小噺「ちいさな旅」
当ても無いままに歩いて行く旅の、何と軽快なことだろう。
通り過ぎて行く景色の中には、把握出来ているものの他にも様々な事実が混在している。昔は城が在ったもの、栄えていたもの、土に埋もれた些細な歴史や人々の足跡。其れら全てが全ての人の目に止まることは無い。多種多様な人々の中で、多種多様な好奇心の元に人それぞれに理解され、見られ、過ぎ去られて行く其れらの、何と美しいことか。かく言う私もまた、己の好奇心の元に物事を見聞きし旅をする。すれ違う風景に恋をしながら足を止めずに歩き続ける。こ