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パラレルワールドの矛盾点⊥

森の奥 人っ子一人いない家

そこに展開されているのは
薄い水色を基調とした壁紙のある
自分の部屋とリビングが備わった
少し広めの空間

そこで日々生活をしていた私

自分の部屋に設置された大きめの水鏡を
見ながら長めの髪の毛を
毛繕いしていた

ブラシでゆっくり髪の毛の間を
解すように上から下へと
腕を下ろしていく

'ここは静かでホントに良い所
なのだけど、全く人が居ないのも
少し困りものかしら。。。'

そんなことを少し考えながら
ある程度滑らかになった自分の
長髪をゆっくりと撫でていく

すると突然窓の外にカサカサという
音が聞こえた

'猫でもいるのかしら?'と
思っていたら

今度は窓をトントンと叩く音が
聞こえてきた

何事かと思いカーテンを少し
開けて外の様子を覗くと

蒼いスカーフを巻いた
インド系の女性が窓の外に立っていて
[助けて欲しい ]と言う

事情を聞けば
ストーカーに追われてるとか

仕方ないからその窓から中に入って貰い
匿ってあげることにした

[ごめんなさい。]
彼女はそう言いながら蒼いスカーフを
捲し上げて、窓を跨る

草履のような靴は一旦外に置いて
部屋の中で身を屈める彼女

そこへ車の眩いライトが
窓越しに差し込んでくる

'こんな所に車が来るなんて'

そんな事を考えながら
思わず怪訝な表情をする私に

彼女は[アイツです]と小声で
耳打ちをして来る

'なるほど'と納得した私は
部屋の中で身構えていた

寝る直前だったのでネグリジェに
なっていたが、何かされても
困るので分厚いストールに
体を包んでいた

間もなくして家のチャイムが鳴る

ストーカー男が現れたようだ

ドアを開けるのも怖かったので
ドア越しに私は叫んだ

「はい!どちら様?」

少し声を張り上げて
わざとダミ声で威圧するように
言ってみた

「すみません。この辺りに
蒼いスカーフを巻いた女性を
見かけませんでしたか?」

男の声は少し低めで
粘着質のある印象だ

「見かけませんでしたよ!
そもそもこんな所には人っ子一人
来やしませんよ!!」

「私今から寝る所ですの!
邪魔しないで頂戴!!」

つっけんどんに言い返す私

「そうでしたか。おかしいな。」

まだ立ち去ろうとしない男に
嫌気がさして私はひと演技
打つことにした

「ねぇ!貴方!!
こんな夜中に変な人が来て怖いのよ!
ちょっと散弾銃を持ってきて
くれるかしら?」

そう大きな声で部屋の中へ
居もしない夫に
声をかけてみる

そのセリフに驚いたのか
男は

「失礼しました」

とだけ言い残して足早に立ち去り
停めていた車のエンジンを勢いよく
吹かして、どこかへと
退散して行った


男が立ち去ったのを確認して
自分の部屋に戻ると
女性が深々と頭を下げていた

「気にしないで大丈夫ですよ。」

そう声をかけ、これから
どうするのかを尋ねると

彼女はもう少し先にある
親戚の家に行く

と言うので、周りを警戒しつつ
窓辺から再度外に出してあげて
静かに見送った

正直、'この先に家なんか
あったかしら?'と不思議だったが

'ま、それも彼女の選択だ。'

'私が出来ることは
きちんと出来たはずだから

後は彼女の安全が
確保出来るように
祈るのみだ'

そう思い、目をつぶり
カーテンの隙間から零れる
月光を感じながら
眠りについた

'今日は私、よく頑張ったわ!
良いことをしたわ♪'

そんな満足気な表情を
自分でしていると自覚しつつ
ゆっくりと夢の世界へと
降りていった


これで全て解決したはずだった。。。



その夜私はベッドで眠り
夢を見ていた

その夢の中で私は

見知らぬインドの土地で
アスファルト舗装もされていない
道路の真ん中で車に荷物を
突っ込んでいた

突然後方から声をかけられる

その声には聞き覚えが
あった

少し低めで粘着質のある声

あの男の声だ

「お前仕事辞めるってホントかよ?」
「俺、お前ともっと色々したかったのに」

大袈裟に腕を広げて何かを企んでいるような
にやけ顔で私に近づいて来る

「ごめんなさい。もう決めた事なの。」

私はそう言って蒼いスカーフを
強く握りしめて
車のバックドアを閉める

「それじゃあ。」と挨拶して
赤い小型のSUVを運転して
森に繋がる細い道へと移動する

ガタガタ揺れながらも
人間界に別れを告げられるような
面持ちになって
ハミングを歌っていた

ふと、大きな湖で釣りを1人で
嗜んでいるお兄さんの姿を
横目に確認した

興味を持ったので車を
停めて、声をかけてみた

「こんにちわ。」
彼は背後に立つ私に
特段振り向きもしなかったが

すっとメモを渡してくれた

そこには番号が何桁か記載されていた

「ここは美味しい
お魚が釣れるんだよ」

「何かあれば僕に連絡して
くれたら良いからさ。」

穏やかな中にも力強さを
感じさせてくれる

そんな声に何処か安堵して
私は「有難うございます!」と
お礼を伝えた

「この森の1番奥に住んでる者さ。」

彼はそう言って
首を斜めに向けて
会釈をしてくれた

「分かりました!
宜しく御願いしますっ!」

足先を揃えてお辞儀をしてから
私は自分の車に再度乗り込んだ

'ステキなお兄さんと
お話出来たわ!'と

浮かれながら暫く運転して
やっと目的地に到着した

森の奥にひっそりと立つ
淡い水色の屋根をした家だ

早速荷解きをして
自分の部屋に入っていくと
部屋の奥にあるものを見つけた

そう。
水鏡だ。

私はふと、アレ?と
違和感を覚える

この家、さっきあの
ストーカーが
来た家ではなかったか?

それに私が先程から握りしめている
この蒼いスカーフも確か彼女が
持っていた物だ

と、言うことは
先程助けた女性の代わりに
今度は私が追われるのでは??

怖くなった私は早速貰った番号に
電話をかけたが繋がらなかったので

自分の見た夢の話を書いて
メッセージで伝えた


そう言いながらも
夢の中の時間軸は
ドンドンと進んで行く

夢の現象は私に気づきこそ与えど
事情を変換させてはくれなかった

私はそのままその家に住むことになり
水鏡で髪をといていた

そうして案の定
玄関のベルがなる。。。

ガタッという大きな物音と共に
強制的に目が覚める。

リアルだ

見ていた夢の
その中で見ていた夢から
勢いよくリアルに戻った

どうやらリアルで私は
寝返りを打ち
1人壁ドンを
していたようだ。

頭をふるふるとふって
ループ系とインド系の夢だった

パラレルワールドの矛盾点を
解決しなければならないような
夢だった

そんな事だけを考えていた

とは言え、あの場面を無事にやり過ごせて
良かったと胸を撫で下ろすのだった

そうして紅茶をゆっくりと飲み
湯気立つ蒸気越しに自分の夢を
回想し、こうして日記に収める

優雅なようで
お転婆な私の昼だ。


日常と非日常を放浪し、その節々で見つけた一場面や思いをお伝えします♪♪ そんな旅するkonekoを支えて貰えたなら幸せです🌈🐈 闇深ければ、光もまた強し!がモットーです〇