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イラストレーターの宣伝・営業術10 《Apple社のTVCM「Think Different.」》

先日、Apple社の時価が、史上初めて3兆ドルを超えました。
世界で最も価値の高い企業の一つと言っていいでしょう。

しかし、私が若い頃は「Apple社は、近いうちに倒産しそうだ」と噂されていました。

今回は、倒産寸前と言われていたApple社をリ・ブランディングし、世界有数の大企業へと成長させた、伝説のCMを紹介しましょう。

(※この記事は、『イラ通・スクール』の講義《宣伝・営業術10 ストーリー06 Apple社のTVCM「Think Different.」》を一部修正して、転載したものです)


■ 「Think Different.」

今では伝説的経営者となっているスティーブ・ジョブズ氏が、1990年前後、Apple社を追い出されていたことはご存知でしょうか?

Apple社を解任された彼は、ピクサー(『トイストーリー』などのアニメーション会社)のCEOに就いていました。

そして1995年、Windows95が発売され、大評判となります。
「パソコンといえば Windows」の時代が始まったのです。
Apple社は、売り上げが激減し、倒産が危ぶまれていました。

その倒産しかけていた Apple社に、スティーブ・ジョブズ氏が復帰します。復帰後、まもなく世に出したのが、TVCM「Think Different.」でした。
1997年のことです。


クレージーな人たちがいる。
反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。
四角い穴に丸い杭を打ち込むように、物事をまるで違う目で見る人たち。
彼らは規則を嫌う。
彼らは現状を肯定しない。
彼らの言葉に心を打たれる人がいる。
反対する人も、称賛する人も、けなす人もいる。
しかし、彼らを無視することは誰にもできない。
なぜなら、彼らは物事を変えたからだ。
彼らは人間を前進させた。
彼らはクレージーと言われるが、私たちは天才だと思う。
自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから。

ただ、ジョブズ氏の「価値観」を語っているだけの内容です。
商品の説明や紹介は一切ありません。
つまり、「ストーリーの8パターン」の「1. 自分の志、情熱、想い、価値観を語るストーリー 」です。

私がそのTVCMを初めて観た時の衝撃は、今も忘れられません
スティーブ・ジョブズ氏本人の肉声に、私の魂は、大きく揺さぶられました。
「人の心を惹きつけるストーリーのコツ 」の2つ目「共感を得られる内容に」なっているわけです。
「クレージーな人たち」という一つのことに絞った内容です。
これは、コツのの3つ目「シンプルに 」です。

さらにはーー
6つ目の「ありがちにならない」
7つ目の「嘘をつかない」
8つ目の「実績を語らない。あくまでストーリーを語る」
9つ目の「自慢話はしない。偉そうにしない。マウントを取らない」
10個目の「宣伝はしない」
など、多くのコツに当てはまります。

「クレージーな人たちを称賛する」という、斬新な切り口はーー
コツの11個目「切り口、見せ方を工夫する」です。
これは、ジョブズ氏の内面を打ち明けた言葉です。
つまり、12個目のコツ「自己開示」です。

「彼らはクレージーと言われるが、私たちは天才だと思う」
という文章ではーー
16個目のコツ「ギャップ効果」も使われていますね。

このCMで特に効果を上げているのは、「モハメッド・アリ」「ピカソ」「アインシュタイン」などといった具体的な天才たちの映像です。
こうした解像度の高い例が、ジョブズ氏の言葉に説得力を持たせています。
コツの5つ目「解像度を高める」が使われているわけです。

「人の心を惹きつけるストーリーのコツ」を忘れてしまった方は、こちらで復習しておきましょう。
イラストレーターの宣伝・営業術07 「ストーリーのコツ20」|プロ・イラストレーター団体「イラ通」 (note.com)

「Think Different.」の翌年、Apple社は iMac を発売します。

『Wikipedia』(https://ja.wikipedia.org/wiki/IMac)より

このかつて誰もみたことがなかった一体型デザインのパソコンは、空前の大ヒットとなりました。

その後も次々と革新的な製品を世に出し、Apple社の快進撃が始まります。その快進撃はその後も衰えを見せず、ついに時価3兆ドル越えという偉業に繋がってゆくのです。
「Think Different.」は、その快進撃の起点となった記念すべきTVCMといえます。

私のパソコンはMACです。
スマートフォンはiPhoneです。
デジタル機器の多くをApple製品で統一しています。

私がApple製品にこだわる理由はーー
「ジョブズ氏の志に胸を打たれて、ファンになったから」なのだと思います。

私と同じようなApple信者が世に多いからこそ、Apple製品は他社製よりもお高いにもかかわらず、しっかりと売れているわけです。

もしもジョブズ氏が、CMで自身の思いを語らず、Apple製品のスペックを語っていたとしたら、どうなっていたでしょう?

Apple社は、とっくに倒産していたかもしれません。
製品スペックに心を揺さぶられる人は、ほとんどいないだろうからです。

このTVCMが人々の心を揺さぶったのは、「製品スペック」ではなく「体温を保つジョブズ氏の熱い思い」を語ったからなのです。

そして、心を揺さぶられた人々がApple社のファンとなり、その製品を継続的に使い続けることにつながって行ったのです。

「ストーリーが共感を呼び、ファンを作り、応援されるブランドになる」
という、ブランディング成功の見本のようなCMなのです。

皆さんも、何かの思いを込めてイラストレーションを描いているのなら、それをストーリーで語ってみましょう。 あなたの思いのヒントは、「自分軸」「4つの武器発見ノート」「イラ通式・マンダラチャート」にあるはずです。

もう一度振り返って、考えてみましょう。

イラストレーターの宣伝・営業術04 《イラ通式 マンダラ・チャートで自分軸を見つけよう》|プロ・イラストレーター団体「イラ通」 (note.com)

イラストレーターの宣伝・営業術03 《5つの武器発見ノート》|プロ・イラストレーター団体「イラ通」 (note.com)

イラストレーターの宣伝・営業術04 《イラ通式 マンダラ・チャートで自分軸を見つけよう》|プロ・イラストレーター団体「イラ通」 (note.com)


イラストレーション発注者の魂を揺さぶることができたなら、きっとあなたのファンになり、仕事の発注につながると思います。


■ ジョブズが Apple 社員向けに語ったマーケティング戦略

TVCM「Think Different.」が放送される前に、スティーブ・ジョブズが社員向けに Apple のマーケティング戦略について説明している動画があります。

ここで語られていることが、TVCM「Think Different.」につながっているのです。

ぜひ、こちらもご覧ください。


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