無日記(9/7~12/3)

・捨て象
 曲がりなりに小説めいたものの末尾を結んでみて思ったのだが、文を重ねるほど、焦点を当てれば当てるほどに、文中では暴かれないままとなった領域の方が肥大していく思いがする。いちいち暴いていれば終わるかと言うと、恐ろしいことに暴き終わらない。芸の途中でパカッて落とされる芸人の待機列がぼこぼこ伸びていく。持ち芸の尺も伸びていく。全員受け入れてると全ての放送局が年がら年中24h放送になり、全人類による続き物の漫才が続き続ける。男坂をよ……(未読)。

 思えば恐らく、小説だけに限った話でもない。お話作りそのものが、説明は交えつつも、説明されなかった事柄の雲を催させるマルチタスク競技ではないか。必要と十分が同時に満たされるラインを探るのだ、しかも「読者」と書かれた藁人形を案内して回りながら。できることなら整地しながら。できることなら、小粋なトークで自他を楽しませ、見目よい木々や花畑を植え、似たツアーが集まってる掲示板に広告を出しに行き、優雅なペアスケートをし、トラバサミやクレイモアやマグマブロックを仕込みまくり、時には藁人形をクレイジーダミーぐらい実物に寄せてみたりもし、少しは支持者の意向を汲み、すぐ洪水オチにしようとする癇癪持ちを宥め……。そういうものに私はなりたがっているのだ。
 え、今気付いたんですか?今気付いたんですよ。ぱおん。


 何がぱおんじゃい踏み潰してくれるわ。
 グララアガア、グララアガア。


・高速旋回豚耳プロペラ・機械油と新渡戸稲造旧五千円札とハイジャック犯がめいめいセルフでバラバラ降ったよ・滝壺グレートバリアリーフを看過も貫徹突き破りオキアミ三親等添い遂げる・月は雲隠れ青みが勝った葵色に・伏す原に・伏す海原に・耽溺夜鳴きで夢中でした。この豚野郎!ご贔屓に頼んます。
 と今日までプロフに書いてあった。垢作る時に打った即興詩だったか。


・無視できる
 俺は俺が言う泣き言やたわ言を、過程を知っていて無視できるが、他人に打ち明けたらそいつも流してくれるとは限らない。言うまでに自分の中での重み付けがされているが、そのフットワークが軽すぎたり、鈍重すぎたりに、性格ごとの傾向や、話題ごとの傾向が働いている。俺以外の側でも、受け止めすぎたり、流しすぎたりしている事だろう。
 なので、できるだけ自分でその管理を、弁というかダイヤルを、自分が握っておけるようになろう。なんかめちゃめちゃ笑っている人が何も心配なく生きているか、それを気にするのも大事だが、今は笑っていたいのだろうということにも目を向けよう。腹には色々ある上での折衝の行方を見よう。呼びかけではない。日記だ。


・ガワのモツ煮
 Vtuberとか人力botとかコンセプトアカウントみたいなの、基本的に非実在キャラクター自体が現実世界に参入してくる体裁なんだけど、しばしば演者、個人勢ならば考案者自身、から余分な実在感を削ぎ落として、目を惹くキャラクター性で埋め合わせた、味変わりした生主的なものにすぎない実態があると思う。それも別に悪かない。あと俺は本格的に調べてるというよりは上澄みを掠め取ってるだけなので、むちゃ知ったかぶっとるかもしれない。
 実質生主的なスタイルの人があまりウケなくて消沈しているのを見ると「ああ、この人が夢見ていた絵図通りにはならなかったんだな」と感じる。まず、宣伝で運が引き込めなかったり、打ち出すキャラクター性を外してたりといった、売り込み内容が仮想人間か否かに拘らず起こる問題は当然ある。そうじゃなく、仮想人間に特有な問題として、中の人由来の要素と外の人由来の要素の不調和というのもある。ミスマッチで面白いみたいなウケ方は勿の論あり、ならウケてない人というのはなおさら「演者の人間みのどこを省き、どんな仮想みを補うか」のそもそもの感覚判断が客とズレてたということになるではないか。そういう例そのものが俺をかなり厳しい気持ちにさせる。仮想性は全然無限の翼ではなく、戦略の梯子が少し長くなったものに過ぎんということだ。どんな外装(篠房六郎用語)をかぶっても、使いこなしぢからや、残した人間性への減点で決着してしまう勝負があるということだ。舌禍や唐変木につける万能薬ではないということだ。当たり前か。

 だいたい生主改的なものより、俺様が考えた最強のVtuber、芸人トリオか何かが入った阿修羅Vtuberが世を席巻すべきだ。FF4のアスラみたいに上半身が回転する三面六臂で、最前面で喋る権利を早押しで争い合っているんですよ。ツッコミのチョップが違う人に当たったりしてわちゃわちゃする。五身合体ロボとかヘカトンケイルとか、なんだっていいんですが、外見や設定という以上の身体性や拠って立つ世界観へいじりが広がってってほしいな~、と思う次第。
 ツイッターで知る限りでもロボットの女の子(実物)を動かして設計図を有料配布している人(特にVではない)とか、ステンシル処理で怪人の体表面越しの異空間に女の子が重なり合ってるみたいにしているアメコミ調の人とか、架空の食材で架空の料理を作るローポリ映像をVHSに映して再撮影してる人とか、キャラ同士が触れ合えるようにしてる人(V自体ではない)、物体を閾値以上叩くと分割されるようにしてる人(Vだが開発してるのはゲーム)とかいるので、ああいう……鋭い……なんかこう……いい…………新しい、それだ、新しいやつが流行ってほしい。立ち上がれ若人よ。俺は二度寝する。

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