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【ざっくりのレシピ】Aさんのネギの豚バラ巻き 丁寧に生きている人のこと

この人の忠告なら、頑固な自分も素直に聞いてしまう、という人がいる。Aさんは私にとって、そんな人。

①ネギは包丁で斜めに細かく切れ目を入れる(片面ずつ入れる。縦も、とAさんは言っていたけど、縦横に切れ目入れるとボロボロになるので私はやめた)

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②バラ肉で巻く

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③すりおろした生姜、醤油、お砂糖、味噌ちょっとでタレをつくる(お酒を入れるとのばせて具全体にかけられるので、勝手に追加。)

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④つくねも入れてフライパンで焼き煮てから3cmに切る(つくねはなかったので入れなかった。)

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ポイント ネギは太いのがよい。細いネギなら2本まとめて巻く。白いところだけ使う。④は「TVではレンジでもできるいってたけど、私はフライパン派」とAさんは言っていた。


Aさんは母の助産院で賄いのおばさんをしてくださった女性である。60才違いで私と同じ干支。この日は、ひさびさにAさんを訪ねた。ふかした芋をいっしょに食べましょうと。

電話してから訪ねたものの、ほぼいきなりの訪問にもかかわらず、Aさんのお宅はとても美しく整えられている。掃除が行き届いた、必要なものが使いやすい場所に、きちんと並んだ様子に、背筋が伸びる。

「電話の声が違う人みたいだったから、何度も確認しちゃったのよ。会って声を聴いたらそうでもないんだけど。」

Aさんはニコニコしながら、お茶を入れてくださる。前回来た時より白髪は増えたようだけれど、幾分顔色がよくなっていて、ほっとする。

「○○さんはお元気なんですか?」

○○さんというのはAさんのご友人の農家さんだ。以前はよく、Aさん経由でお野菜をいただいていた。

「ええ、あの人はまだ畑に出ているよ。今年で95才だって。元気だね。この間、バレンタインでチョコレートを渡したら、お礼に娘さんがお菓子を買ってきてくれたのよ。これがそのときのお菓子。沢山あったから、一部は娘さんに持って帰ってもらったの。この辺じゃ買えないから、お孫さんにって。」

Aさんは自分がもらったものを、独り占めにしない。食い意地の張った私にとってはかなりの修行なのだけど、私もそんなひとになりたい。というかしばらくバレンタインにそういうことしてないや。来年はしたいな。

「○○さんの畑でとれたネギで、肉巻きをつくったのだけど、食べる?太いネギで、美味しいのよ。」

「いただきます!」

気候変動を肌で感じるようになって、肉の消費は減らしているけれど、こういうときはいただく。というかイラン旅以降はかなり肉食べてる。やっぱり肉を食べたい欲求がある、と気づいたので、はやくイノシシとか鹿を獲って捌ける技術を身につけたいところ。

「食べるものは手抜きしたらだめ。美味しいものができない。
自分で作って、じぶんで安心して食べるの、それが一番。だから私はほとんど外食もしないねぇ。」

外食大好きな私もAさんの肉巻きを食べていると、同意しかない。これは外食に入りますか。

「あなたも、食べるだけじゃだめよ。美味しいもの食べたら、自分で作れるようにならないと。」

「はい!帰ったら早速作って、母と食べます。」

私は、レシピを聞いても作らない(この変化形でアドバイス聞く癖に実行しないってのもある)ことが多いのだけど、もう、それは卒業しよう。

じぶんで作れたら、いつでもAさんの味に会えるから。ほかの、今はもういない、美味しい料理を作ってくれた人たちを、その料理を通して感じることができるから。

「わたしなんて年金全部使っちゃうよ。
やたらに貯金ばっかりすると、おかしくなっちゃう。
お金は元気にしてくれるからね。」

お金は元気にしてくれる。外食もしないAさんのお金の使い道は、たぶん、ほとんど周りの人の笑顔のためだ。それは、周りの人もAさん自身をも、元気にさせる。私は、ほぼ自分のためにお金を使っているけれど、そういう使い方を意識して始めてみよう。


Aさんはネギの肉巻きを頬張る私を見つめながら微笑んだ。

「恋は盲目、お母さんの遺伝子あるから気をつけて。 悪い虫がつかないようにね。お母さんより幸せにならないと。」

母は恋愛で痛い目を見たことがある。そんなことも、「家政婦は見た」じゃないけど、賄いのおばちゃんはなんでもお見通しなのだ。

「はい!気を付けます!お母さんより幸せになります。いい人ができたら、紹介するので見極めてくださいね。」


人生で大切なことを、Aさんはたくさん教えてくださった。

掃除のしかた。例えば、台所の水道の付け根の汚れは、爪楊枝でとると傷がつかないこと。

仕事のしかた。例えば、全部私の仕事、と思えば他人がやり残してたり、押し付けられても腹を立てなくてすむこと。

年の重ねかた。例えば、一日の始めにお風呂に入ると、そのあと体を動かしやすいこと。

暮らしかた。ふと見える、きちんと使いやすく整理された押し入れの中や冷蔵庫。こだわりの食器をつかっているとか、部屋に緑があるとか、そういう見栄えするのとは違う、ていねいな暮らし。若い時のように体が動かなくなっても、それを続けていること。付け焼刃ではないうつくしさ。

(3/30追記 別に見た目が美しくてもいい。急に訪ねたときのチラ見えレベルの場所まで整理整頓が行き届いている、自分以外誰も見ていなくてもそれをする、ところにほんとの丁寧さを感じた。自分や暮らしを、大切にするってそういうことなんだろう。)

そういう、生きる姿が圧倒的にカッコいいから、美しいから、Aさんの忠告は素直に聞くのである。今は全然できないけど、わたしも、いつかあんなふうになりたいから。

帰り際、Aさんはネギやらふりかけやらを持たせてくださった。例のホワイトデーのお菓子も。それは偶然か知っていたのか、母の大好物であった。(私は帰って母に渡してから知った。「リーフパイがある!!大好きなのよねえ!これどうしたの?」と少女のような喜びようだった。)

帰ってから、早速晩御飯のために作ってみた。Aさんにはかなわないけど、十分美味しかった。こうやって、自分で作れるものをふやしていきたいな。

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