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2022.8.6 新日本プロレスSTRONG SPIRITS Presents G1 CLIMAX 32 DAY12 試合雑感

◼️ 第5試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Dブロック公式戦
YOSHI-HASHI vs エル・ファンタズモ

YOSHI-HASHIは本当に成長しましたね。こうして相対していても以前のような気後れが一切なく、自信に満ち溢れていましたね。

ファンタズモは相変わらずの曲者であり、起こすときに耳を掴むなどのダーティーなプレイから、キレのあるスピーディーな空中戦というよりはふわりとした無重力の跳び技を得意としており、まさに縦横無尽という言葉がピッタリと当てはまりますね。それに対してYOSHI-HASHIもトペコンを披露するなど、ジュニアからヘビー転向の先駆者であることを意識しつつ、格や存在感で上回るファンタズモが相手に対等に張り合っているのがよかったです。

最後はカナディアンデストロイヤーからカルマに繋いでしっかりと勝利。今のYOSHI-HASHIの試合っていまいち勝敗が読みにくいのがミソで、格上相手に勝つアンダードッグ効果を生かしつつもそれに安住することなく、大金星!にならず勝つと成長を実感できるあたり上手い落とし所を見つけたなと。単なる善戦マンというわけでもなく、結果をちゃんと出しているのがいいんですよね。なんというか、めだかボックスの人吉善吉の愚行権(デビルスタイル)じゃないですが、純然たる格の差がある今の新日において、ご都合主義や主人公補正のなさによる強みというのは確かにあり、だからこそ応援したくなるのかもしれません。レスラーの歩みとしては牛歩ではあり、ここから格を上げるのはまた長い道のりになりそうですが、ゆっくりと見守っていきたいですね。

◼️ 第6試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Aブロック公式戦
矢野通 vs ランス・アーチャー

何度か書いていますが、アーチャーの空気感の素晴らしさたるや。動きこそめちゃくちゃいいというわけでもないのですが、雰囲気と空気感で誤魔化しが効くどころか、技や動きといった分かりやすい部分以外での観客との「対話力」においてはG-1参戦選手の中ではトップクラスです。単にキャラクターを演じるだけでは追いつかない領域の話であり、この局面において何を見せたいか、何を伝えたいか、それが何よりも雄弁なんですよね。

この試合も矢野ワールドではありましたが、そのフォーマットに乗っかりつつも存在感は抜群にありましたね。股下が深すぎてマンハッタンドロップが当たらないシーンはわりと際どいネタというか、今の新日でも見ることの多い技でありつつも、形だけになっててちゃんとドロップしていないことが多々あるわけで、そこに触れてくるとは思いませんでしたね。アーチャーに場外テーピングされて戻ってくるときに場外カウント20ギリギリだったのはご愛嬌といったところでしょうか。

途中巻き込まれたヤングライオンは災難で、散々引きずり回されたあげく、高角度のチョークスラムを被弾する憂き目に遭いましたが、ここでちょっと不安になってしまったというか、先にアーチャーが見せ場を披露したことで負けるんじゃないかと思ってしまったことは内緒です。矢野の金的でダメージを受けつつ、マットを踏み鳴らしてアピールしつつの股間モミモミは笑ってしまいました。あれ、万国共通なんですかね?アーチャー、振り切ってていいですね。

最後はブラックアウトで矢野を高々と抱え上げて粉砕。流石に勝ち星的にはここで負けたりはしないだろうと思いつつも、チョークスラムのあたりで揺さぶりをかけられたような気もして、やはりアーチャーは別格ですね。矢野戦の中では今のところこれがベストです。

◼️ 第7試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Cブロック公式戦
後藤洋央紀 vs ザック・セイバーJr.

後藤がいつになくストロングスタイルでした。安易に使うことは避けてるワードではありつつも、この試合に限っては後藤が結構バチバチやっていたというか、普段の後藤にしては珍しく殺伐としていたんですよね。頭を蹴りつけるだけでなく、ブルドッギングヘッドロックもしっかり顔面から叩きつけていましたし、腕を固定してのミドルキックの乱射なども荒々しく、如何に耐える後藤といえど、ザック相手に守勢に回っては弱々しい雰囲気が出てしまうわけで、むしろこうした攻めの後藤がもっと見たいわけです。

ザックの負けん気の強さもそれと噛み合っていましたが、関節に入るときに頭突きやエルボーからの「当身」から入るのは素晴らしいなと。こうしたあたりに武術的な要素を感じてしまうというか、単なる関節一辺倒というわけではないんですよね。場外での腕ひしぎからさらに指を極めるシーンは感服したというか、反則を連発すれば当然反則負けにはなりますが、反則カウント中にさらに反則を上乗せするのは結果的には一回分として扱われるので、ルールの隙をついた感があって裏技っぽくてとてもよかったですね。他にも、足をキャッチして関節を極めて崩す柔法めいた動きから繋がるドラゴンスープレックスなど、関節技はタップアウトを奪うためのものだけでなく、根本的には相手を「制するもの」というのを改めて思い知らされました。

最後は三角絞めから腕ひしぎへと移行し、そのまま引きずり込んでタップアウト勝ち。後藤、ここで2敗は厳しいというか、崖っぷちに立たされましたね。とはいえvsザック戦ではこれがベストであり、また見たい対決ではありますね。

◼️ 第8試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Bブロック公式戦
グレート-O-カーン vs ジェイ・ホワイト

注目の初対決。ジェイ相手にオーカーンがどう出るかが見ものだったわけですが、初っ端からグラウンドでの「下地」の勝負を仕掛けたのは上手いですね。当然これにジェイは応じず局所でのイニシアチブの奪い合いには興味を示しません。より大枠の部分でのコントロールに重点を置きつつ、多少やられてもヘタレヒールを演じれる所がジェイの最大の強みなんですよ。弱々しくもなれるし冷徹にもなれる。言ってしまえば全ての起点がジェイから始まるわけで、これは常に手綱を握られていたオーカーンからすると苦しいですね。序盤以外にも何度かオーカーンは誘水を向けましたが、ジェイは乗りませんでしたし、途中のオーカーンの「来いよ!」にはかなり本音を感じてしまいました。

オーカーン自身もロープブレイクを歯での噛みつきで魅せたり、ノータイムで放った不意打ちモンゴリアンではジェイもしてやられた笑みを見せていたりと、隙があらば自身の存在をねじ込もうと画策していた印象があります。逆手仕様のアイアンクローなど、普段と違う動きを見せたり、正拳突きもクリーンヒットさせましたが、最後はエリミネーターを足を踏んで崩しつつ一瞬のブレードランナーでジェイが勝利。執念を感じる外れないアイアンクローは最後の意地ではありましたが、試合内容はほぼ完敗でしたね……。ギミックレスラーとしての魅せ要素と、格闘技のバックボーンという素の実力という二面性がオーカーンの魅力であり、今回もその両面でジェイに圧をかけようとしましたが、その「位相」を上手くズラされた気がします。ジェイはやっぱり怪物ですね。

◼️ 第9試合 30分1本勝負 
『G1 CLIMAX 32』Dブロック公式戦
鷹木信悟 vs ウィル・オスプレイ 

文句なしに今大会のベストバウトです。面白いことが確定している試合でありながら、その期待感を微塵も損なうことなく、期待以上のものを見せる……。これぞプロです。この試合に関しては逆にあまり語ることがないというか、言葉すら置き去りにしていく速度。何よりもオスプレイの驚異的なスペックを十二分に引き出せる鷹木信悟の凄さもさることながら、両者のスペックを比較すると鷹木をもってすらやや劣りかねないあたりに恐ろしさを感じてしまうのです。この二人がいる場所こそが令和のプロレスの最先端と言っても過言ではなく、世界最高レベルのクソ野郎と渡り合えるのは熱血快男児というのがまた面白いですよね。

特筆すべきはオスプレイの放ったメイドインジャパンで、これをメイドインイングランドと呼んだのは名調子ですね。オスプレイの速度に負けじと追いすがりつつ、ありえないレベルの熱量をドロドロと注ぎ込む鷹木。最後はスライディングDからのラストオブザドラゴンで鷹木勝利。オスプレイのヒドゥンブレイドの魔力が増すに従って、呼応するように鷹木のスライディングDの切れ味も増していってる気がします。まさに名刀の切り結びですね。

鷹木はどうにもオスプレイ相手には先頭を譲るイメージがありつつも、それでも猛追し、勝利するのが鷹木信吾という男であり、力で上回る外国人選手相手に勝つあたり、この後半はオリンピッククラスですよ。伊達に和を背負っているわけではありませんし、オスプレイvs鷹木は国別対抗戦の空気があるのが個人的には一番好きなところです。







大阪二連戦。初日から凄まじい試合を叩き出してきましたね。今回は連続更新なので挨拶も控えめに二日目にいきましょう。ではでは。