moshi_mo

短編小説

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スリッパ。

久しぶりに、思ったことを綴ろうと思った。 高校を卒業して一週間。たまに会う同級生たちは髪色が 明るくなり、耳にはピアスがキラキラと輝いていた。 そんな私も髪は明るくしたし、ピアスも3つ開けた。 それだけで自分がすごく大人になったように感じるし、 あなたに追いつけるような気がしていた。 春から遠くに行ってしまうらしいあなた。 卒業式の日、手紙を渡すためにあなたを探し回ったあの日。 その手紙にはごくごく普通な、あっさりとした別れの言葉が綴られていた。 あなたと過ごした3年間、

    • 幸せを望んでいたのに、いざ幸せになると怖くて怖くてたまらないのはなんでだろう。

      • 生きるのって難しいね。

        • 『流浪』

          あの子が自ら死を選んだのは、他人に同情して欲しいからではない、と、思った。 でも私の友人は毎日のようにあの子を想って泣く。 なぜ気付いてあげられなかったのか。 きっと一人で辛かっただろうに。 寂しかったよね。ごめんね。と。 「そうだね。」なんて。 ちがう。ちがうよ。 私は心の中で何度も思う。 あの子はそんな事を思って欲しくて死んだんじゃない。 あんたに何がわかる。 と、聞かれたら、何もわからない。 私はそう答えるだろう。 本当に何もわからないのだから。 でも、それはみ

        スリッパ。

          綺麗な言葉を綴ろうとすればするほど 言葉が出てこない。そんな夜

          綺麗な言葉を綴ろうとすればするほど 言葉が出てこない。そんな夜

          『夜半』

          ずっと、弱い子、になりたかった。 思わず支えたくなるような、一人では歩けない ような、白くて儚い女の子になりたかった。 「あなたは一人でも生きていけそう」。 やられた、と思った。私の悪い癖。強がって、 強がって、挙げ句の果て強い女になってしまった。 だから、そう。あなたに「奥さんと私、どっちか 選んで」と言った時、それは、奥さんだよ、と 言われた時も、強がった。奥さんは弱い人なんだ、とあなたは前に言っていた。精一杯強がった。 そうだよね、なんて言いたくなかった。 いいなあ。あ

          『夜半』

          『ハルジオン』2

          制服のブレザーとネクタイがしっくりくる季節。 また僕に、彼女は言った。 「ハルジオン。調べてくれた?」 調べてない、答えると彼女は少し下を向いて ちぇっ、と言い足元の小石を蹴った。 彼女は暫く黙り込んで、らしくない、小さな 囁くような声で言った。 「いいの。無理に調べて欲しいわけじゃない。 大丈夫。ごめんね。」 彼女にしては珍しくしおらしい。 何かあった?聞こうとして、やめた。 これも彼女の作戦のうちなのかもしれないと思ったから。 その日から、僕と彼女が会うことはなかった。

          『ハルジオン』2

          『ハルジオン』1

          「ハルジオンの花言葉、知ってる?」 彼女はいつものように両手を制服のポケットに 突っ込みながら振り返り、聞いてきた。 知らないけど、僕が答えると、そう、とだけ言い、 また前を向いて歩き出した。 結局教えてくれないのか。君はいつもそうだ。 いつも、僕にクイズのようなものを投げかけては、 正解は教えてくれない。 「私が君に答えを教えないのはね、君が自分から その答えを知ろうとするのを待っているんだよ」 いつかの彼女はそう言っていた。 だが、僕は答えを調べようと思ったことは一度も、

          『ハルジオン』1

          もしも

          もし私が、文章を書くなら 沢山の人に愛されるものを書きたい もし私が、 たくさんの人に愛される文章を書けたなら あなたに選ばれなかった虚しさは消えるだろうか もし私が、一人の人間にとても愛されたなら あなたのことを忘れることができるだろうか もし私が、あの時、あなたに選んでもらっていたら 私は今幸せだったのだろうか 幸せになれただろうか 「人の不幸の上に成り立つ幸せは結局不幸だ」 私は、幸せになれただろうか