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生きる力になるーー『上野千鶴子がもっと文学を社会学する』を読んで

上野千鶴子著 朝日新聞出版 2023年出版

 最近この本の広告見て、「あれ?前に出版された本が文庫本で復刊されたの?」って思ったんだが、以前出版された本の続編だったことが判明し、即購入した。2000年に出版された『上野千鶴子が文学を社会学する』という本は、上野千鶴子が書いた本の中でもっとも好きな本だったかもしれん。

 続編のこの本も大変面白い本だった。なんといっても読みやすい。そして、面白そうな本がいっぱい取り上げられている。書評って言ってもいろいろあるが、彼女が書いた本の紹介はずば抜けておもしろく、その本を読んでみたい気にさせる。それもなにも、「社会学的に」本の書評を書いているからなんだろうか。

 この「社会学的に」というのはカッコつきで彼女自身もあとがきで書いていた。かつては文学でこんなふうに述べるのはあまりよしとされていなかったと。文学の畑にいた私としては、彼女のように文学を捉えることの方が当たり前のように感じる。じゃなきゃ、作家論とか、時代背景とかそういうことでしか論述できないじゃん、と思った。

 最近、新聞で上野千鶴子の本が中国語などで翻訳されるようになって、中国の読者が増えた、という話を読んだが、やはり、彼女のやっている女性学というのは生きる力を読者に与えるものなんだと思った。

 特に、独身ってことに肩身が狭くなってきた40代になってから、フェミニズム関係の本が一番読んでて気楽。楽しい。爽快な気持ちになる。いや、フェミニズム関係の本は十代くらいからずっと読んできているが、時代とともにある自分の人生、その時々で、捉え方が変化してくるのも事実だし、やはり、生きにくいのは私が女性であるからかもしれない、となんとなく思っていたことが、確信的になってくる。

 時代と共に、上野千鶴子も結構批判的な意見に晒されるようになったのもたまに目にするが、この本読んでいたら、彼女は「読んでいて楽しめる文章を」と思って書いているような気がしたし、それがはっきりとした言い切りとか、ずばっと潔く切り落とすような感じが文章から伝わってくるので、そこがたまに批判されるのかなーとか考えていた。

 でも、やはり、社会学者って時代と共にある学者なので、最近のこういう社会、というのをしっかり捉えているのは、読んでて感じた。時代をキャッチアップしてるとこが、当たり前のことだけど、すごいと思った。

 切れ味のいい包丁のような彼女の文章は、読んでいて気持ちが良かった。爽快。


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