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豪華装丁の諸星大二郎本を楽しむ

本日は2020年7月6日。諸星大二郎先生のお誕生日です! そして今年は諸星先生デビュー50周年。めでたい! めでたいということは今後、記念碑的な豪華本が出ちゃったりするのか…!? などと妄想してしまいますね。というわけで、今までに出版されている諸星大二郎単行本の中から「装丁が凝っている本」を語ります! ※装丁用語などが間違っていたら申し訳ありません。

コミック叢書SIGNAL「MUD MEN 最終版」ほか

出版社:光文社 判型:A5判ソフト 造本・装丁:高橋聡

カバーはマットで軽くエンボスの入った手触りのいい紙、書名などにエンボス加工。本体表紙もカラー印刷。帯はツヤツヤです。
本文の紙質も申し分なく、コントラストがはっきり出てペンタッチがよくわかる。黄変してくる気配もないのがうれしい。
カラーページも多数あり、解説も付されているため資料的価値も十分にあります。

クラシカルな装丁なのですが、遊び紙(?)がやたら光沢ばりばりなのが個性的です。黒Verと白Verがある。マッドメンの場合、オモテ:光沢ばりばり(黒)、ウラ:マットかつメタリック(シルバー)という変わった紙が使われています。写真ではわかりづらいのですが……。

光文社SIGNALシリーズの一番の特徴は重いこと!物理的に。上質な紙を使っている証拠ですね。マッドメンとか470ページ以上あるので、ちょっと気軽には読めない感じはあります。特別な読書体験を得られるってことですね。

『海神記』上下巻、『巨人譚』、『MUD MEN 最終版』、『諸怪志異 伝奇編・阿鬼編・燕見鬼編』の8冊刊行されている。合計金額14,467円(税抜)。

※小ネタ:同叢書の『2001夜物語 原型版』は2008年に造本装幀賞で部門賞を受賞したとのこと。めでたい。

諸星大二郎自選短篇集「幻妖館にようこそ」プレミアム版

出版社:MANGATRIX合同会社 判型:B5判 装丁:関善之 VOLARE inc

諸星先生画業40年超を記念して2019年に発売された豪華版。私はクラファンで入手しましたがのちにAmazon等でも取扱いがあった模様。8,800円(税抜)。 

プレミアム版は世界最高峰の日本の製紙技術が生んだ特殊紙パチカを採用。
装丁・造本にこだわりました。
デザイナーの関さんオススメの特殊紙パチカに惚れ込んでしまったために、かなり苦労しましたが、プレミアム版は素晴らしい本になったと自負しています。
ーーー画業40年超記念 漫画家・諸星大二郎自選短篇集「幻妖館にようこそ」出版計画|マクアケ - クラウドファンディング
※ パチカの素晴らしさは開発元 (株)竹尾の解説ページがわかりやすい。

ハードカバーの黒い表紙に書名等はデボス加工、そしてパチカが貼り付けられているという特殊な装丁。パチカは独特な素材感です。

なんといってもB5判なので細かい書き込みもよく見える! 初期作品の生々しいペンタッチも、グリムものの繊細な表現も、じっくり味わい尽くせるサイズ感です。
関義之装丁の特徴のひとつに癖のあるフォントを起用することが挙げられると思うのですが、この本でのセレクトも素敵です。もちろん本文の紙質も最高級。吸い込まれるような黒が美しい。

星野之宣先生の「MILKY WAY」も同じデザインなので、書棚で2冊並べると実にうっとりします。

愛蔵版「暗黒神話 完全版」

出版社:集英社 判型:A5判変型 ブックデザイン:祖父江慎+藤井遥(コズフィッシュ)

函入りハードカバーで3,200円(税別)はむしろ安い。
その函がまた素晴らしいのです。梵字を通して本体が見えるのもかっこいいし、函だけの状態だと裏地の赤が新たな装いを見せます。表・裏ともに二種類のシルバーで印刷がされていて角度を変えて眺めるのも楽しい。白っぽくてメタリックなシルバーと、沈んだ感じの銀の表情がどちらもいい。表紙にあたる面には黒のクリアコート部分が艶めきを与えています。

函の天地にも印刷が入っているのは珍しい気がします。

本体表紙は黒ベースですがさし色が効いていて、スピンが赤、書名等エンボスと花布(はなぎれ)が金という大変かっこいい配色です。布装丁の上に黒のマット紙を重ねて貼るという高級感のある仕上がり。この紙、黒地に銀の印刷なのか逆なのか、私にはとんとわかりません。当然のごとく表3面にも印刷があるけどもう驚かない。

遊び紙の次のページにはニヤリとしてしまう演出があるのですが、これは買ったひとだけのお楽しみですね。

そしてなんといってもこの版ならではの特徴は、既存ページも銀インクでの演出が加わっていること! そして最終章では本文の紙も変えられ、圧倒的な読後感をもたらします。

銀インクオオナムチ様!(写真が下手なんじゃない。本が良すぎるだけなんだ)

もちろんカラーイラストを収録したページもあるのですが、これに関しては黒の紙の上に印刷されているため、一般的なものとはやや異なる色合いになっています。それもまたかっこいい。

おわりに

装丁のいい本は見ているだけで……いや、本棚にあると思い浮かべるだけで心が豊かになりますね! じっくり眺めると愛着もひとしおです。

ただ部数が絞られている場合も多く、タイミングを逃すと入手できないのがつらいところです。お財布と相談しながら良いモロ☆ライフを送りましょう!

かくいう私は2001年集英社刊の「自選短編集Ⅰ 汝、神になれ 鬼になれ」「自選短編集Ⅱ 彼方より」(文庫版じゃないほう) およびホーム社版の「暗黒神話 完全版」は持っていないのでレビューできず…。無念! 自選短編集は関さんによる凝った装丁っぽいので気になっています。

諸星先生、お誕生日おめでとうございます! これからも末永く執筆を続けられることを心よりお祈り申し上げます。どうぞお健やかに。

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