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【ミャンマークーデター】クーデターと少数民族武装勢力の動き

今週は、ずっと雨。

先週まで40度近くあった気温も
午前中は20度ちょっと。

もう雨季?

と思ってしまうくらい涼しくなりました。

(例年4月は、40度超え!)

ミャンマーでは雨が降ると、
パダウという日本の桜のようなお花が咲きます。

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本来は、パダウの花が咲くための
恵みの雨だなあと思いたいですが、

先週からカレン州のタイ国境近くで
空爆があり、1万人近くの方々が難民になりました。

家を追われ、住む場所もなく、
タイでも難民受け入れを拒否され、

森の中で過ごしています。

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この雨で
体が冷たくなっていないか、
寒くないか、食糧あるか、疫病が流行ったりしないか・・・

そんな心配の方が大きい
今週の雨の日々です。

今、難民となっている人は
カレン族と言われる少数民族の方々。

カレン州には、
KNUという武装勢力があります。

今、難民が発生してしまったのは、
武装勢力と国軍の衝突が原因です。

しかし、この衝突は今に始まった訳ではなく、
70年以上続いている内戦の1つの延長線上でした。

今回は、
以前からお伝えしている
「少数民族武装勢力」について。

国連が中々動かない今、
ミャンマー国民にとっては
少数民族の武装勢力に
頼り始めている傾向にあります。

非常に難しく、複雑ですが
ここでは大きな流れをお伝えしたいと思います。


1、ミャンマーの武装勢力

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ミャンマーには135の民族と、
17の武装勢力があります。

武装勢力と聞くと、
テロリストや悪い集団、

のようなイメージを持つと思いますが、

ミャンマーの武装勢力は
「国軍の迫害」から
地域を守るために結成された勢力でした。

2011年のミャンマーの民政移管後、
ミャンマー政府と各少数民族武装勢力は、和平に向けた協議を行い、

2015年には、8勢力が全国停戦協定に署名、

その後、アウンサンスーチー政権で
2つの勢力が追加で停戦協定に署名しました。

しかし、実態は
停戦協定はほぼ無効状態で・・・・

・断続的な衝突
・避難民(IDP)の発生

が多くありました。

国際的に有名なのは、ロヒンギャ迫害だと思います。

国軍がロヒンギャの住む難民キャンプを焼き討ちしたり、
無差別攻撃をしたり、

何万人もの人がバングラデシュ側に難民として逃れました。

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もう1つ有名なのは、タイ国境のカレン州です。

カレン州には
「KNU(Karen National Union)」という
武装勢力があります。

しかし、2016年に
大きな衝突があり、約7000人が
タイへ難民として避難しています。

クーデター前も、今も少数武装勢力と国軍の間では
衝突が続いています。

直近だと、3/27国軍記念日に、

KNUが国軍基地を襲撃に成功しましたが
その日の夜から3日連続で

国軍からの報復攻撃を受けています。

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武装勢力と、国軍の衝突は今に始まったのではなく、戦後から長く続き、
世界一長い内戦とも言われます。

日本のニュースでは
「ミャンマーに内戦の可能性」
と報じられることも多いですが、

実質は内戦が始まるというよりも、止まっていた内戦が再開した、という感じではないでしょうか。

少数民族の人にとっては、
国軍はもちろん、
一般的なビルマ族に対しても嫌悪感を抱く人も一定数います。

しかし、多くのミャンマー国民は少数民族の迫害について
興味・関心を持つこともなく、

スーチー氏だけでも内戦を解決できず、

蓋をされた状態が長く続きました。

タイの難民キャンプで暮らすか、
公式帰還しても国軍の脅威に怯える日々という状態でした。

「武装勢力VS国軍」

の対立構造であっても、被害を被るのはいつも一般市民です。

2、少数武装勢力


ざっくりですが、
大きな武装勢力について解説します。

▼KNU
Karen National Union

カレン州というタイ国境近くを拠点とする武装勢力です。

1948年に
「カレン州の拡大と自治」
を目的に作られました。

クーデター後、国民からの支持を集めている
少数武装勢力の1つです。

▼KIA

ミャンマー北部のカチン州に拠点を持つ武装勢力。

翡翠を主な収入としており、
中国政府に忠誠を尽くすと言われています。

今は、国民への協力姿勢を
見せています。

▼AA

ミャンマー西側ラカイン州北部の武装勢力。

2009頃、国軍に抵抗するため
KIA(カチンの武装勢力)の
支援を受けて設立されました。

ラカイン州は、スーチー政権下でも
国軍の弾圧がひどいエリアの1つで通信も遮断されていました。

国軍とAA軍の対立は深く、国軍から「テロリスト」と認定もされています。

最近は、国軍側はAA軍を味方につけるため?
テロリスト認定を解除。

まだ明確に、国軍側・CRPH側の
表明は出していません。

▼TNLAタアン民族解放軍

ミャンマー北部シャン州の
パラウン民族の武装勢力

中国との国境付近で
TNLAも国軍と衝突を
繰り返している。

ここもまだ明確に
CRPH側につく、という表明は出していない。

▼MNDAA

ミャンマー民族民主同盟軍中国系のコーカン族武装組織

過去に国軍との戦闘で
中国側に避難をする人が殺到。

ここもまだ明確には
表明を出していない。


上記は一部少数民族の
武装勢力になりますが紹介させていただきました。

資金源は、税収はあまり大きなウェイトではなく、

翡翠、麻薬、密輸などで
資金を得ている、と言われています。

また、ほとんどの武装勢力が国軍とは敵対している傾向ではありますが、

だからといって、
「全てが国民側の味方でもない」
のも複雑な歴史の1つであり、

今後のミャンマーの
「連邦軍」「統一政府」「新憲法」を
考える上で前提として理解しておいた方が良いと思います。

3、クーデター後の少数武装勢力の動き

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武装勢力にとっては
もともと内戦地域も一部あったので

クーデターによって
「大きく変わった」
というよりも、

ミャンマー国民から興味・関心と和解を求める声が
上がり始めています。

最初は、国連やアメリカ軍に対して
協力や助けを求めていましたが、

今は、国連の動きが遅いので
少数武装勢力に頼らざるを得ない、

この際に和解をしあって
協力し合いたい、

という流れになってきました。

2月22日(22222革命)の日は、
ミャンマー全土でCDMが行われ
主要お店も休業になり、ほぼ全員がデモに参加しました。

その際に、

「国軍に抑圧されている全てのカチン族やロヒンギャに対し深く謝罪します」

というメッセージを掲げた方も
いらっしゃり、

クーデターをきっかけに民族同士が歩み寄ることにも繋がりつつあります。

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ちょうど記事も上がっていたので
参考までに
https://toyokeizai.net/articles/-/420162

まだほんの一部ではありますが、
国民一人一人が和解・理解に向けた一歩を歩み出しているのが
クーデターの悲劇中の幸いとも言えることかもしれませんね。

しかし、少数武装勢力にとって
国民側につくことをどう感じているのか、

国軍を倒した先に本当に和解し、
国民と一体になれるのか、

はまだ不透明さはあります。

DrSaSaという次期大統領候補?
と言われている医師が中心となって
武装勢力への協力・和解を進めています。

DrSaSa自身が少数民族出身で、

出身地のチン州の村に
大きく貢献してきている、という
彼のバックグランドは

武装勢力を動かす事にもつながるのではないでしょうか。

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さらに、2月から少数武装勢力との
交渉・対話を行なっている成果もあり、

AA(アラカン軍)、
TNLA(タアウン民族解放軍)、
MNDAA(ミャンマー民族民主同盟軍)は、

「ミャンマー国軍に対して弾圧行為を止めなければ市民側(CRPH)側に協力する」

との共同声明も出しています。

4月は、武装勢力と国民の関係は大きく変わりそうです。

もし、クーデターをきっかけに少数武装勢力との和解・協力体制が
できれば、

スーチー政権でも成し遂げられなかった
民族和解・少数民族エリアでの内戦の終結に繫ります。

迫害してきた国軍側につくことは考えにくいものの、

民主化の恩恵を受けた多くのミャンマー国民を
長年国軍の迫害に苦しんできた少数民族・武装勢力が
ミャンマー国家として、協力体制をとりたいと思えるか、
和解したいと思えるか、

は今後重要なポイントかと思います。

4、(個人的な思い)

今回は、少数武装勢力について書きました。

私自身、武装勢力については最近興味を持ち、セミナーや本で学んだくらいしか知識がありません。

理解不足の点、日々の情勢でアップデートすべき点があると思いますので
色々お詳しい方教えていただけたら嬉しいです。

色々調べたり学んだりしながら感じるのは、
政治とは感情だなあということです。

国軍との戦いに勝つには、連邦軍として少数武装勢力と
国民が団結するのが望ましいのはわかっていても、

長年の両者の恨みは根深くあります。

政治は感情論でできていると痛感しました。

人間なので当たり前かもしれません。

一筋縄に、”一致団結しましょう””国軍打倒”にはなりません。
CRPHの目指している「連邦軍」としての内戦は現実的ではないように思います。(各種メディアでは、内戦が囁かれていますが、個人的にはマスコミが内戦を煽っているように見えてしまいます)

クーデターとなり丸2ヶ月が経過しました。

ワシントンの首脳会談で、
中国への懸念に対する共同声明を日米が出すと。

「自由で開かれたインド太平洋」

の日米・インドの連携も何かしらミャンマーに関わってくること、

ミャンマーの武装勢力との連邦軍結成と和解など

今月は、流れがまた大きく変わってくることを期待したいと思います。


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