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ああ!そういうことだったのか?!

「冬の間は、どうやっても絶対釣れませんから!海釣り公園を見ても、誰も釣れてなかったし、魚は深いところに移動してしまったし、私程度の腕で、陸から何か釣れると思ったら大間違いですから!」
ずっと自分を戒めて我慢してきたのだが、今日、ついに真冬の初・瀬戸内釣りに出かけてしまった。

というのも、noteに松山在住のベテラン釣り師の方が記事を書いていらっしゃるのを発見してしまったからだ。
実に楽しそうに釣行のレポートをしていたり、釣れるポイントを教えてくださったりしている。
そんなの、読んじゃったら行きたくなるに決まってる!
3日間、記事を読み込み、
「やっぱり本気で釣る気なら、島だよなあ」
と興居島に渡ろうかと思ったのだが、わざわざフェリーに乗って行って釣れなかった時のショックはでかい。
まずは、近場から……と「白石の鼻」と呼ばれる場所を選んだ。

本日の最高気温は9℃。
バイクに乗っていると、風で体感温度はさらに下がる。
鼻の奥が凍るのではないか、と思いながら、釣り場につくと海からの風がびゅうびゅう吹きつけ、「絶好の釣り日和」の対極的真冬日だった。

それでも来たからには、何か釣るまで帰らないぞと竿を振ったが、強風で狙ったところに仕掛けが飛ばず、針を根掛かりで3本失う。
「やっぱりね。こんなに複雑な潮流の、岩だらけのところで、根掛かりしないはすがないと思っていたんだ。こんな時のために、今日はウキを持ってるんだもんね!」
私はドラえもんのように得意げに、リュックから「遊動ウキ」を取り出した。

遊動ウキとは、このような形状をしている。

ウキにつないだスイベルというリングを、糸に通して上下に自由に動くようにしてあるから「遊動」ウキという。(写真を見てもらうと、下の方に安全ピンのような銀色の金具が見えると思うが、その金具にくっついている隠れて見えないリングがスイベル)

今日、初めて遊動ウキデビューした初心者が解説するのもおこがましいが、これを使うメリットは、
①海面から垂直に餌を下ろせること
②魚のいる深さが予想より浅くても深くても、ウキが動くのである程度まで調節可能であること
だろう。

錘や餌のついた糸が海中を斜めに走っていると、その分、どうしても岩や海藻に絡みやすくなる。
遊動ウキがあれば、狙い通りのポイントに海面から垂線を引くように餌を落とし込める。
よって、根掛かりしにくくなる、という訳だ。
岩場では便利なことこの上なしな、ビギナーの味方である。(たぶん)

強風の中、付け方の解説動画を見ながら、遊動ウキつきの仕掛けを作る。
細かい作業が多く、岩場に座り込み、メガネを頭の上におし上げて手元を覗き込むが、何しろ寒過ぎて、見えているのに指が震え、うまく糸が入らない。
10分かけて、ようやく仕掛けを完成させた。

「うりゃっ」

第一投。
狙い通り。
そこに魚がいさえすれば、食ってくれるはずだ。
手応えなし。
餌もそのまま残っている。
ここじゃないのか。

「そりゃっ」

第二投。
風にウキが煽られて、狙いと全然違うところに落ちてしまった。
嫌な手応え。
また根掛かりか?
思い切り糸を引くと、反動で仕掛けが空を切って戻ってきた。

第三投。
スカッ。
あれ?手応えがない。
よく見ると、糸の先に何もついてない。
針も錘もウキも、どこかに飛んでいったようだ。
なんてことだ。
わずか三回しか使ってないのに(しかも一匹も釣れてないのに)ウキが無くなってしまった。
震える手で結んだ糸が、緩かったのだろう。
サルカンから糸が抜けたのが敗因のようだった。

探すと、針と錘は岩の隙間に落ちていた。
今日買ったウキだけがない。
あーあ。
やっぱり、私に冬の釣りは無理だったか。
ウキ、もったいなかったな。

諦めて道具をバラし始めると、後ろから声をかけられた。
小学校4.5年生といった感じの、メガネの華奢な男の子が立っている。
「あのー、何かお探しですか?」
言葉遣いが大人びている。
「ウキがどこかに行っちゃったんです」
応える私もつい、丁寧になる。
「あれじゃないですか?」
男の子が指差す海中の岩の間に、確かに私のウキがプカプカ漂っていた。
「あー、本当だ。ありがとう。あれですね」
どうやっても届かないとわかるので、そのまま道具の片付けを続けていると、男の子が何か言いたそうにしている。
ピンときて、
「もしかして、あれを取る方法を何か知ってますか?」
と勢い込んで聞いてみるが、ブンブンと首を振る。
「そうですか。じゃあ、仕方ないですね。見つけてくれてありがとうございました」
そのまま、肩を落とし、帰ってきてしまった。

しかし。

今になって気づいた。
彼は
「海にプラスチックゴミを残して帰るのは、いかがなものか?」
と言いたかったのではないか?
あっちゃー!
やってしまった。
今日の私は、自分のことしか考えられずに、寒くて早く帰りたい一心で、自分がプラゴミを放置している意識もなくやらかしてしまっていた。
よくない大人の見本になってしまった。

ごめん、小学生の君よ。
私が飛ばしたウキは、もうどうにも回収不能だけれど、暖かくなったら、無くした釣具の10倍のゴミを拾うから。
それで許してくれないだろうか。
そして、無理だと思った時には、粘らずサクッと帰ってくるのも、海ゴミを増やさないためには必要なことだったね。

今後はこの点に気をつけて、釣行をとり行うことを君に誓います。
大人代表として、大変申し訳ありませんでした!

**連続投稿728日目**

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