人生、転職やり直しゲーム 第1章
【病院に行けばいい】
「だから、病院は、行っているってば!」
「俺に、どうしろって言うんだよ!」
「助けてよ。
しんどいの」
「知らねぇよ、そのアトピーとやら、性病なんじゃねぇの?」
「これは、アトピー!フーゾクはやめたってば!」
「遅刻する、もう、行くからな」
「ねえ、今日は何時に帰ってくるの?」
「しつけぇよ!
帰るのは仕事が終わってからだ!」
俺は、床に落ちていた勘太郎のおしゃべり熊さんの足を握りしめ、
大きく振り回し、壁を打った。
ばん!
「ガガッ、のんびりは、贅沢ですねっ」
スピーカーから聞こえる間抜けな声に俺は我慢できなくなり、
もう一度、熊さんの足を握りしめ、素早く壁を打った。
ばん!
「のんびりは、贅沢」
ばん!
「のん」
ばん!
「…ガガッ」
俺は、音が出なくなったのんびり熊さんを
幸恵に投げつけた。
勘太郎が起きてデカい声で泣き出した。
「うるせぇ!」
俺は勘太郎に
落ちていた絵本をバサッと投げつけ、
メゾネットの階段をドタドタ降り、
靴を履いて玄関を出て車に乗り込んだ。
朝なのにもう暑い。
俺は、うんざりしながら車のクーラーを強めた。
【鴨葱さん】に進む
投げ銭大歓迎です。