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元自己中サークル代表が考える、組織運営における「皆のため」とは


「今までと同じでやっても、何も変えられねぇだろ!」

空き教室で行われる、いつものサークル定例会。

当時大学2年生だった僕は、声を荒げていた。

僕が当時所属していたのは、某4年制大学の、小さなアカペラサークル。

アカペラとは、楽器を一切使わず、声だけでバンド演奏をするというもの。プロだとゴスペラーズ、テレビだとハモネプが有名といったところか。

そんなサークルで、僕は2年生から代表を務めていた。

推薦や投票ではなく、立候補でだ。

なぜそこまでしたのか、目立ちたかったから?それもあるかもしれないが、一番はサークルを変えたかったからだ。

アカペラサークルは少し特殊で、他大のサークルとの結びつきがとても強い性質を持っていた。他大のバンドとともにブッキングライブに出たり、大会で戦ったりする。その中で知り合ったメンバーと大学問わずバンドを組むといったことも多い。                         そのような中で、外部への露出や大会の受賞が多いサークルは強豪、少ないサークルは弱小。というような定義化がされていった。

外部のライブで華々しく活躍する他大のサークルのように、自分の大学のサークルも同じステージに立ちたかった。立たねばならないと思った。   後から思うと、それが間違いだったのだろう。


当然の挫折

代表に就任すると、すぐに壁にぶち当たった。

自分はこうしたい!という意見があるのに、全くそれが通らない。それどころか、メンバーの信頼はどんどん離れていく。悪循環だ。

一番周りの意見を聞かねばならない代表が、一番発言していた。しかも、周りの意見などお構いなしにだ。それでは、メンバーがついてくるはずもない。

しかし僕はそれに気づかず、発言し続けた。今のサークルのすべてが悪いような言いぶりで、鼓舞をし続けた。新しい案を出し続けた。副代表にも、意見の相談を事前にしなかった。その結果、チームワークはグズグズ。先輩にも、「この代は仲が悪いね」といわれる始末だった。

後から聞くと、副代表は同期のメンバーに僕との関係を相談していたという。今思うと、本当に代表の器ではなかったと思う。

そんな日々が数か月続き、サークルで主催するライブのミーティングが行われた。僕は、演奏の質を上げるためにオーディションを開催したかった。しかし、他の同期からは反対も多かった。

「今までの、アットホームで居心地のよさがなくなるのは嫌だ!」

「強いところでやりたい人は、そういうサークルに行けばいい!」

とまでも言われた。ここまで言われると図太い僕も、さすがに心が折れてきた。


叱責と気づき

でも、そこで気づいた自分がいた。自分がやろうとしていることは、ただの独りよがりではないかと。自己中心的な行動ではないかと。そう思えたのだ。

組織に属する目的は、人によって違う。部活でも、サークルでも、はてまた会社でも。

「楽しくやりたい」

「勝ちたい」

「売上を上げたい」

「感動を届けたい」

それぞれの思いが入り混じってくる。

元々目標設定が明確にされ、入り口でメンバーを選別できている組織は強いし、回しやすい。方向性に迷いがないからだ。目的に疑問を感じた人は船を降りるように去っていくだけ。

しかし、強豪でない部活やサークルというものは、目標の設定が恐ろしく難しい。皆目標がはっきりしていないからだ。その中で、独りよがりではなく皆が満足するような目標設定や運営を行っていくこと、それが正しいリーダーの仕事であり、「皆のため」だ。

「勝ちたくなければ、勝たなくていい」

「楽しみたければ、楽しめる工夫を考える」

その一方で

「高見を目指す人も、挑戦できるような環境づくりを進める」

エンジョイ思考の人も、勝利主義の人も、どんな意見も、感情の変化も見逃してはならない。常に耳を傾け、考え、決められないことは仲間に相談する。誰よりも周りを見なくてはならないという責任感が生まれた。

気が付くと、自分単独の意見は、ここぞ!というとき以外使わなくなってきた。自分の理想を追い求めるより、皆の楽しむ姿が見たいと思ってきた。

これが本当の「皆のため」なのかな。そう思えてきた。

正直最初は不本意だったが、その繰り返しをしていくと、組織が固まってきて、組織の色が出るようになってきた。高い目標を目指すものも増えてきて、感化されるように後を追うものも目標を持つようになった。

行われるサークルライブのオーディションも、落とすためのオーディションではなく

「全バンド通るが、講評会として得点投票し、アドバイスを聞き手からフィードバックする」という形に話し合いの末変わった。

このころには

「強豪を目指し、外部に出れる実力をつける」

でも

「ただ楽しいだけの仲良しクラブ」

でもなく

「今のサークルの雰囲気を大切にしつつ、技術の向上も取り入れる。向上心のある人も活躍・満足できる環境づくり」

というような方向性に自然とシフトしていった。これは僕一人の働きではなく、運営代全員だからできたことだった。

楽しいものに対しては、もっと!という感情を人は持つものだ。まず、皆が幸せに、楽しめる環境を作らねばならなかったと心底反省した。

その後は、少しづつだが新しい試みも取り入れ、サークルは徐々に前に進んでいった。そんな中でも、仲間と過ごす毎日が、アカペラが楽しくて仕方がなかった。


任期満了後、思ったこと

そんな日々が続き、引退の日。

自分の当初の望みは叶えられなかったのに、サークルが大好きで涙が止まらない自分がいた。人のためが、自分のためにもなっていたのだと思った。代表をやってよかったと思った。

僕の代では、サークルを飛躍させることは叶わなかったが、卒業から3年が経ち、今では後を継いだ後輩たちが立派なサークルを作り上げた。外部イベントにも参加し、もう僕の現役では叶わないようなバンドも多数輩出した。

まだまだ強豪ほどの勝利主義はなく、さらに上を求めるものはサークルを去った。でもそれは、今のサークルが、「自分たちはここ」というのを見つけた証拠ではないかとも思う。試行錯誤を続け、もがき続けた僕らの時とは違ったものだ。現在所属している皆も、納得し、幸せな活動を送っているのだろうと思う。


「周りのことを考えろ!」「皆のために!」よく聞く言葉だ

ただ、意見に流されるだけでもいけないし、

一般的に正しいとされる方向に導くだけでもいけない。

「皆の本心、望み」をくみ取り、正しい目標設定・運営をしてあげること。   

そのために、何よりよく人の話を聞くこと。

それが、「皆のため」なのではないかと思う。

それができるリーダーがいる組織は、たとえ発展途上でも、弱小でも、幸せに溢れた組織になるだろう。僕がもう一度代表をやり直せるなら、初めから今の心得でやってみたい。

今、リーダーとなって苦しんでいる人がいたら、何か感じられることがあればこんなに嬉しいことはない。

自分の教訓が少しでも生きればと思い、この内容を書かせていただいた。


最後に

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。

部活やサークル等、組織運営で悩んでいる人がいたら、参考にしてほしいです。ただ、自分のためと皆のためは違うのは事実です。「自分のため」も大切にしてほしいと思うのです。

自分がどうしても達成したい思いがあるとき、迷わずそれを達成できる集団に飛び込むべきではないかと思います。

僕の当時の達成目標からすると、代表になるという行動は「失敗」であったとも思う時もあります。しかし、その中で大切なことを学ぶことができました。そういう意味では「成功」だったでしょう。ただそれは、自分を信じて進んだ結果です。

自分の思いに嘘をつかず、突き進んで下さい。その先にはきっと、納得の結果が待っていると思います。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。





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