[いただきました] 村上研一『再生産表式の展開と現代資本主義――再生産過程と生産的労働・不生産的労働』(唯学書房、2019年)

20200413 [いただきました]村上研一『再生産標識の展開と現代資本主義――再生産過程と生産的労働・不生産的労働』(唯学書房、2019年)

村上研一『再生産表式の展開と現代資本主義――再生産過程と生産的労働・不生産的労働』(唯学書房、2019年)をいただきました。ありがとうございました。
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長年にわたるマルクスの文献研究の重要論点のひとつであった、生産的労働/不生産的労働の内容および区別を精緻におこなっている仕事です。本書の立場は「価値法則が貫徹する領域の労働を価値形成労働、すなわち生産的労働と把握」し「『資本論』での分析対象である『生産的消費』の領域に属する労働を生産的労働と捉え」、一方、「消費過程に介在するサービス資本の活動について、価値法則が貫徹する生産的領域とは区分して分析する」というもの(13ページ)。

以下のようなアプローチは、私としても納得できるものです。

「形態的に資本のもとに包摂されている」ことを要件とする「資本主義的形態規定」とともに、労働が「生産的な消費過程を意味する労働過程」に充用されることを要件とする「本源的規定」によっても生産的労働の範疇が画されている。したがって、現実の様々な賃労働について価値形成的な生産的労働の範囲を画していくためは、「本源的規定」の内容をより明確にしていくこと、すなわち個人的な消費過程や流通過程から「生産的な消費過程」ないし生産過程を明確に画すること、さらに生産過程の成果たる生産物の要件を明らかにすることが課題となる(45-6)

こうしたアプローチにしたがうと、労働の成果を社会的に評価することが困難な「対象化されていない労働」が交換の対象となる「不生産的労働」の場合、(資本の手の下での)労働生産性の向上の対象となりにくいことが示唆されます。その典型的な例は医療や福祉、あるいは教育です。その政策的含意はあきらかでしょう。

生産的労働をめぐる長年の論争では、マルクスのいう「本源的規定」の吟味が徐々に後ろに退いてきた経過があると思われます。それは現実の推移にしたがった、ある意味では当然のことではあったのですが、そうした状況にあって再度この内容を厳密に整理している本書は非常に貴重です。


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