アルミの乗り心地
ぼくはロードバイクが好きです。
あのハンドルが特別な形をした、車輪が異常に細い、スポーツ用のやつです。
社会人になって仕事がうまくいかなくて、どうしようもなく煮詰まっていたときに、先輩が誘ってくれて始めました。
ぼくが乗っているのは、giosというイタリアのメーカーの、アルミ製のロードバイクです。
ロードバイクはその素材によって、大きく乗り心地がちがいます。
もっともクラシックな素材=鉄(正確にはクロムモリブデン、略してクロモリと言います)は、柔らかく、優しい乗り心地です。
いま主流の素材=カーボン(炭素繊維です)は、その織り方によって個性があるようです。いろいろ乗ったことがあるわけではないですが。
ぼくが乗っているアルミは、非常に硬い。
かたーい乗り心地です。
ロードバイクのタイヤは、カチコチになるまで空気を入れるので(だからパンクしやすい)、路面からの衝撃をほとんど吸収しません。
だからその衝撃をフレームが如何に吸収するかで、乗り心地が違ってきます。
鉄は、硬いようでいて、実はある程度の弾力性を持っています。
いっぽうアルミは、その弾力性というものがほぼない。
ぼくの自転車はそんなに良いものでもないので、その硬さは際立っています。
アスファルトのジャリジャリや凸凹を、このアルミのフレームは余すところなくハンドルに伝え、それをぼくの手首、腕、肩、首から脳天まで、ダイレクトに届けてくれます。
しかもハンドルのリアクションにぜんぜん遊びがないので、本当に微妙な動きも左右にダイレクトに振ってくれます。
本当に、優しくない乗りものです。
ところがぼくはコイツが大好きです。
そもそも最初に買ったロードバイクがコレで、ほかは知りません。試乗会なんかでいろんなやつに乗ったりしますが、やっぱり最初に買ったコイツのほうが良い。
「ごまかしナシ。お前の運転が直にアクションする。路面の状態をそのままお前の脳天に届ける。」
そんな感じの自転車です。
ぼくは修飾語が少ない文章が好きだし、音楽も音数(おとかず=楽器や打ち手の多さ)が少ないものが好きです。凝ったレトリックや絶妙な複線回収で魅せる文章、音圧(おんあつ=音の圧力)で勝負するギターロックなどは昔から苦手です。
大げさな言い方をすれば、それはぼくの生き方に反する…とまで思ったりします。
飾りは少なく、音数少なく、ダイレクトに。
ごまかしはナシ。批判も直に浴びる。
そういう生き方をしたいなぁ、と常々考えています。
社会人になると、ついつい、「ガワ」の部分が厚くなって、「中身」が乏しくなってきます。自分を試されたり、批判を直に浴びたくないからですね。
でもそういう大人って、見たらわかるじゃないですか?「あぁこの人は、つまらない大人だなぁ」と。
社会人2〜3年目からこの感覚は薄れてきます。
「こう生きたい」という理想より、「目の前の仕事を遂行する」ことで精一杯になるからです。
そういう時期はあって然るべきだと思います。頭デッカチで仕事ができない人じゃダメですよね。
でもある程度もがいて、少し視界が開けたときに、「ガワを厚くする」方向にいくんじゃくて、「中身で勝負する、批判されることを恐れない」方向にいくかどうか。ここに分かれ道があります。
9割の人は前者の道をいきます。
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