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【ミャンマークーデター】2008年憲法と新憲法

4月になり、CRPHは具体的に国の方向性を公開しました。

これまで他国からは、

「CRPHやデモの方向性が曖昧だ」

「リーダー不在で具体的な施策がない」

と言われていましたが、
新憲法の草案が出てきていることによって、

あらかた国の方向性や施策が明らかになってきたように思います。

これから、ドラフトや国民投票の準備をていくと思いますが、

今回は、CRPH(連邦議会)中心に進めている
2008年憲法の廃止と新憲法の制定
について解説します。

1、2008年憲法とは?

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まだ軍政時代だったミャンマーで
国軍に優位な形で定められた憲法です。

2011年には、民政移管し、
民主主義に移行しましたが

民主化して10年間、
ミャンマーのあらゆる問題が解決しなかったのは

この2008年憲法が原因にありました。

基本的には、立憲民主主義国家としての
統治が想定され、

立法、行政、司法の分立が
定められています。

しかし、今回のクーデターのように
独裁、国軍の利権などを
国軍優位になっていることが問題です。

主に、

・国軍の政治関与を認める

・人民院・民族院・管区・州議会の
 定員のうち25%を軍人議員が占める

・国防のための最も肝要な軍事力は国軍である

・国軍司令官は、全ての武装組織のトップ

・国軍司令官が、各議員の軍人議員を指名

・大統領は、連邦大臣任命の際、
 国防・内務・国境大臣については
 国軍司令官が任命した名簿を受領する

・軍法会議では、国軍司令官の決定が
 最終的なものとする

・憲法改正については、
 連邦議会総数の75%以上の賛成と
 国民投票の過半数の票が必要

→25%が軍人議席なので、変えたくても
 変えられなくなっている

・緊急事態宣言の発出が認められ、
 国軍司令官が国家運営のための権限掌握が可能

・国民の基本的権利が制限され、停止される。

・国家緊急事態が発令された場合、1年間効力を有する。

・緊急事態が宣言された場合、
 国軍司令官が国内の原状回復に
 必要な措置を取るために、
 立法、行政、司法の各権を国軍司令官に移譲

・全ての議会は、立法機能を停止し
 議会は自動的に解散したものとみなす

・緊急事態宣言は、1回6ヶ月間、
 2回まで延長が可能

など、2008年憲法では
国軍に優位な内容として制定されています。

特に、国家緊急事態宣言の内容では
今回のクーデターは全て
「憲法通り」となっています。

ですので、国軍側からは

「憲法に則って、不正選挙による
国家の危機にあったのでクーデターを起こした」

と言っています。

停戦に関しても、インターネット遮断に関しても
1つも約束を守らない国軍も、

自らが定めた2008年憲法には
忠実なのです。

2、新憲法の制定

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2008年憲法が、国軍優位に制定され、

民政化しても
あらゆるミャンマーの問題が
解決するに至りませんでした。

軍人が議会の25%を占め、
憲法の変更には議会の承認の
75%が必要なため、

実質、憲法を変えることは
できませんでした。

ですので、

今回のクーデターを通して
2008年憲法の廃止と

新憲法の草案を
CRPHは急いでいます。

2008年憲法がある限り、
今回のクーデターが収束したとしても、

再び同じ事態が
繰り返されてしまうためです。

最近の国民の目標は、
民主主義を取り戻すだけでなく、

・2008年憲法の廃止
・新憲法の制定
・国軍の解体

にあります。

CRPHは4月1日に
「全ての民族が参加する民主主義」
の確立を目指し

「連邦民主憲章」を採択しました。

「ミャンマー連邦合衆国」の
憲法として新しく作っていきます。

新憲法では、主に

・国軍優位の内容を全て廃止

・州の権限が強い連邦制
(州に主権、州憲法、州の徴税権、
 自然管理権、独自の立法、行政、司法機関)

・少数民族の合意
(自治権等どうするかなど)

が主に盛り込まれています。

こちらの記事にも
憲法について記載があります。


民主化を進める
Dr SaSaのツイッターにも、

”Federal Democracy Interim Constitution
of Federal United States of Myanmar is
being declared by democratically
elected Members of Parliament
by the people and for the people of Myanmar.”

翻訳
”ミャンマー連邦民主主義暫定憲法は、
民主的に選出された国会議員によって、
国民によって、
そしてミャンマーの国民のために宣言されています。”

とありました。

「国民による、国民のための憲法」

の制定をCRPHが
進めている真っ最中です。

諸悪の根源となり、
国軍のために作られたと
言っても過言ではない

「2008年憲法」

が正式に廃止され、

ミャンマー国民のための
憲法に生まれ変わることを
国民のほとんどが望んでいます。


3、新憲法が施行されるまでの課題

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新憲法の内容も
現在は、原案が起草され、
今後さらにブラッシュアップという
段階に入っていくと考えられます。

その後、国民投票が行われることによって
正式に新憲法が制定されます。

しかし、そう簡単ではないと思います。

課題としては、

1、少数民族との和解、自治の問題

2、投票が正常にできるのか
(軍が妨害する可能性大!)

という大きく2つの課題があります。

少数民族の和解に関しては、以前もお伝えしたように、
長い歴史の軋轢があります。

現在は、国民も、少数民族も
共通的として「国軍」
がありますが、

元々は国民と少数民族の目的が
異なります。

国民は連邦制を求めますが、

少数民族にとっては、
「自治権利」が欲しい
という意見や、

長年、内戦等を助けてくれなかった
ビルマ族への不信感、嫌悪感、
を抱いている人もいます。

ですので、
少数民族にとっての自治権を
認めるかどうか
など

交渉・和解・協議が
まだまだ必要そうです。

2つ目、
「国民投票ができるかどうか?」

に関しては、

ほぼ100%軍の妨害が入ってくる
のではないでしょうか。

国軍に優位な2008年憲法を廃止し、
国軍を政治から追い出す&国軍の解体のための
新憲法なので

国軍が許すとは思えません。

もし制定されても、
軍は議会に居座る可能性も
十分にあり得ます。

国軍が引かない限り
道のりは長そうですが、

2008年憲法には忠実な国軍なので

その憲法を廃止することは
大きな影響となるはずです。

今後も憲法制定への動き
(主に少数民族との和解)と
国民投票の開催が可能かどうかなど
注視していく必要がありそうです。


以上、今日は2008年憲法に
ついて書きました。

改めて2008年憲法を読んでいると、
2011年に民政移管していますが

「本当に民主化するつもりあったのか?」

「いつかクーデターを起こす
 前提の憲法だったのか?」

と思えてきました。

CRPHの掲げる
ミャンマー国民による
ミャンマー国民のための憲法が

新しく無事に制定されることを
切実に願います。


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