

パソコンやタブレットにもその可能性はありましたが、いまやPCの使い方を知らない新入社員がいるほどです。
「ケータイ」という名前が物語るように、なによりもその携帯性と、どこにいてもコードレスにネットに繋げることができる便利さ、起動とレスポンスの早さ、という点において、スマホは最強です。

ドラえもんが描く、車が飛び時空を超える未来よりも発展した素晴らしきデバイスを、ほぼ全ての人間が所持し繋がっている世界、さぞ人類も幸福に違いないですよね。

どうやらそうでもないらしい。
いつまでたっても人はせかせかと忙しく働き、人や国は争い、また自らを傷つけ、いつになっても隣の芝生は青いまま。
何のために便利を求めたのだったのだろうか?
よりよい人生の為に効率化を求めたのではなかったのか?


不調の訪れ

ここ最近、目に見えて感じる不調があります。

人の名前が覚えられない。
さっきやろうとしたことを忘れている。
数字や脈絡のない文字の羅列が記憶できない。
腰痛と肩こりがひどい。

加齢によるものだと断じてしまえばそれまでですが、果たしてそうでしょうか?
明らかに記憶力や集中力の低下を感じます。
スマホが手元にあれば、僕のすべてがそこにありますから、メモしたことを掘り起こす、検索すれば解決することです。
でもスマホがなかったら?
というか検索して済むのであれば僕はいらないのでは?

スマホを使いこなす自分という立場から、スマホという大容量ストレージから情報を引き出すマウスと化している自分に震えます。

そんな不調と不安を抱え、助けを乞うように向かった本屋にて、とある一冊を見つけました。

「スマホ脳」
センセーショナルなタイトルの本書が、疑惑を確信へと変えました。


スマホ脳 要約

目次は以下の通りです。
1章:人類はスマホなしで歴史を作ってきた

2章:ストレス、恐怖、鬱には役目がある

3章:スマホは私たちの最新のドラッグである

4章:集中力こそ現代社会の貴重品

5章:スクリーンがメンタルヘルスや睡眠に与える影響

6章:SNSー現代最強の「インフルエンサー」

7章:バカになっていく子供たち

8章:運動というスマートな対抗策

9章:脳はスマホに適応するか?

10章:おわりに

目次だけでも、なんか面白そうと感じられると思います。
著者は、スウェーデンで今最も注目されているメンタルヘルスのインフルエンサー、アンデシュ・ハンセン。
精神科医の目線から、現代スマホ社会の危険性を事実と実証を交えながら、難解な単語は極力少なく、読みやすくスッとなじみやすい文章で淡々と語ってくれます。

ぜひともお手に取って自身の目で、電子書籍でなく紙の本で読んでいただきたいので細かな内容は多くは触れません。

本書の中で印象的だったフレーズを何点か載せておきます。

「脳はこの1万年変化していない――それが現実なのだ。生物学的にみると、あなたの脳はまだサバンナで暮らしている。」
「800人にコンピューター上で集中力を要する問題をやらせる実験があった。結果、スマホを別室に置いてきた被験者は、スマホをポケットに入れていた被験者よりも成績が良かった。脳は弱る――スマートフォンの存在がわずかにでもあれば、認知能力の容量が減る。」
「グーグル効果とかデジタル健忘症と呼ばれるのは、別の場所に保存されているからと、脳が自分では覚えようとしない現象だ。脳は情報そのものよりも、その情報がどこにあるのかを優先して記憶する。」


不調や不安に感じていた部分の答えが書いてあるかのようでした。
しかし、かといってスマホはもはや俺の臓器です。そう簡単にスマホ断ちなどできません。著者も、なにも脳に従って石器自体の暮らしをしろとは言いません。


運動をしろ。

以上です。
ウォーキングなどの少しの運動によって、あらゆる不調は解決に向かうそうです。


脳はスマホに勝てません。それは他人よりも今食事をしている友人よりも圧倒的に魅力的で、あらゆる方法で我々をオンラインの世界にとどまらせスクリーンタイムを伸ばそうとしてきます。
しかしその結果未来はどうなったでしょうか。SNS叩きは日を増すごとに激しさを増し、ありもしないフェイクニュースや数字に踊らされお昼のワイドショーは報道の意義を忘れもはや目の毒です。
過剰なまでの除菌抗菌で清潔化された世界で、免疫力をなくした子供たちは果たして僕たちのように健康でいられるでしょうか?2020年はインフルエンザの発症数が極端に少なかったそうですが、それだけ外敵に脅威に晒されなかったわけです。管理された環境で育ったまるで養殖のマグロです。これから生まれてくる子供が少し可哀そうに感じてしまいます。

あらゆることは効率化できます。
そしてそれはスマホによって実現できます。よりスマートに無駄を省いて。

しかし無駄を愛してみてはいかがでしょうか。
僕はまず、一つ前の駅で降りて帰宅する、ウォーキングから始めてみようと思います。



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