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VRクラウドのスタートアップ経営で感じたSaaSビジネスでよくある17の間違い:前編

どこでもかんたんVRのクラウドソフト「スペースリー」の森田です。これまでのVRクラウドのスタートアップ経営の経験を踏まえてSaaSビジネスで注意するポイントをまとめます。この記事は、主にこれからSaaS事業を始める方、また、初期段階のSaaSの会社へ転職を検討されている方です。

あくまで私見ですが、SaaSを少しでも正しく理解いただく助けになれば幸いです。はじめに考え方の前提をお伝えします。

まず、スペースリーのプロダクトはイシュードリブンのSaaSと言うより、テクノロジードリブンにスタートし、個別のイシューにいち早く気づき、対応して形になっていったプロダクトアウト的なものです。また、月額単価は数万円程度がボリュームゾーンで、SME向けSaaSと言えます。

そして研修分野ではHorizontal SaaSの要素、不動産住宅分野ではVertical SaaSの要素の両方が混在している事業です。これはスペースリーの特徴の一つとも感じており、SaaS事業ごとでの個別要素の違いは出てくると思います。

スペースリーは2016年11月にローンチし、2019年6月にシリーズAの資金調達をしており、不動産分野を中心にプロダクトマーケットフィット(PMF)した領域があるというフェーズです。現在、30人ほどの組織規模であり、初期の段階にあります。

このような状況を前提とし、今回は前編として全般とマーケについてまとめています。別記事(後編)でインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスについてのよくある間違いをまとめます。

事業全般における間違い

1. ソフトウェアでSaaSは万能な事業モデルだ

そんなことは無いです。アップデートがあまり必要無いシンプルなクラウドソフト、CSでさほど打ち手が無い事業だと、売り切りの方が顧客負担は軽くなりますし、適しています。また、個別顧客で求めるものが違いすぎて一般化できないソフトウェアを無理にSaaSにしようとするのももちろん間違いですね。

2. プロダクトがようやく完成!!

SaaSのプロダクトに完成は無いです。常に生き物のように進化します。そして、何より拡張性を前提にして、全部門の人が顧客と対話したり、将来を語ったり、またプロダクトに対してフィードバックを常にする体制、改善する体制を土台に進化していくことが大事になります。また、将来を考え、事業者がまだ気づかず、出てこない機能を開発に反映することもあり、その優先順位を考えるのもプロダクトオーナーやエンジニアにとって重要です。

3. 急成長すると事業が黒字になる

一般に急成長時はSaaSは赤字になります。長期回収のモデルなので、顧客獲得が急激に増えている時は獲得コストが増えるのと、プロダクトへの投資は続くので赤字となるのが自然です。それを覚悟した事業展開が成長のためには必要なので、理解あるVCからのファイナンスがとても重要となる分野です。

4. マーケやIS、FS、CSの分業体制がスケールする上で重要だ

もちろん組織として分業して協業は大事ですが、体制自体にはあまり拘らない方が良いと思います。単価や事業のフェーズ、プロダクトの特性で、組織自体を常に見直しながらで、組織体制自体よりも、土台として部門横断で良いことも悪いことも、過去の記録も蓄積し共有をするのが当たり前の組織文化がスケールする上でより重要なことになると思います。

5. MAツールやCRMツールでどれを導入するか悩む

よく使われているツールであればあまり悩むものでは無いと思います。導入ツールよりも、運用ルール作りと徹底の方がよっぽど難しく、重要です。活用しきれるかどうかで成果は大きく変わるものです。ここは4.と同様、適した組織文化や仕事の仕方が土台にあることが必要ですね。

6. SaaSはクラウドでセキュリティ面が心配と言われたからオンプレも用意

悩ましいですが、このような顧客の優先順位は低くして対応はせず、SaaSの適した顧客にフォーカスするべきかと思います。逆にこれを悩むのは、良いリードが十分にいない状態とも言えます。過去何度かオンプレにできないかと大企業から言われることがありました。こういう企業のシステムをクラウドにアップグレードするよう促すのもSaaS事業展開の上で大事かと思います。

マーケにおける間違い

7. すぐに商談につながらないリードはいらない

限られたマーケ予算の中での優先順位としてこの考えは分かります。ただ、そもそもSaaSは、リード獲得後、ナーチャリングプロセスでプロダクトや活用方法などより知ってもらって、あるタイミングでプロダクト検討に入るホットな状態に持っていくプロセスが前提にあります。

このため、その後のナーチャリングプロセスのことや資金の状況などを踏まえ、マーケ担当と経営管理をする人たちで、すぐに商談につながらないリード獲得方針における考え方の摺り合わせが重要になります。

8. オンラインマーケのSEO/SMOでリード獲得コストはまだまだ下がる

そもそもSaaSの場合は検索クエリーが少ないという前提があります。このため、SEO/SMOでリード獲得コストを下げるという視点だけでは早々と限界が来るものと思います。SNSのオンラインマーケ、広報でそもそもの認知拡大も綿密に組み合わせての打ち手が重要です。SaaSマーケの難しくも面白いところの一つでもあると言えます。

また、成功事例の発信は当然ですが、それだけでなく、新たなマーケメッセージの切り口は無いか、新たなペルソナの設定、新たなリード獲得方法など、広い視点で常に試行錯誤を繰り返すことが必要になります。

前編の終わりに

この記事では17個のうち8個をお伝えしました。いかがでしたでしょうか。残り9個は後編でお伝えします。ぜひそちらもご覧いただけたら嬉しいです。

ここにあるのは、あるべき論的なもので、このような考えを踏まえて各々の状況に適用し、都度方針を考え、意思決定するきっかけにしてもらえたら嬉しいです。私の母校の一つでもあるシカゴ大学のビジネススクールの教育哲学に以下があります。「SaaSビジネスでよくある間違い」まとめが、皆様の"How to think"の一つとなれば嬉しいです。

Transform Your Thinking:
“With The Chicago Approach, we try to teach people how to think. It’s not the direct knowledge, per se, that we’re conveying. It’s teaching people how to evaluate evidence, how to have a framework where you organize thoughts, how to think about problems in a way that is somewhat universal.“
(和訳)“シカゴアプローチでは、私たちは人々にどのように考えるかを教えようとしています。私たちが伝えているのは、直接の知識そのものではありません。証拠を評価する方法、思考を整理するフレームワークをどのように構築するか、やや普遍的な方法で問題について考える方法を人々に教えることです。“
—John Huizinga, Walter David “Bud” Fackler Distinguished Service Professor of Economics

さて、スペースリーでは、エンジニア、デザイナー、マーケ、FS、CS、幹部候補と一緒に働くメンバーを全方位で募集しています!ちょっとでもご興味持っていただけたら以下のページもご覧いただいて気軽にご連絡ください!




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