見出し画像

新コロで売上がゼロになった会社が、オンラインの新プログラムを作って大学に採用された話

こんにちは。新型コロナウィルスでいきなり売上がゼロになった会社の社長でございます。

画像1

我々は、海外インターンシッププログラムを運営しており、カンボジアやタイ、インドやスリランカで、日本の大学生にビジネス体験をするというプログラムを運営しておりました。

2020年3月、売上がゼロになる

2020年1月の段階では「中国の風土病」レベルだったため、2月からの春休みプログラムを滞りなく実行。私は、1/31にカンボジア入りして、そのままずっと首都プノンペンにおりました。

カンボジアでは感染はほぼ発生しておらず、特に何事もなく月日は流れていったのですが、3月になると欧米での感染が拡がりはじめ、世界的大問題になりはじめました。

画像2

引き続きカンボジアでの感染はほぼなかったのですが、航空機の減便が始まり、このままいくと参加者の帰国が危うくなる恐れがあるということで、3月12日に全プログラムを停止することを決め、3月15日までに全参加者を、3月17日までに私を含む全スタッフを帰国させることにしました。
(ちなみに、全額返金。飛行機にキャンセル料がかかった人は半額負担してあげる大盤振る舞い)

そこから、3月後半およびゴールデンウィークのプログラムは中止が決定。
さて、どうしたもんかという話になります。

画像3

幸いなことに、日本の飲食店やホテルなどと比べれば固定費は少ないため、売上ゼロでも1年くらいはどうにかなるということがわかり、1年間仕事がないことを前提にやることを考えました。


自社のプロダクトを把握し、リアルよりグローバルなオンラインを発見する

さて、新しい事をやると言っても、今までやってきた事と親和性がないと意味がありません。
我々が提供してきたプログラムの特徴はこの3つです。

1.日本の大学生・高校生を異文化に放り込み、ビジネス体験をさせる
2.ビジネス体験に必要な知識を講義する
3.体験した結果を今後のキャリアに繋げられるよう、キャリア教育を行う

リアルに海外に行けなくなる中で、提供できないのは、1
2,3に関してはオンラインでも問題なく提供することができます。
そこで、1をいかに提供するかを考えました。

ちょうどその頃、グループ企業のスパイスアップ・ジャパン(企業向けの研修プログラムを提供してます)が、とある金融機関でオンラインのプログラムを提供しました。
Mission Global Onlineといって、オンラインのコミュニケーションツールを使って世界中の人たちにヒアリングを行い、ビジネス課題の解決策を考え、提案するというプログラムです。

画像4

実際やってわかったことは、オンラインは、海外インターンよりもグローバルであるということです。

カンボジアのカレー屋を体験する、サムライカレープロジェクトは、異文化体験ではありますが、カンボジアローカルビジネスを体験するプログラムです。
しかし、オンラインのコミュニケーションツールでヒアリングをする相手は、本物のグローバル。実際、参加者は、総計30カ国以上の人たちからヒアリングを行いました。

画像5

オンラインは、オフラインの代替ではなく、そこに独自の価値があることがわかったのです。

50人にヒアリングして、顧客および市場のニーズを分析する

さらに、非常事態宣言がはじまった4月から一般企業でも在宅勤務が行われるようになりました。

画像6


私は、20年前から外資系企業で在宅勤務を経験していましたし、日産で厚木の山奥から海外事業所のスタッフと一緒に仕事をしていました。起業してから、コロナ前も1ヶ月に1回くらいしか出社をしてなかったので、在宅勤務に違和感はありません。

が、初めての在宅勤務に戸惑っている人もたくさんいたので、在宅勤務をしている知り合いにオンラインで話を聞かせてもらい、在宅勤務に必要なスキル、今困っていることなどを聞きました。

画像7

また、就活がヤバくなることは明確でしたので、自社プログラムの卒業生の中で、既に就活をしている大学四年生およびこれから就活を始める二、三年生50人にヒアリングを行い、現在の状況や、不安に思っていることを聞きました。

これらのヒアリングからわかったことは
・リモートワークにはそれ相応のスキルが必要
・就活は、企業もどうしていいかわかっておらず、学生も困惑している
・海外インターンを体験した学生は、就活も順調で、意外と困っていない
ということでした。

つまり、今までどおり、海外ビジネスを体験し、就活の準備を提供すれば、withコロナ、postコロナの就活も対応できる。
そこに、リモートワークでの働き方のノウハウを身につけてもらえば、さらに企業からの評価が上がる。ということになります。

これを踏まえて、プログラムを設計していくことにします。


オンラインで何のビジネスをやるのか問題

オンラインで学生に教育する内容はすんなり決まりました。
オンライン会議の議事録とり、コミュニケーションサイトを使っての全世界へのヒアリング、顔を合わせないメンバーのチームビルディング、外部の人への業務委託、リアルな成果の達成。これらに必要なスキルを伝え、すぐに実行することで、オンラインで世界を相手にビジネスをしたという実績を作ってもらうわけです。

画像8

ただ、最後まで悩んだのが「何を目標にするか?」です。

我々のプログラムは、いわゆるスタディツアーと違って、リアルなビジネスを行い、現実にインパクトを残してもらう事を目標としています。
つまり、お金を稼ぐ/使う、誰かを喜ばせる、何かを動かす。
質問のための質問をして、現地の人と交流して、満足みたいなことはやりません。

画像9

オンラインで、なんのビジネスをやるか?
クラウドソーシングを使って人を雇ってWebページを作る、海外で商品を探してきてクラウドファウンディングを使って売るなど、いろいろなパターンを考えましたが、短期間で成果を出すのは難しい。

ここまで順調だったのが、最後に壁が待っていました。

ここはじっくり時間をかけ、さらに多くのヒアリングを行い、自分たちが持っている手札を検討し…とやっていたら、ふと、半年前にグループ企業がリリースしたマンガアプリ「Manga VAMOS」を思い出しました。

画像10

素人が漫画を投稿し、みんなに見てもらうアプリ。
しかし、スペイン語専用。

日本を代表する商品であるマンガ。
オンラインで完結する、アプリ。
そして、強制的に外国人とビジネスをしなきゃいけない、スペイン語専用。

このアプリのプロモーションを課題にすればいいじゃないですか!


実際に実行しながら、水面下でプロモーション

ここまで来れば、プログラムは完成したも同然です。
しかし、海外ビジネスは想定外の連続であることは、7カ国でビジネスをやっている事業者として痛いほどわかっています。
やってみなきゃ、わからないことだらけ。

じゃあ、やるしかないじゃないですか!

画像11

海外インターンシッププログラムの卒業生に声をかけ、プログラムを体験してもらうことにしました。
当初予定していたよりも多くの学生が参加を希望してくれたため、予定より多い9人でプログラムを開始。

今までの海外プログラムの研修資料をオンライン用にリニューアルしながら、Zoom,LINE Open Chat,Google Drive,Speakers Deckなどを駆使して、オンラインで仕事をできる環境を整えます。

画像12

と、同時に、このプログラムの進捗を、リアルタイムで、今まで海外インターンシッププログラムを採用して頂いた大学の教職員の方に共有します。

オンラインの海外インターンシップなんて、誰もやったことがないので、どんな成果が出るかわかりません。
ならば、実際に成果が出ている様子を見てもらうのが一番のプロモーションなわけです。

問題は、本当に成果がでるのか?
我々のプログラムは、仕込みなしでガチで知らない外国人に声をかけたり、リアルなアプリのPVをGoogle analyticksで計測したりするので、ごまかしが利きません。

画像13

本当に成果がでるのか?不安な面もあるのですが、そこは参加してくれた学生と、自分たちのカリキュラムを信じるしかありません。

結果的には、無茶苦茶な成果を出してくれました。

成果と採用

・メキシコ人Youtuberを掴まえて、紹介動画を作ってもらう
・コロンビア人漫画家を掴まえて、自作のマンガを投稿&宣伝してもらう
・7通りのFacebook & インスタ広告を出して、ABテストをした上で、広告を打つ

そんな施策を打ち、メキシコとコロンビアからのアクセス数を約10倍にアップすることができました。

学生にとっても、
・見知らぬ外国人にオンラインで声をかけて、ヒアリングができた
(そして、マンガの話をすると、すごく喜んでもらえた)
・スペイン語の相手と、Google翻訳やDeepL翻訳を使って会話、交渉ができた
・外国人Youtuber、漫画家と対等にビジネスを行えた
・企画書を作り予算を獲得し、その予算を使って目標を達成できた

という、リアルなビジネスを体験するまたとない機会になりました。

この内容を踏まえて、以前よりベトナムプログラムをご採用いただいていた(そしてそのプログラム参加学生が2017年学長賞を取った)追手門学院大学が、夏休みプログラムとして採用していただくことができました。

これは、
リアルなビジネスをやることで、自分に自信をつけてもらうプログラムを、
リアルにプログラムをやっているところを見てもらうことで、内容を納得してもらう
ということで、実は、学生がやっていることと、我々がやっていることは相似形なんです。

お客さんにヒアリングをして、内容を練って、製品を作り上げて、プロモーションするところも一緒。
だから、我々は学生に効果的に指導ができるし、学生も納得感を持ってビジネス体験をできるわけです。


最後の課題

ただ、まだ、課題は残っています。
オンラインのビジネス全体にいえる課題なのですが、オンラインはリアルよりも優先順位が下がるということです。

画像14

カンボジアにきて、そこで寝泊まりしていたら、カレー屋をやる以外の選択肢はありません。
しかし、自宅で、オンラインでプログラムを受けていても、他にできる事は山ほどあります。
それゆえに、課題が後回しになり、調査が足りなくなることがありました。

また、オンラインであるが故に、チームメンバーとの交遊ができず、チームの一体感がなかなかできないという問題もあります。

画像15

これをどう解決するかが現在の課題。
そして、この課題は、今、在宅勤務を推奨している全ての会社が持っている課題と一緒です。
これを解決することが出来、その方法を学生に伝えることができれば、学生の即戦力度がさらに上がることになります。


そんなわけで、どうにかこうにか、成果を出し、ファーストカスタマーにご採用頂く事まではできました。
あとは、この成果を地道に広報していき、より多くの大学および個人の参加を促していくことができれば、たとえコロナがおさまらなくても、会社としてやっていけそうです。

大切なことは
・お客さん(Customer)は何を求めているのか?
・自分の会社(Company)がなにができるのか?

を明確にし、やるべきコトをみつけることです。

マーケティング理論的(マーケティングの3C)には、これに競合(Competitor)の事を考えるのですが、幸いなことにオンラインインターンシップにはまだ競合がいません。

画像16

なので、引き続き、道なき道を切り拓いていくことになりますが、それは、カンボジアのカレー屋インターンシップでも、スリランカの広告代理店インターンシップでも一緒でした。

そして、我々のプログラムに参加した学生には、我々と同様に道なき道を切り開くことができるビジネスパーソンになって欲しいと思っています。

そんな人が、ポストコロナの日本で一番必要な人材になるはずですから。


関連記事

画像17


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?