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懐中時計と想いはポケットに🎩

胸の前に腕を交錯させて
スケッチブックを抱きながら

自分の身長の何倍もあるであろう
大きな扉の前で立っていた

スケッチブックを右手にまとめて
左手で扉を力強く押し開けて
講堂に入っていく

何か学問的な会議をする発表会みたいで
空気が少し重かった

目が覚めた

講堂の前でスケッチブックを抱いて
立っていた

「発表に挑もうと勤しんでいたのに!
目が覚めてしまったのね。」

そんなコトを思いながら
もう一度、自身と周りの様子を確認する

上を見上げるとキラキラした日差しが
西洋風の大きな窓から差し込んでいて
とても綺麗だった

右側に装飾の成された大きな
全身鏡があった

うす緑色のフンワリしたドレスに身を纏い
茶色いブーツを履いて
髪の毛を後ろに1つ結びした

そんな自分の姿を見て
「身なりもきちんとしてるわね。」

自分に確認をとるように
独り言を呟く

瞳には初めての発表会に対する緊張感と
それに立ち向かう強い意志が宿っていた

そうして気を引き締めて入った
講堂だったが、間もなく

顔もよく見えない誰かに
肩を強くぶつけられた

目が覚めた

変わらずスケッチブックを
胸に抱えていた

「先程の衝撃は何だったのかしら?」
と疑問に思いつつも

気持ちを改めて
講堂に入っていく

光がほとんど入らない薄暗い空間
革靴の匂いがやたら充満する空間
嘲り混じりの小話が聞こえる空間

そんな空間に少し気圧されながら
それでも前に進もうとする

しかし、今度は知らない誰かと足が絡み
縺れながら盛大にこけてしまう

どてっ

と鈍い音が
半円状の屋根に
延々と反響する

周りに居た人達の視線が
勢いよく集まる

1人に2つ備わる目が
いくつもいくつも私を見つめくる

「今この目の数を計算したら
2の何乗になるかしら?」

床にぺたりと座り込みながら
そんな場違いな考えが
頭の中で駆け巡る

目が覚めた

講堂の前で立っていた
講堂に入るしかなかった

相変わらず大事にスケッチブックを
胸に抱え込んでいたが

暗い講堂の小さな椅子に再び躓いて
挙げ句の果てにスケッチブックを
盛大にばらまいてしまう

未完成な紙飛行機のように
曖昧な曲線を描いて
重力と引力の狭間で躍る紙

やがて1枚また1枚と床に降りてきた

それらを掬い上げる私を見て
周りの人達が口々に嘲笑う

何の価値もない
この場に相応しくない
金にもならない

沢山の嘲笑を一気に受ける 

「何回転ければ気が済むのか!」
とうとう私は心の中で自分を責めた。

思わずスカートの裾を握る

瞼の裏に雫がじわじわ溜まる

視界が歪んで
口を真一文字に噛みしめる

もう零れてしまう!

そう思った時、その涙をそっと
柔らかいハンカチが吸ってくれた

突然の感触に驚いて
潤んだ瞳でそのハンカチの手元に沿って
視線をゆっくり上げていく

燕尾服のオジサマがいた

オジサマは一緒にスケッチブックを
拾い集めて耳元でアドバイスをくれた

「10円を描く練習をすれば
もっと綺麗になるよ。」

少し低めの声で囁くように
声をかけてくれた

懐中時計をさり気なく開けて

「もう時間だよ。
君の居るべき場所へ行きなさい。」

そう言って私のポケットに暖かい
懐中時計をそっと仕舞ってくれた

目が覚めた。
りあるだ。。

一瞬触れたかどうか分からない
その温もりをそっと思い出して

パジャマのポケットの中で
1人広げていた掌を握りしめた

小鳥がチュンチュン鳴いていた

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