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中1 転校 卓球部 、五大姉ちゃんの話

中学1年の2学期
東京から福岡県A市に家族で引越し、転校することになった。
東京から転入生が来た、というので学年全員が私を見に来たくらい田舎の中学校。
田舎だからか不良がたくさんいた。昭和はツッパリブームだった。

ブームとは言え、そんなチャラい感じではなく、A市の不良はとてもヤ●●にちかい存在。本格派。とにかく怖い。
東京では見たこともなかった長いスカート丈 細い眉毛 剃り込み 短ラン 長ラン 細く潰した学生カバン 今でもあれほんと中学生だったのかなって思う。カルチャーショック。

入ったクラスはまだ1年生だし平和な感じだったけど、とにかく上級生が怖かった。
学年がひとつ上というだけですごい大人に見えたし、とにかく見た目が迫力満点。

だけど真面目な私にはあまり関係ない世界。
先輩に目をつけられたりもしないような地味で真面目だったから。

転校してすぐ仲良くなったキヨミちゃんが卓球部の所属だった。
部員が3人しかいなくて試合に出られないから入部してくれない?と誘われて、前の中学ではバドミントン部だったけど、この中学にはバドミントン部がなかったので入部することに。
女子の卓球部の部室は旧校舎の空き教室を利用していて、そこに卓球台が一台。広々しているところを貸切で利用出来て、環境はすごく良かった。
部室の窓を開けると、中庭と渡り廊下が見えて、その景色もすごく気に入った。
先輩は不良ではない普通のA先輩がひとり。同学年のキヨミちゃんとYちゃん。
Yちゃんはちょっと不良に憧れてる真面目な子。
毎日が楽しかった。転校も悪くないと思った。
帰り道に駄菓子屋でチェリオを飲んだり、
好きな時に素振りして、卓球して、
顧問の先生もほとんど来ない。
割と好き勝手できたのになぜだか部活動は真面目にやってた。卓球が楽しかったんだな。

そうして2年生に進級したある日。
「青天の霹靂」
私にとっては、あれはまさに青天の霹靂という言葉にふさわしい。

ひとつ上の学年で「五大姉ちゃん」と誰もが恐れていたとにかく怖い目立つ、5人の不良代表の先輩がいた。代表だ。とにかく怖い。
もちろん私とは別世界の人達‥のはずだった。

その五大姉ちゃんが突然卓球部に入部して来たのだ。5人ともだ。なぜだ!
急にスポーツがやりたくなったのか?
もちろんそんな事はあるばすはない。
当時、卓球部の部室は旧校舎だったので、隣りの教室の旧技術室が空き部屋だった。もちろん隣に通じる扉は釘が打ち付けられていて封鎖されていたわけだが、どうやらそこに目をつけたらしい。
その扉は五大姉ちゃん達の入部初日に速攻こじ開けられた。人目のつかない空き教室が使い放題だ。そこで何をしてるのかは怖くて覗けなかったけど、五大姉ちゃん以外の不良も(男子の先輩もたまに)出入りするようになった。いわゆる溜まり場になったのだ。怖すぎる。

五大姉ちゃんのリーダーである、一番怖いF先輩は何故かいつも片手に竹刀を持っていた。
ラケットじゃなく竹刀。
卓球部なのに 竹刀!!
不良に竹刀はつきものなのか?
「はい!素振り100回!」バシッ!!
「声出てない!」バシバシッ!
ってな感じで床や卓球台そこらじゅうを竹刀で叩く。
私たちは震えあがり「はい!」と従うしか選択肢はない。泣きながら素振りする毎日。
部室に行くと水道の排水口にタバコの吸い殻があって、それを掃除するところから部活動が始まるようになってしまった。
放課後、ちょっとでも行くのが遅くなると先輩が直々にクラスまで迎えに来たりするのでとてもじゃないけどサボれなかった。地獄のような日々。

でも良いこともあった。
「いじめられそうになったらいつでもアタシたちに言いな」とF先輩。
実にカッコいい。なんと心強いことか。
だから昔はイジメが少なかったのかな。
イジメたら不良が成敗してくれるから。

土曜日には部室の窓から先輩に手招きで呼ばれ、先輩は500円札を指で挟みサッと出し言う。「これで何か食べてきな」
(え?自分で稼いだお金?中学生だよね?)みたいな感じで、実にカッコいい。怖いけど、カッコいいのだ。
だからみんな不良に憧れたのかも。
服装なんかもマネしてほんのちょっとスカート丈長くしたり、カバン潰したり。

だけど突然それは幕引きとなる。
先生にタバコがみつかり五大姉ちゃんの5人が、一斉退部となったのだ。
それが気に入らなかったのか、部室の窓は全てF先輩の竹刀によって粉々に割られてた。
やっぱり怖い。

嵐が去り、卓球部に平和が戻った。
あれは何だったんだくらい平和が戻った。
窓ガラスはそれからしばらくビニールが張られていた。ほんとに嵐のあとのようだった。

2年の終わり、先輩達の卒業の時、卒業のお祝いを伝えるために恐る恐る挨拶に行った。
すると、F先輩が自分のスカートを私たちの誰かに譲ると言う。
プリーツヒダが32枚の長ロング極悪スカートだ。
普通のスカートのプリーツは24枚ヒダで、ちょっと背伸びしても28枚まで。
不良度が増すとヒダの数が増えてプリーツが激細になるというシステムだ。
32枚となると相当だ。
F先輩の手前、その場ではみんな欲しそうに振る舞ったけど、誰がこれをはけるというのか‥‥
結局その極悪スカートは不良に憧れてたYちゃんが譲り受けることとなった。
その後Yちゃんがそれを履いてるのを一度も見たことはなかったけど。

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