『夜半』

ずっと、弱い子、になりたかった。
思わず支えたくなるような、一人では歩けない
ような、白くて儚い女の子になりたかった。
「あなたは一人でも生きていけそう」。
やられた、と思った。私の悪い癖。強がって、
強がって、挙げ句の果て強い女になってしまった。
だから、そう。あなたに「奥さんと私、どっちか
選んで」と言った時、それは、奥さんだよ、と
言われた時も、強がった。奥さんは弱い人なんだ、とあなたは前に言っていた。精一杯強がった。
そうだよね、なんて言いたくなかった。
いいなあ。あなたは。家に帰ったら守らなきゃいけない奥さんがいて、可愛い子供たちもいて。
私はあなたと別れた今も、奥さんに似てる女の人、
小さい男の子を見ると吐き気がするよ。
あなたを見るとその場から逃げたくなるよ。
でもそんな事言えないからね、頑張って一人で
立っているんだよ。本当は一人で立つのもやっと
なのに。フラフラだけど、頑張って立ってるよ。
あなたにはわからない。私の弱さとか、強がりとか、涙とか。
頑張らないと。頑張って頑張って、一人でも、
しっかりしないと。大丈夫、大丈夫。
私は大丈夫。大丈夫だから

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